ハクビシンはパキスタンからインド、ネパール、チベットなどを経て、中国南部や台湾、ミャンマーやタイなどのインドシナ半島に広く分布しているジャコウネコの仲間で、台湾やマレー半島、インドネシアなどにも分布している。 幾つかの亜種に別けられているが、ハクビシンは日本に生息する唯一のジャコウネコの仲間としても知られている。 体の大きさは亜種や年齢などによって差があるが、雄の方が雌よりも大きい。 体つきは胴が長くて四肢が短いが、尾はかなり長く、体長近くの長さがある。 毛はやわらかくて長く、毛色は灰褐色や褐色、黒褐色などで、背中の中央は濃く、腹部は淡い。 また、ハクビシンにはマレージャコウネコやコジャコウネコなどに見られるような体の斑点は見られない。 四肢や顔も黒っぽいが、名前のように鼻筋には白線があり、頬は白く、目の下にも白斑がある。 しかし、顔の斑は亜種によって変化があり、ほとんど白いものも見られる。 雌雄共に肛門腺が発達していて、行動範囲には匂いのついた排便をするが、タヌキのように、糞は同じところですると言われている。 落葉樹林や常緑樹林、熱帯雨林など、多様な森林地帯に生息していて、主に樹上生活をしている。 四肢には5本の指があり、足の裏には毛がないので、木登りはかなりうまい。 また、ハクビシンは低地から山地に見られるが、東南アジアでは標高2500m程のところにも生息しているほか、藪地や雑木林、耕作地の近くや人里、市街地などにも姿を表わす。 普段は単独で生活しているが、時には雌とその子どもが集まって、小さな群れをつくることもある。 夜行性で、昼間は巣穴などで休んでいるため、日中はほとんど見かけることはないが、時には昼間も活動する。 多くの時間を樹上で過ごしているが、樹間の移動は地上に降りて行い、樹間を飛び移ったりすることはしない。 主に夕暮れと共に活発に活動をはじめ、イチジクやマンゴー、バナナやミカン、カキなどの果実類や種子などを好むが、ハクビシンは鳥や鳥の卵のほか、カエルや昆虫、カニなどの甲殻類や小動物などの肉類も食べ、しばしば地上で採食することがある。 行動範囲は食料事情のよい地域では1~2k㎡程度と言われているが、季節によっても変化があり、2~6k㎡程の幅があるほか、雄の行動範囲は雌よりも広い。 樹洞などを棲みかにしているが、岩穴やタヌキが使った巣穴なども利用するほか、里山にある民家の屋根裏や軒下などにも棲みつくことがある。 また、巣穴は水を利用できる近くにつくるが、複数の棲みかを利用するとも言われている。 繁殖期は早春と晩秋に多く見られ、地域によっては年に2度繁殖することがある。 妊娠期間は2ヵ月程で、1産1~4子、普通は2~3子を出産する。 生まれたばかりの子供の体重は120g、体長は15cm程で、灰褐色の薄い毛で覆われている。 目は閉じているが、生後10日程で目は開き、3ヵ月程で親と同じくらいに成長する。 この頃には離乳し、生後10~12ヶ月程で性成熟する。 野生での寿命は10年程度と考えられているが、飼育下では15~20年程度、中には25年を超える固体も報告されている。 外敵はトラやヒョウ、ワシなどの大型の猛禽類などがあげられるが、一番の外敵は人で、毛皮や肉を目的とした狩猟が行われていて、中国南東部やインドシナ半島の一部では食料用として取引されている。 このほか、近年の森林開発などによって生息地は減少しているが、ハクビシンは環境によく適応していて、現在のところは絶滅の危惧はないとされている。 ところで、国内に生息しているハクビシンは、日本の在来種なのか、戦前に毛皮などを目的として飼育されていたものなどが野生化した外来移入種なのか、はっきりとは分かっていない。 国内のハクビシンは、中国などに分布するものに比べてやや小さく、顔は比較的丸いような感じがし、体色も濃く、寒さにも強いと言われている。 しかし、国内での分布が連続していないことや、ジャコウネコ科の化石が見つかっていないことなどから、明治以降に移入されたものとも考えられていて、最近のDNAの鑑定では、台湾に分布するものと同系列と言われてる。 また、昭和20年代には福島や静岡、山梨、四国などに散在的に分布していたが、その後分布域は徐々に拡大し、現在は北海道の一部や東京などでも生息が確認されていて、ほぼ全国的に分布している。 また、近年の森林開発などにより、地域によっては都市近郊や住宅地にも現れるようになっている。 ハクビシンは幼獣から飼育するとよく馴れると言われているが、果実類を好むため、ミカンやモモ、カキなどの作物に被害を与えることがある。 アライグマのように特定外来生物には指定されていないが、民家の屋根裏などにも棲みつくため、糞尿による住宅被害なども報告されていて、時に害獣として駆除されることがある。 ジャコウネコ科の動物へ / このページの先頭へ |
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