カイツブリ

カイツブリ さんのプロフィール


鳥類図鑑・カイツブリ

カイツブリ

カイツブリ目・カイツブリ科
学 名 Tachybaptus ruficollis
英 名 Little grebe
分布域 日本では、本州の中部より南では一年を通して生息している
生息環境 湖沼や河川などの淡水域
全 長 25~29cm 程度
翼開長 40~45cm 程度
体 重 130~240g 程度
自治体によっては準絶滅危惧種など

カイツブリは、西日本などでは一年を通して見られる水鳥で、主に湖沼や河川などの淡水域に生息している。


分布
アフリカ大陸やユーラシア大陸の温帯から熱帯域に広く分布していて、幾つかの亜種が知られている。
多くの地域で留鳥として見られるが、寒い地域のものは、冬は南へ渡って越冬する。

国内では、北海道や本州北部などでは夏鳥で、本州の中部より南では一年を通して生息している。


形態

ムクドリよりもやや大きい水鳥で、国内で見られるカイツブリ類の中では最も小さい。

全長25~29cm前後、翼を広げると40~45cm程で、コガモよりも小さく、カモ類の中に混じっていると、カモの子どもかと間違われることもあるが、足は体の後方についていて、独特の体形をしている。

雌雄同色で、羽毛は全体に茶褐色をしている。
夏羽では頭部から首の後ろ、背中にかけて黒褐色で、頬から首にかけては赤褐色をしているが、冬には全体に淡い色になる。
また、嘴は短くて尖っていて、基部は黄色く、国内のものは目も黄色をしている。

一見するとハジロカイツブリに似ているが、ハジロカイツブリの目は赤く、嘴の基部などに黄色い部分がないので見分けることができる。

ところで、カイツブリの仲間は他の水鳥と違って、尾が非常に短く、尾羽も数本しかない。
その為、尾は舵をとる役目を果たさず、足を櫂のように使って舵をとっているが、足が体の後方についているのは、これに適している。

足指の縁には水かきがあるが、この水かきは、カモ類のように指の間で繋がっていない。
この足は弁足と呼ばれ、水かきはひれ状の弁になっていて、クイナ科オオバンなどにも見られる。

また、羽毛は見るからに柔らかく、厚くなっているのもカイツブリの特徴と言える。


生態・生活

カイツブリは、湖沼や河川などの淡水域に生息しているが、国内のものは、北海道などの湖面が凍結するような地域では、冬には南へ移動して越冬する。
西日本では留鳥として周年見られるが、冬季には、時に内湾などでも見られることがある。

小さな群れでコロニーを形成して生活しているが、単独やペアでいるものもしばしば見られる。
これは生息地における餌の量などによるものなのだろう。

カイツブリは常に水の中にいて、潜水しては小魚やエビなどの甲殻類、貝類や水生昆虫などを食べる。
滋賀県の琵琶湖では、1980年代に越冬する個体が減少しているが、これはオオクチバスやブルーギルといった外来魚が急増し、在来の魚が減少した為と考えられている。
井の頭公園でも同様の現象が見られたが、外来魚を駆除したことにより、在来の小魚が増え、繁殖するカイツブリの個体数も増えている。

カイツブリが潜る水深は、通常1m程度と考えられているので、やはり水面近くにいる小魚などが重要なのだろう。

外敵が近づいたり驚いた時には、すぐに水の中に潜ってしまうが、時には水面を駆けるようにして飛び立ったりする。
しかし、飛翔の距離は短く、遠くないところに着水し、陸上に降り立つことはない。

冬には、しばしばカモの仲間に混じっていたり、岸辺などでもよく見かけるが、警戒心が強いのか、近づくとすぐに岸から離れ、水の中に潜ってしまう。


繁殖・寿命

国内での繁殖期は4~7月頃で、巣は葦原など、水草のある湖沼の淡水域につくられる。

繁殖期には巣の周りに縄張りが主張されるが、この時期にも小さなコロニーが形成されている。

巣は水草の葉や茎を組み合わせた浮き巣を雌雄でつくり、巣は漂ったりしないように植物によって固定されている。

雌は一回、或いは2~3回に分けて4~7個の卵を産み、抱卵は雌雄で行われるが、カイツブリは、巣を離れる時には卵を植物で覆って隠す習性がある。
これにより、外敵からの目から逃れる可能性が高くなり、卵は3~4週間ほどで孵化する。

ヒナは孵化後すぐに泳ぐことができるが、1週間ほどは巣に留まっている。
その間、親はヒナを背中に乗せて移動したり、時には水に潜ったりすることもある。
巣から離れた後もしばらくは親と一緒に生活し、ひと月を過ぎる頃には独立する。

カイツブリの寿命については詳しく分かっていないが、野生下での平均寿命はは5~6年程度と考えられている。


保護状況・その他

カイツブリは分布域が広いこともあり、現在のところ、国際自然保護連合(IUCN)では、絶滅の恐れはないとしている。

しかし、国内では生息地の開発や、それに伴う餌の減少などによって生息数が減少していて、自治体によっては準絶滅危惧種や希少種などに指定している。

ところで、カイツブリの漢字表記は、国字で「鳰(にお)」と書かれるので、古くには「にお」、「におどり」などと呼ばれていたことが分かる。

万葉集・第四巻・725番に「にほ鳥の 潜(かづく)池水(いけみづ) こころあらば 君に我恋ふる 情(こころ)示さね」と詠まれた坂上郎女の和歌があるが、琵琶湖は、当時「鳰の湖(におの海)」と呼ばれていたようで、カイツブリが多く見られたことも分かる。

時代が下り、室町時代の頃には「かいつぶり」と呼ばれるようになったと言われているが、これは「水を掻いて潜る(掻きつ潜りつ)ことから「かきづぶり」と呼ばれ、それが更に転訛したものと言われているが、ほかにも諸説があり、名前の由来は分かっていない。

尚、カイツブリには、主に大きさと色によって次の亜種が確認されている。

Tachybaptus ruficollis ruficollis
アフリカ北部やヨーロッパからロシア西部などに分布する基亜種

T.r. capensis
サハラ以南のアフリカやマダガスカル、スリランカからインドを経てビルマなど

T.r. cotobato
フィリピンのミンダナオ島に分布

T.r. iraquensis
イラク南東部からイラン南西部

T.r. philippensis
フィリピン北部

T.r. poggei
アジア東部や千島列島、台湾、日本などに分布

また、東南アジアなどに分布するものを別亜種とし、次のものが提唱されている。

T.r. kunikyonis
南大東島に分布

T.r. collaris
ニューギニア北東部からブーゲンビル島など

T.r. tricolor
インドネシアのスラウェシ島からニューギニア島、小スンダ列島など

T.r. vulcanorum
ジャワ島からティモール島


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