シメはアトリ科に属する鳥で、大きな嘴がよく目立つ。 分布域が広く幾つかの亜種が知られているが、国内では、北海道や本州の中部以北で繁殖している。 分布域 シメはヨーロッパから日本を含む東アジア、モロッコやチュニジアなどのアフリカ北部などに広く分布している。 ヨーロッパでは、アイスランドやイギリス諸島の一部などでは見られないが、スウェーデンやノルウェー北部にも分布していて、北方のものは冬には南へ移動して冬を越す。 国内では、北海道や本州の中部以北で繁殖し、冬には多くのものが本州より南に移動する。 また、北海道の道東などでは夏鳥だが、一部は越冬するものも見られる。 形態 体はスズメよりもふた回りほど大きく、全長は16~19cm程度、翼を広げると31cm程の長さがある。 全体にずんぐりとした体形をしていて、同じ科のイカルと同様、大きな嘴が特徴で、離れていてもよく目立つが、尾はイカルよりも短い。 頭部は褐色で、目から上の頭部分は暗色で、茶褐色のような色をしている。 目先と喉は黒い色をしていて、首には灰色の帯があるが、目から後頭部にかけても暗色の筋のようなものが見られる。 背は暗褐色で、風切羽は青みを帯びているが、腹側は淡褐色のような色で、尾羽の基部(下尾筒)と尾羽の先は白くなっている。 嘴は夏では暗い灰色や鉛色のような色合いで、冬にはピンクや肌色のような色になる。 また、雌は雄よりも全体に鈍い色をしている。 生態・生活 北海道の一部では留鳥として見られるが、本州より南では主に冬鳥として見られ、平地から低山地の森林や雑木林などに生息している。 西日本などでは、冬に飛来した時には大きな群れが見られるが、次第に分散していき、単独や小さな群れで見られることが多い。 冬には平野部に多く、疎林や河川周辺の雑木林、耕作地や寺社境内の樹林などのほか、市街地の樹木の多い公園などでも見られ、餌の豊富な所では群れになって採餌していることもある。 主に植物の種子や芽を食べるが、昆虫類なども食べ、飛んでいるときに昆虫をとらえることもある。 また、シメは警戒心が強い鳥のように思うが、庭先の餌台に入れてある大豆やヒマワリの種を食べに来ることもある。 嘴が大きく、顎の力も強いことから、ムクノキやエノキ、オリーブや松などの種子も食べてしまう。 その力は30~45kgほどの重さに相当する力があると言われていて、丈夫な嘴で硬い種子を割って中身を食べる。 鳴き声は「チチッ」や「シー」、「プチッ」といったような鋭い声で鳴く。 繁殖・寿命 繁殖期は4~7月頃で、交配は一夫一婦で行われる。 ペアは冬の間に形成され、その関係は複数年続くことがあることも知られている。 巣は背の高い樹上につくられるが、営巣の場所は雄によって決められる。 また、巣の周りには縄張りが主張されるが、適当な営巣場所では、緩やかなコロニーのようなものも見られる。 雌は1日に1個の割合で4~5個ほどの卵を産むが、平均した卵の大きさは24×18 mm程で、4g程の重さがある。 抱卵は雌が行い、卵は11~13日程で孵化する。 育児は雌雄によって行われ、ヒナは2週間ほどで巣を離れるようになる。 その後もしばらくの間は親と一緒に生活していて、ひと月を過ぎるころには独立していく。 外敵はカラスや猛禽類などだが、ヒナはテンやイタチなどに襲われることもある。 詳しい寿命は分かっていないが、野生下では、足環の観察から12年を超えることが知られている。 保護状況・その他 シメの生息数は安定しているとして、国際自然保護連合などでは、現在のところ絶滅の恐れはないとしている。 尚、シメは分布域が広いこともあり、次の亜種が認識されている。 Coccothraustes coccothraustes coccothraustes ヨーロッパからシベリア中央部、モンゴル北部などに分布する基亜種 C. c. buvryi アフリカ北西部に分布 C. c. nigricans ウクライナ南部からトルコ北東部、イラン北部など C. c. humii アフガニスタン北東部からカザフスタン南部など C. c. schulpini シベリア南東部や中国北東部、朝鮮半島など C. c. japonicus 樺太やカムチャツカ半島、千島列島から日本 ところで、「シメ」の名前は、「シーッ」と聞こえる鳴き声から付けられたと言われている (「メ」は鳥を意味する接尾語) が、平安中期に編まれた「和名類聚抄」では、「鳹・漢語抄に比米と云ふは白き喙の鳥といふ」と書かれているので、元は「ヒメ」と呼ばれていたのだろう。 (「漢語抄」は奈良時代・養老年間に編纂されたと言われているが現存しない) 時代が下り、江戸時代の「和漢三才図絵」を見ると「シメ」と思われる図版が載っているが、記述は「倭名抄に曰ふ、鳹(比米)・嘴白き鳥、本名・『比米』。俗、誤りて『志米』と曰ふ」となっているので、いつの頃か「シメ」になってしまったことが窺える。 単に転訛してしまったのかもしれないが、「倭名抄」には、「鳹」に続いて「鴲」の記述があるので、このふたつを混同し、或いは間違ってしまったのかもしれない。 それには「鴲・音は脂、漢語抄に之米(しめ)と云ふは小き青雀なりと曰ふ」とあるが、シメの嘴は白っぽくは見えなくもないが、全体は青くも小さくもないので、これは別の鳥を指しているのだろう。 もっとも、どちらも「シメ」ではないのかもしれず、「ツグミ」や「ヒヨドリ」などと同様、名前の由来ははっきりしない。 アトリ科の鳥へ / このページの先頭へ |
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