カリガネはマガンによく似ている渡り鳥で、国内には冬鳥として飛来する。 しかし、飛来数は少なく、越冬地も限られていて、環境省では絶滅危惧種(EN)に指定している。
カリガネの分布域・生息環境 カリガネは渡り鳥で、夏にはロシアの北極圏やスカンジナビア半島などのユーラシア大陸北部で繁殖し、冬には南へ移動して、ヨーロッパ中・南部や日本、韓国、中国などで越冬する。 湖沼や湿地、水田などの耕作地周辺に生息していて、広くて開けた環境を好む。 カリガネの大きさ・形態 カリガネは全長53~66cm程で、マガンよりはひと回りほど小さいが、翼を広げると120~135cmほどの長さがある。 雌雄同色の鳥で、全体に暗い灰褐色のような色をしていて、淡い褐色の縞模様がある。 尾羽の基部(下尾筒)は白いが、腹は淡褐色で、暗色の斑が散在している。 また、嘴はピンクやオレンジ色で、基部の辺りから額にかけては白く、足はオレンジ色を帯びた色をしている。 一見するとマガンによく似ているが、目の周りには黄色いアイリングあり、嘴もカリガネの方が短くなっている。 カリガネの生態・生活 カリガネは、国内には冬鳥として少数が飛来し、10~3月頃に見られる。 湖沼や湿地、水田などの耕作地周辺で見られるが、国内では個体数が少なく、生息地も限られている。 マガンの群れと一緒にいることが多く、広くて開けた環境を好む。 草食性で、イネ科の植物や湖沼の水生植物のほか穀類なども食べるが、警戒心が強い鳥で、人が近づくとすぐに逃げて行ってしまう。 また、国内に飛来してくるものは、ロシア北極圏の繁殖地から、樺太やカムチャッカ半島を経て移動している。 カリガネの繁殖・寿命 カリガネの詳しい繁殖の様子などは分からないが、繁殖期は4~6月頃と言われている。 また、繁殖は一夫一婦で行われ、その関係は長く続くと言われている。 雌は4~6個の卵を産み、卵は25~28日ほどで孵化する。 ヒナは5週間を過ぎるころには飛べるようになり、この頃には巣立ちする。 幼鳥は次の繁殖期までは親と一緒に生活していて、雌雄ともに2~3年で性成熟する。 カリガネの寿命については分からないが、マガンは飼育下で47年、野生下では足環による観察で25年以上の記録があるので、カリガネもこれと同じほどの寿命があるのだろうと考えたりする。 カリガネの保護状況・その他 カリガネの個体数は近年急激に減少していて、現在、国際自然保護連合では絶滅危惧種(VU)に指定している。 ハンガリー東部にあるホルトバージ平原には、20世紀初頭の渡りの時期には10万羽もの群れが見られたと言われているが、現在では100羽近くにまで減少している。 他の地域も同様で、個体数の減少は、狩猟や急激な開発による生息地の減少が原因だと考えられている。 国内の状況も同じようなもので、冬の飛来数は増加傾向にあるとも言われているが、その数は少なく、地域も限られている。 かつてはマガンなどと共に多く飛来していたと言われているが、現在では島根県や石川県、宮城県などのごく限られた地域で観察されるだけになってしまっている。 京都府や三重県、愛知県などの一部でも稀に見られるが、いずれにしても飛来数は少なく、環境省でも絶滅危惧種(EN)に指定している。 カリガネは、開発されていない湖沼や湿地、広い耕作地などの環境が必要なため、今後の生息地の減少などが心配されている。 尚、カリガネには亜種が認識されていない。 |
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