サカツラガンは大型の水鳥で、国内へは稀な冬鳥や迷鳥として飛来することがある。 河川や湖沼、湿地帯などの水辺に生息していて、普段は群れをつくった生活をしている。
サカツラガンの分布域・生息環境 サカツラガンは東アジアに分布している大型の水鳥で、夏にはモンゴル南部や中国北東部、ロシア南東部などで繁殖し、冬には中国中部や東部などへ渡って越冬する。 国内では稀な冬鳥や迷鳥として飛来することがあり、カザフスタンやラオス、シベリア沿岸部や台湾などでも迷鳥として見られることがある。 沿岸や湖沼、河川や湿地帯などに生息しているが、移入されたものが中央ヨーロッパの都市部で定着している。 サカツラガンの大きさ・形態 サカツラガンはガンの中では大型で、全長81~94cm、翼を広げると160~185cm程の大きさがある。 体は雄の方が雌よりも大きいが、雌雄同色の鳥で、背や翼は暗褐色や赤褐色のような色をしている。 頭部から首にかけてははっきりと色が違っていて、嘴の基部から頭頂を通り、首の後ろなどは暗褐色で、頬や喉は淡褐色をしている。 また、尾羽は暗褐色で縁が白いが、尾羽の基部を被う羽毛(上尾筒・下尾筒)は白い。 脚はオレンジ色をしていて、嘴は黒いが、嘴基部の上方は筋のように白くなっている。 頬の部分が橙色を帯びるものも見られ、その様子が飲酒して赤くなったように見えることから名前が付けられていて、漢字表記は「酒面雁」と書かれる。 サカツラガンの生態・生活 サカツラガンは河川や湖沼、河口や干潟、湿地帯などの水辺に生息していて、普段は群れをつくって生活している。 昼間は休んでいることが多く、早朝や夕方に活発に活動する。 食性は植物性で、茎や葉、木の根や種子などを食べるが、水面を泳いで水生植物なども食べる。 冬には耕作地で採餌していることもあり、時には水辺から遠く離れていることもある。 4月頃に越冬地から戻り、その後まもなく繁殖期がはじまるが、春の渡りは2月下旬から4月上旬頃まで続き、秋の渡りは8月上旬から9月中旬頃まで続くと言われている。 サカツラガンの繁殖・寿命 繁殖は春に行われ、4月下旬から5月上旬頃にはじまる。 交配は一夫一婦で行われるが、ペアの関係が生涯続くかは分かっていない。 また、繁殖はペアや緩やかな群れをつくって行われる。 巣は、草などを用いて水辺近くの地面につくられ、周囲には縄張りが主張される。 雌は平均して5~6個の卵を産み、抱卵も雌が行う。 その間、雄は周囲を警戒し、縄張りを守っている。 卵は28~34日ほどで孵化し、育児は雌雄によって行われる。 幼鳥は8週間ほどで巣立ちし、12週を過ぎるころには飛べるようになって自立するが、その後もしばらくは親と一緒に生活している。 雌雄ともに2~3年ほどで性成熟し、寿命は長く、飼育下での平均は20年、長いものは40年程の寿命をもっている。 一方、野生下での寿命はほとんど分かっていない。 サカツラガンの保護状況・その他 近年、サカツラガンの生息地は減少していて、それに伴い個体数も減少している。 主な原因は家畜の放牧や開発、鉱物採掘などで、夏の繁殖地、冬の越冬地ともに生息環境が減少・劣化している。 現在、国際自然保護連合では絶滅危惧種(EN)に指定しているが、更なる保護が求められている。 尚、サカツラガンは家禽として飼育されているシナガチョウの原種になっている。 |
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サカツラガン