ツクシガモはユーラシア大陸の温帯域などに広く分布する大型のカモ類で、カモ類としては珍しく、雌雄ともに同じような色をしている。 日本へは冬鳥として飛来してくるが、個体数は少ない。
ツクシガモの分布域・生息環境 ツクシガモは、ユーラシアの温帯域やアフリカ北部に広く分布している。 イギリスやアイルランドなどのヨーロッパ西部では一年を通して生息しているが、ほとんどのものは季節的な移動をしている。 夏にはヨーロッパからモンゴルにかけての広い範囲で繁殖し、冬にはアフリカ大陸北部やヨーロッパ南部、インドや中国南部、朝鮮半島南部などに移動して越冬する。 但し、分布域は広いが、ツクシガモは干潟ができる沿岸域や河口、塩水の湿地や内陸の浅い湖沼や河川などに生息しているため、繁殖地、越冬地ともに分布域は連続していない。 国内では主に九州北部に冬鳥として飛来するが、近年は西日本の瀬戸内際でも見られるほか、四国や本州の中部より北でも稀な冬鳥して飛来する。 ツクシガモの大きさ・形態 ツクシガモは全長58~67㎝、翼を広げるとと110~130cmほどの長さがあり、体はマガモよりも大きい。 体は雄の方が雌よりも大きいが、カモ類としては珍しく雌雄ともに同じような色をしている。 体は全体に白く、肩から胸にかけて栗色の太い帯が入っている。 頭部から首にかけては緑黒色や黒色で、嘴と足は赤っぽい色をしている。 また、雄の額にはこぶがあり、繁殖期にはこのこぶが大きくなる。 一方、雌ではこぶがないか、あってもかなり小さい。 ツクシガモの生態・生活 ツクシガモは、国内では冬鳥して主に九州北部の有明海に飛来するが、瀬戸内海沿岸域にも少数が越冬している。 干潟や内湾、湿地や河口域、ため池などに生息していて、小さな群れで見られる。 採餌は主に干潟で行われ、甲殻類や貝類、藻類などを食べるが、魚類や軟体動物、水生昆虫なども食べる。 足が浅く水につかるようなところで、嘴を水面につけて左右に振りながら餌を探しているが、泥を掘り起こして餌を探したりもする。 また、水の中でも採餌し、ほかのカモ類のように、逆立ちになって採餌することもある。 繁殖後の換羽期には大きな群れをつくるが、渡り期には分散して群れは小さくなる。 ツクシガモの繁殖・寿命 ツクシガモはヨーロッパからモンゴルにかけての広い範囲で繁殖するが、繁殖場所は主に開けた湖沼や河川などで、繁殖地は連続していない。 繁殖期は4~7月頃で、繁殖地では縄張りが主張される。 ペアは越冬中に形成され、交配は一夫一婦で行われる。 雌は縄張り内に場所を選んで巣作りするが、巣は草地などの地面の窪みや浅く掘ったりしたもので、内側には柔らかい草や羽毛などが敷かれている。 また、樹洞や岩の割れ目、時にはウサギなどの哺乳類の古巣などを巣に利用することもある。 雌は7~12個、平均すると8~10個ほどの卵を産み、抱卵は雌によって行われる。 卵は30日前後で孵化し、育児は雌雄によって行われる。 ヒナは2週間を過ぎるころには巣を離れ、親は換羽地へ移動する。 幼鳥は、1~2羽の成鳥が見守る幼鳥同士の群れをつくって生活し、孵化後45~50日ほどで独立し、その後繁殖地を去るようになる。 雌は2年、雄は雌よりも遅く4~5年ほどで性成熟し、詳しい寿命は分からないが、野生下での平均寿命は14年程度と言われている。 ツクシガモの保護状況・その他 ツクシガモは分布域が広いこともあり、現在のところ絶滅の恐れはないとされている。 しかし、国内では冬鳥として少数が飛来しているが、開発などにより越冬できる環境が少なくなっていて、地域によっては飛来数が減少している地域もある。 そのため、環境省では絶滅危惧種に指定しているが、自治体によっても絶滅危惧種などに指定している。 この他、ツクシガモは有明海を中心とした筑紫地方に多く飛来することから「筑紫鴨(ツクシガモ)」と名付けられている。 |
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