クロツラヘラサギは「サギ」という名前がついているが、ペリカン目・トキ科に属している。 大型の水鳥で、国内では九州・沖縄地方で冬鳥して見ることができる。
クロツラヘラサギの分布域・生息環境 クロツラヘラサギはロシア極東部や朝鮮半島、中国沿岸部からベトナム、カンボジアなどの東アジアに分布している。 渡り鳥で、夏には朝鮮半島や中国の遼寧省、ロシアのピョートル大帝湾周辺などで繁殖し、特に朝鮮半島西側の離島に多い。 冬には中国南部の沿岸域からベトナム、カンボジアなどに移動して越冬するが、台湾や日本でも冬鳥として見られる。 国内では九州・沖縄地方に少数が飛来し、湿地や干潟、水田などに生息している。 クロツラヘラサギの大きさ・特徴 クロツラヘラサギの翼開長は110~145cm程で、チュウサギと同じほどの大きさがあるが、全長は嘴が長い分だけチュウサギよりは大きい。 この長い嘴は、名前のように、ヘラ状になっているのが特徴で、ヘラサギとはよく似ている。 ヘラサギとの違いは、クロツラヘラサギは嘴の基部から目の周りが黒いことも特徴になっていて、英名も「Black-faced Spoonbill(スプーンのような嘴)」と呼ばれている。 全身は白いが嘴や足は黒く、繁殖期になると冠羽が伸び、冠羽や胸の辺りが橙色っぽくなる。 また、成熟したものの嘴には、彫刻したような多数のしわが見られ、幼鳥や若いものは、ヘラサギと同じように翼の先が黒っぽい色をしている。 クロツラヘラサギの生態・生活 クロツラヘラサギは干潟や湿地、湖沼や水田などに生息しているが、一時的にできた埋立地の湿地などで見られることもある。 群れをつくって生活していて、小型の魚類や甲殻類などを食べるが、水生昆虫や海藻、両生類なども食べる。 採餌は湿地などの浅い水域で行われ、ヘラ状の嘴を小刻みに左右に振って餌を捕らえている。 早朝や夕暮れ時には活発に活動し、サギ類とは違い、飛ぶ時は首を伸ばしている クロツラヘラサギの繁殖・寿命 クロツラヘラサギの主な繁殖期は4~7月頃で、朝鮮半島西側の離島や、中国遼東半島沿岸の離島などで繁殖する。 繁殖地の多くは人が近づけないような岩の多い無人島や水辺の断崖で、繁殖は小さなコロニーをつくって行われる。 巣は断崖などの岩棚に小枝や枯れ草などを用いてつくられるが、以前使われたものやサギ類の古巣を利用することもある。 古巣を利用する場合は小枝などで補強され、雌はふつうは3個ほどを産卵する。 抱卵は雌雄が交代で行い、卵は25~30日ほどで孵化する。 ヒナは2ヵ月ほどで飛べるようになるが、その後もしばらくの間は親と一緒に生活している。 寿命は20~25年程度と言われているが、これが野生下のものか飼育下での寿命なのかは分からない。 また、クロツラヘラサギの若いものは夏に繁殖地まで戻らない個体も見られ、越冬地近くなどで夏を過ごすものもいると言われている。 クロツラヘラサギの保護状況・その他 クロツラヘラサギは開発による生息地の減少により、一時は絶滅寸前まで追い込まれたが、近年の保護活動によってやや個体数は回復してきている。 しかし、依然として個体数は少なく、国際自然保護連合(IUCN)では絶滅危惧種(EN)に指定している。 クロツラヘラサギは生息環境が限られているにもかかわらず、湿地や干潟がエビなどの養殖に転用されることもあり、更なる生息地の減少が心配されている。 国内でも幾つかの地域で越冬しているが、環境省でも絶滅危惧IB類に指定しているほか、自治体によっても絶滅危惧種に指定している。 |
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クロツラヘラサギ