ヨーロッパバイソンはがっしりとした体格で、大きい雄では体重が1200kgを超えると言われている。 森林地帯やステップ地帯で見られ、雌は子どもと一緒に群れをつくって生活している。
ヨーロッパバイソンの分布域・生息環境 ヨーロッパバイソンは、かつてはピレネー山脈からスウェーデン南部、コーカサス山脈に至るヨーロッパの低地に広く分布していたが、現在は、主にポーランドからウクライナ、ロシア西部にかけて断片的に分布している。 しかし、真の野生種は既に絶滅していて、現在見られるものは飼育されていたものを再導入したもので、中央ヨーロッパにも点在的に分布している。 ヨーロッパバイソンの大きさ・形態 ヨーロッパバイソンは平均した肩高が1.7~1.9m程で、ヨーロッパに生息している野生の哺乳類としては最も体が大きい。 体格は雌雄や固体によって差があるが、いずれも全体にがっしりとした体格で、肩がよく発達している。 体は雄の方が大きく、雄の体長は2.8~3.3m、体重は600~900kg程もある。 雌はやや小さいが、それでも体長2.2~2.8mほどで420~630kgの体重がある。 また、雄の大きいものでは体長は3.5m、肩高も2mを超え、体重も1,200kgを超えると言われている。 雌雄いずれも毛色は濃褐色や茶褐色、黒褐色などで、頭部から胸にかけては長い毛で覆われている。 角は雌雄ともにもっているが、細長くて、さほど長くはない。 一見してアメリカバイソンに似ているが、ヨーロッパバイソンの耳は毛の外に見えることから区別ができる。 ヨーロッパバイソンの生態・生活 ヨーロッパバイソンは森林地帯やステップ地帯などに生息し、群れをつくって生活している。 時には大きな群れをつくることもあるが、ふつうは10~12頭程度、多くても30頭程が集まって生活している。 この群れは繁殖期以外は雌雄が別の群れをつくっていて、雌を中心にした群れでは幼獣や若い雄がその中に見られる。 成熟した雄は雄同士の群れをつくって生活しているが、多くは単独で生活していて、群れをつくっても2頭から数頭までと言われている。 時に雄同士が争うことがあるが、均衡した力の相手とは争いを避けることが多いと言われている。 また、ヨーロッパバイソンの群れは家族群ではなく、しばしば群れ同士が集まったのち分散し、その際に一部のものが入れ替わるとされている。 日中に活動し、主にシダ類や木の葉、木の枝、樹皮、ドングリなどを食べるが、果実なども食べる。 また、水は毎日のみ、冬場には水溜りの氷を割って水を飲んだり、雪を食べたりして水分を補給している。 行動範囲は生息環境や食糧事情などによって変化するが、低地の森林などに生息する雄の行動範囲は広く、135~150平方キロメートルほどで、雌はやや狭く100平方キロメートルと言われている。 また、冬の行動範囲は積雪などもあり、雄で10平方キロメートル、雌で8平方キロメートルと、かなり狭くなるとも言われている。 しかし、ヨーロッパバイソンには特に縄張り意識がなく、群れ同士の行動範囲は重なっていることが多い。 ヨーロッパバイソンの繁殖・寿命 ヨーロッパバイソンの繁殖期は8~10月頃に見られるが、早ければ7月の内にも見られる。 繁殖は一夫多妻で行われ、この時期の雄は、雌をめぐってしばしば争いが起こる。 雌の妊娠期間は9ヵ月前後で、出産は群れから離れた藪などで行われる。 ふつうは1産1子を出産するが、稀に2子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は平均25kg程で、生後しばらくすると立ち上がることができる。 数日の間は群れと離れているが、その後、雌は子どもを連れて群れに戻っていく。 子どもは10~12ヵ月程度の授乳期間があり、雄は3~4年で性成熟するが、雄は6歳ほどになってから実際の繁殖に参加するようになる。 雌は3年ほどで性成熟し、次の年には最初の子どもを出産する。 飼育下での寿命は20~25年、長ければ30年以上の寿命をもっているが、野生下ではそれよりも短く、平均すると15~20年程度と考えられている。 また、雌の方が長生きする傾向がある。 ヨーロッパバイソンの保護状況・その他 ヨーロッパバイソンは石器時代の壁画などにも見られることから、 以前はヨーロッパの大部分からロシアのカフカス地方まで広く分布していて、古くから狩猟の対象となっていた。 しかし、アメリカバイソンと同様、肉や毛皮などを目的に乱獲されたため、真の野生種は既に絶滅している。 第一次世界大戦によって、ポーランドとロシアの国境付近に100頭ほど残っていた野生の群れは絶滅し、1927年にはカフカス地方で保護されていた最後の野生種も絶滅している。 現在見られるヨーロッパバイソンは、1923年に保護協会が設立され、各地の動物園などに残されていた52頭(或いは48頭)を飼育繁殖させたものである。 その後、ポーランドなどの保護区に放たれたものが徐々に個体数を増やし、現在はブルガリアやルーマニア、ハンガリーやチェコなどにも再導入されている。 その後も個体数は少しずつ増加していて、近年までは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価では絶滅危惧種(VU)としてレッドリストに指定されていたが、現在は準絶滅危惧種(NT)に引き下げられている。 |
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ヨーロッパバイソン ( ヨーロッパヤギュウ)