ホッキョクグマは北アメリカ北部やユーラシア大陸北部に分布しているが、ヒグマよりも更に北の北極圏や流氷圏に生息し、グリーンランド南端やアイスランド南部、カナダのハドソン湾、ジェームス湾、ニューファンドランド島辺りまで生息している。 他のクマに比べて全身が真っ白いことから「シロクマ」などとも呼ばれているが、ホッキョクグマは毛色だけでなく、体つきも他のクマとは違っている。 体は長く、肩幅も狭くて、遠くから見ても首が長い。 また、頭部は小さくて鼻面は長く、耳は短くて丸い。 体はクマの中ではもっとも大きく、時には700kgを超えるものも見られる。 体毛は5cm程の下毛と15cn程の上毛からなり、深く密生していて脂気がある。 また、4肢には5本の指をもっているが、寒冷地での体温の低下を防ぐため足の裏にも毛が生えていて、皮下脂肪も多い。 幼獣や若いものは真っ白であるが、成獣ではクリームがかった白色をしているものなども見られる。 これは毛の内部が特殊な構造をしているためで、ホッキョクグマの毛の内部は空洞になっていて、光を透過させる構造になっている。 この為、光が空洞内部で乱反射して白色に見えるが、空洞に汚れなどが入り込むことで黄色っぽく見える。 また、毛色の所々が緑色をしているものもいるが、これは空洞内の藻の発生によるもので、動物園などでも時々見られる。 ホッキョクグマのこのような特殊な体毛の構造は、光を透過させることによって体表にまで熱を届けると共に、空洞内にも熱を溜めて保温効果を保ち、寒冷地での生活に適応しているものと考えられている。 生活様態は、海岸近くに生息し海と結びついた暮らしをしているが、冬には流氷の南下と共に南へ移動し、夏には北へ移動する。 普段は単独生活をしていて、獲物を求めて広範囲を移動するが、行動範囲は食料事情などによって大きく変わる。 時には流氷に乗って何百キロもの距離を移動することもあり、中には、4ヶ月程でアラスカからグリーンランドまで5,000kmを超える距離を移動したものも知られている。 泳ぎは大変うまい動物で、陸から10kmも離れたところを泳いでいたりする。 泳ぐ速度は時速4~6.5km程度で、かなり長い時間泳ぎ続けることが出来ると言われ、潜水時間は2分程度と考えられている。 雑食性だが他のクマよりも肉食性が強く、主にアザラシ類や魚などを食べるが、トナカイなども食べる。 力が強く、時にはセイウチなども倒してしまうが、氷が解ける夏には陸上植物や海草のほか、海鳥やその卵なども食べる。 また、打ち上げられたクジラの死肉なども食べ、このような大きな獲物には何頭かが集まることもある。 アザラシを倒すときは、忍び寄って跳びかかったり待ち伏せをして襲いかかることもあるが、巣穴にいるアザラシを探し出し、氷を掘って襲ったりもする。 ホッキョクグマは聴覚や嗅覚にすぐれ、1.5kmも離れている獲物の臭いも嗅ぎ別けると言われているが、この鋭い嗅覚を使って巣の中にいるアザラシを探し出してしまう。 生息域では人以外に外敵はいないが、沖合いなどを泳いでいるときに希にシャチなどに襲われることがある。 また、雄の成獣は子どもを襲うことが知られていて、子どもをつれた雌は他のものとの接触を避けるようにしているが、危険が迫ると水の中に逃げ込み、子どもは尾に掴らせて逃げると言われている。 繁殖期は3~6月頃で、11月~翌年1月頃にかけて1~4子を産む。 ふつうは2子を出産するが、妊娠期間は195~265日と着床遅延があり、ふつうは230~250日程度と言われている。 また、ホッキョクグマは冬眠はしないが、妊娠している雌は出産前に穴を掘って、そこに潜り込んで出産する。 生まれたばかりの子どもは体長30cm、体重は600g程で、目は閉じているが、体には短い毛が生えている。 目はひと月ほどで見えるようになり、歯は2ヵ月頃までには生えてくる。 春になる4月頃には親子共に巣穴から出てくるが、体重は2ヶ月で6~7kg、4ヶ月で22kg、半年ほどで40kg程に成長する。 子どもは2年~2年半、長いものでは3年ほどは母親と一緒にいて、この間は授乳される。 しばらくの後には離れていくが、成長するのには4年程かかり、5~6年で性成熟すると考えられている。 また、雌は2~4年間隔で出産すると言われているが、食糧事情のよいものなどは毎年繁殖するとも言われている。 寿命は30~35年程と思われるが、野生下では20~25年程度と考えられている。 飼育下のものでは45年を生きた固体が知られているが、飼育下での繁殖は難しいとされている。 近年では地球温暖化による北極圏の環境変化などにより、ホッキョクグマの生息環境も変化しており、獲物が少ない時などは、人の住む地域にも姿を見せることがある。 ホッキョクグマは動物園などでも人気のある動物だが、性質は荒く、人に向かってくることもある。 また、狩猟の対象にもなっていて、毛皮や肉、脂肪、腱などが利用されるが、肝臓にはビタミンAが大量に含まれていて有毒とされている。 ところで、ホッキョクグマとヒグマの生息域は元来重なっていないが、温暖化によるヒグマの北上とホッキョクグマの南下によって、地域によっては両種が出会うようなことも起こっている。 ヒグマとは共通の祖先から枝分かれしたと考えられているが、このような地域では交雑がみられ、ホッキョクグマのように体色は白いが、ヒグマのように盛り上がった肩を特徴にしている固体が生まれている。 このような交雑種は繁殖能力をもっていて、両種の交雑が進む恐れも指摘されている。 現在、ホッキョクグマの生息数は減少していて、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに絶滅危惧種(VU)として指定されているが、温暖化による流氷地域の減少によって獲物となるアザラシの繁殖地も少なくなり、ホッキョクグマにも影響が及んでいる。 クマ科の動物へ / このページの先頭へ |
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ホッキョクグマ (シロクマ)