トナカイ

トナカイ さんのプロフィール


動物図鑑・トナカイ

トナカイ

偶蹄目・シカ科
学 名 Rangifer tarandus
英 名 Reindeer / Caribou
分布域 亜寒帯から北極圏
生息環境 ツンドラやタイガ地帯など
体 長 雄で180~210cm程度、雌で体長160~200cm程度
尾 長 10~20cm程度
体 重 雄で160~180kg、雌で 80~120kg程度
IUCNによる保存状況評価 / 絶滅危惧種 (VU)

トナカイは北極圏周辺に分布している大型のシカで、二ホンジカに比べるとかなり大きい。

サンタクロースを乗せるソリを引く動物としてよく知られているが、シカ科の仲間の中では唯一雌雄ともに角をもっていて、雄の角は大変見事なものになる。
●分布域・生息環境
●大きさ・特徴
●生態・生活
●繁殖・寿命
●保護状況・その他
●写真ページ


トナカイの分布域・生息環境
トナカイは北アメリカやユーラシアの北極圏から亜寒帯にかけての寒冷地に分布している。

ツンドラやタイガ地帯の森林などに生息していて、ユーラシアのものはグリーンランドやノルウェー、フィンランドなどの北ヨーロッパやロシアのシベリア地方などに分布している。

北アメリカではアラスカやカナダなどの寒帯地方に分布していて、北アメリカのものはカリブーとも呼ばれている。


トナカイの大きさ・特徴

トナカイにはシカの中では大型で、アカシカよりは小さいが、二ホンジカに比べるとかなり大きい。

多くの亜種が知られていて、体の大きさには差があるが、一般に北のものよりも南に分布しているものの方が大きくなる傾向がある。

平均した体の大きさは、雄で体長180~210cm、体重160~180kg程で、雌は体長160~200cm、体重が80~120kgほどで、体は雄の方が大きい。

また、亜種によっては、雄は雌の倍程の大きさに成長し、大きい雄では体重が300kgを超えるものも知られている。

体の大きさは季節や食糧事情などによっても変化があり、繁殖後の雄の体重は繁殖前の体重に比べると40パーセントも減少するとも言われている。

寒冷地方に生息しているため、トナカイはその環境に適した体をしていて、蹄は大きく、雪の上を歩くのに適している。
蹄の指の間にも毛が生えていて、雪などによる目詰まりを防いでいるほか、寒さを避けるため耳は比較的短くて丸く、尾も短くて毛に覆われている。

毛色はほとんど黒色に近いものから白色に近いものまで、分布域などによって変化があるが、多くは茶色や褐色、灰色などで、首や腹部、足の内側などは淡い色をしている。

頭部は体よりも暗い色合いであるほか、冬期には被毛も長くなって全体に淡い色になる傾向がある。

また、首の下には長くて明るい色のタテガミのような毛が見られ、冬場の雄は特に顕著になる。

雌の角は雄に比べて小さくて単純な形をしているが、トナカイはシカの仲間の中では唯一雌雄共に角をもっている。

これがトナカイの特徴になっているが、雄の角は枝角に成長する見事なもので、大きいものでは130cm程の長さをもつものも見られる。

また、雄の角は春に生えて、秋から冬にかけて抜け落ちるが、雌では冬に生えて春から夏にかけて抜け落ちるという特徴もある。
これは、雄は繁殖に向けて角が伸びるが、雌は子育てのために外敵を退けたり、雪をかき分けて子どもに餌を与えるためなどと考えられている。

雌雄が角をもっているほか、目の色は季節によって変化し、これもトナカイの特徴になっている。
夏は黄色い目をしていて冬は青い色になるが、これも冬の少ない光を効率よく取り込むためと考えられている。


トナカイの生態・生活

トナカイは北極圏のツンドラやタイガ地帯に生息しているが、シカの仲間では珍しく、雌雄混合の大きな群れをつくって生活している。
群れの大きさは地域によって大きな差があるが、ロシアのものは非常に大きな群れをつくるとされている。

群れは夏の間に最大となり、秋になるにつれて群れは分散して小さくなり、冬には、ほとんどの群れが森林地帯で越冬する。

また、トナカイには、分布域や生息環境などによって定住性のものと季節移動するものが知られている。

季節移動するものは、春と秋には大規模な移動をするが、その移動距離は1日当たり20~55km程で、北米のものでは1年を通すと5000kmを超える距離を移動すると言われている。

食性は植物性で、木の根や球根、木の葉や草類、茎などを食べるが、トナカイゴケと呼ばれるハナゴケの1種も食べる。

嗅覚は鋭く、冬期には雪の下にある食べ物の臭いを嗅ぎ出し、前足や角を使って掘りだして食べたりするが、時にはレミングなどの小動物や魚類、鳥の卵などを食べることも知られている。

また、ミネラル補給のため、抜け落ちた角や動物の骨などを齧ったりすることも観察されている。

走るのも速く、トナカイは時速60~80km程で駆けることができると言われている。
泳ぎもうまく、川や湖を渡ったりするが、大きな蹄はこの時にも役立っている。

外敵はヒグマオオカミアメリカクロクマなどで、特に子どもや傷ついたものなどが襲われることが多く、オオヤマネコクズリなどに襲われることもある。

ところで、学名の「Rangifer」は「地面を打ち鳴らす」という意味だが、トナカイは歩くとカチカチというような音を立てる。
この音は蹄によって起こるものでなく、膝の構造と腱によって生じるもので、後に続く子どもや仲間を導くために役立っていると言われている。

また、トナカイは古くから家畜として利用されていて、現在も多くの地域で飼育されている。
肉は食用、皮は衣類や靴、テント、乳は飲料として利用され、角は粉末にして薬用に用いられるほか、使役にも利用されている。

サンタクロースを乗せるソリを引く動物としてもよく知られていて、アイスランドやアラスカのプリビロフ諸島などにも人為的な移入が行われている。


トナカイの繁殖・寿命

トナカイの繁殖期は9月下旬~11月上旬頃で、この時期の雄は雌をめぐって争い、優位な雄は5~20頭程の雌を率いてハーレムを形成する。

しかし、この期間中の雄は食べるのをやめるため、脂肪の蓄えの多くを失い、体重が大きく減少する。

繁殖は一夫多妻で、雌は妊娠期間210~240日、平均すると228日前後で、1産1~2子、普通は1子を出産する。

生まれたばかりの子どもの体重は3~12kg、平均6kg程で、他のシカ類の多くとは違い、トナカイの子どもには白色の斑が見られない。
子どもは生後すぐに乳を飲みはじめ、1時間ほどで母親の後をついて回れることができる。

成長は早く、子どもは1ヵ月半程で離乳し、1年程で親と同じほどの大きさに成長する。
雌雄共に2年程で性成熟し、この頃には枝のある角が生えはじめる。

寿命はふつう雌の方が雄よりも長いと言われていて、雌の野生での寿命は10~15年、中にはそれ以上の寿命をもっているものも見られる。
雄の寿命は8年程度と言われているが、平均すると4~5年程度とも考えられている。

しかし、野生下での多くは雌雄共に10年より短いと言われているが、飼育下ではこれよりも長く、20年程度の寿命があることが知られている。


トナカイの保護状況・その他

トナカイはかつて20万頭にも達する群れをつくったと言われているが、乱獲などによって生息数が激減し、ヨーロッパのほとんどの地域では野生種が絶滅してしまっている。

モンゴルや中国北部に分布していたものも今ではほとんど絶滅していて、北アメリカでも分布域は減少している。

アラスカでは30を超える群れが確認されているが、アメリカ合衆国本土のものは分布域が限られていて、個体数もかなり少なくなっている。

トナカイは、これまでのところ絶滅の恐れはないとされていたが、乱獲の他、耕作地の開発や拡大、石油や鉱物資源の採掘や探査、更には森林の伐採なども加わり、生息地が脅かされ、生息数も減少している。

現在、トナカイは国際自然保護連合のレッドリストに絶滅危惧種(VU)として記載される状況になってしまっていて、北極圏の個体群も危険にさらされていると考えられている。

一方、家畜化されたトナカイは、ロシアやアラスカ、カナダなどのほか、合衆国本土の多くの州で飼育されている。

また、元来はトナカイが分布していない南インド洋のフランス領・ケルゲレン諸島や、南大西洋のイギリス領・サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島などにも人為的に移入されている。

この他、トナカイには幾つかの亜種が知られているが、近年の遺伝子研究によって亜種はより細分化され、次のような亜種が提案されている。

ユーラシアに分布するもの
Rangifer tarandus tarandus (Mountain reindeer・Norwegian reindeer)
ノルウェーの北極圏とアイスランド東部に分布する基亜種

R. t. fennicus (Finnish forest reindeer)
ロシア北西部とフィンランド

R. t. groenlandicus (Western Greenlandic Caribou)
グリーンランド南西部。 別種・R. groenlandicusとする意見もある

R. t. pearsoni (Novaya Zemlya reindee)
ロシアのノヴァヤゼムリャ諸島とノヴォシビルスク諸島

R. t. phylarchus (Kamchatkan reindeer )
ロシアのカムチャッカ半島

R. t. platyrhynchus (Svalbard reindeer)
ノルウェーのスバールバル諸島に分布する最小の亜種で、肩高80cm程度
別種・R. platyrhynchus とする意見もある

R. t. sibiricus (Siberian tundra reindeer)
ロシアのシベリア地方

R. t. valentinae (Siberian forest reindee)
ロシアのウラル山脈とモンゴルのアルタイ山脈

北米に分布するもの
R. t. arcticus (Barren-ground caribou)
カナダの北極圏やグリーンランド西部

R. t. caboti (Labrador caribou or Ungava caribou)
カナダのケベック州北部およびラブラドール州北部

R. t. caribou (Boreal woodland caribou)
カナダ北東部

R. t. fortidens (Rocky Mountain caribou)
カナダのロッキー山脈に分布する最大種

R. t. granti (Grant's caribou)
アラスカ半島の西端と周辺の島々

R. t. montanus (Selkirk Mountains caribou)
カナダのブリティッシュコロンビア州とアメリカ合衆国のワシントン州、アイダホ州、モンタナ州にあるコロンビア山脈

R. t. osborni (Osborn's caribou)
カナダのブリティッシュコロンビア州

R. t. pearyi (Peary caribou)
カナダのヌナブト準州とノースウェスト準州の北極圏諸島

R. t. stonei (Stone's caribou)
アラスカ南部とユーコン準州南東部

R. t. terranovae (Newfoundland caribou)
カナダのニューファンドランド・ラブラドール州

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