オオサイチョウ

オオサイチョウはインドから東南アジア全体にかけて分布していて、インドやネパール、ブータンやミャンマーからベトナムにかけてのインドシナ半島、更にマレー半島からインドネシアまで、広く分布している。
主に湿度のある常緑樹林に生息していて、チベットの一部にも生息している。

名前のように、体は大きく、翼を広げると150～180cm程の長さがある。
尾羽が長いこともあり、全長は国内で見られるダイサギやアオサギなどよりも大きく、平均した体重は3km程だが、大きいものでは体重が4kg程のものも見られる。

大きな嘴がよく目立つが、嘴の上から前頭部にかけては、特徴的な黄色のカブト状の突起が見られる。
これがサイの角のように見えることから「サイチョウ」と呼ばれるとされているが、嘴は上嘴は黄色く、下嘴は白っぽい色をしていて、顔は黒い。

オオサイチョウは雌雄ともに同じような色をしてる鳥で、後頭部から首にかけては黄色みを帯びているが、体は黒い。
翼も黒い色をしているが、一本の白っぽい帯が見られ、外縁も白い色をしている。
一方、尾羽は白くて、黒い帯が一本見られる。

体は雄の方がやや大きく、雄の目は赤く、雌では青い色をしている。
また、雄の目の周りは黒いが、雌は赤い色をしているほか、嘴の上にある突起も、雄では前後が黒いが、雌では赤っぽい色をしている。

オオサイチョウは湿度の高い森林地帯に生息していて、特に背の高い常緑樹林に多く見られる。
標高600～2000m辺りまで生息していて、雌雄とその子どもからなる小さな家族群で生活している。

樹上性の鳥で、多くの時間を樹冠付近で過ごし、主にイチジクなどの果実類を食べる。
また、リスなどの小型の哺乳類や両生類、爬虫類や昆虫類などのほか、小鳥を食べることもあり、果実の豊富な所では大きな群れになることもある。

活動は日中に行われ、夜になると大きな群れをつくって樹上で休む。
体が大きく、樹冠近くで生活していることもあり、人以外には外敵はいないと言われている。

繁殖期は一年に一度、1～5月頃に見られる。
交配は一夫一婦と考えられていて、その関係は生涯のあいだ続くとも言われている。

巣穴は大きな樹洞が利用され、周囲には縄張りが主張されるが、巣穴となる樹洞は、ふつうは背の高い古木の洞が選ばれる。
この古木は、樹冠部よりも高く伸びるものが選ばれることが多く、長期に渡って利用されることが多い。

また、オオサイチョウの巣作りには特徴があり、雌は樹洞の中に体を入れると、中から糞などで入り口をふさいでしまう。
壁には小さな穴が開けられていて、抱卵期間の間、雄はこの穴から雌に餌を差し入れるという、変わった営巣を行う。

雌は樹洞の中で1～2個の卵を産卵し、38～40日程のあいだ抱卵する。
ヒナが孵化したのちの育児にも特徴があり、雌は孵化後も巣の中に留まっていて、5週間ほどの後に壁を破って外へ出てくる。

一方、ヒナは巣穴に留まったままで、自ら壁をつくって樹洞の中に身を隠している。
雌が巣穴から出たのちは、雌雄でヒナに餌を運び、2週間ほどの間は給餌が行われる。
やがてヒナも樹洞から出てきて、孵化後15週程で独立するとされている。

飼育下での寿命は40～50年ほどで、オオサイチョウはかなり長い寿命をもっている。
野生下でも30～40年ほどの寿命があるとされているが、天敵がいないことから、比較的長い寿命があると考えられている。

オオサイチョウは分布域が広いにもかかわらず、生息数は減少している。
主な原因のひとつは近年の開発により生息地が減少で、オオサイチョウは大きな樹洞のある古木に営巣するが、その様な古木の伐採が特に影響していると指摘されている。

また、樹冠付近で生活していて、外敵もほとんどいないが、狩猟も大きな脅威になっていて、国際自然保護連合(IUCN)では、現在、絶滅危惧種(VU)に指定しているが、更なる個体数の減少が心配されている。