エナガは国内各地で見られる小鳥で、名前のように、体と同じほどの長さの尾をもっている。 常に群れで生活していて、樹上で活発に動き回っている。
分布域・生息環境 エナガはユーラシア大陸に広く分布していて、ヨーロッパから中央アジアを経て、中国やロシア、日本や朝鮮半島を含むユーラシアの温帯域で見られ、国内では九州より北で留鳥として生息している。 分布域が広いこともあり多くの亜種が認識されているが、国内にも幾つかの亜種が生息している。 また、名前のよく似たものに「オナガ」がいるが、オナガはカラス科の鳥で、国内では東日本などに分布している。 大きさ・形態 体はシジュウカラよりも小さく、スズメとほぼ同じ大きさをしている。 ただ、全長13~14cm程だが、その半分ほどは長い尾が占めていて、その長い尾がエナガの特徴になっている。 雌雄ともに同じ色で、全体は白と黒のように見える。 眉から首の裏、背や尾などは黒や黒褐色のような色で、背の両側や尾の下(下尾筒)は淡いワインレッドのような色をしている。 頭頂や頬から胸、腹側は白く、黒い嘴は短い。 羽毛は柔らかく、綿団子のような体つきをしている。 また、北海道に分布するものは、成鳥では目の上を通る暗色の帯(眉斑)がなく「シマエナガ(島エナガ)」と呼ばれ、頭部全体が白っぽい。 このシマエナガを A. c. japonicus として別亜種にする場合があるが、幼鳥は眉斑などが褐色を帯びるため、基亜種の同意語(シノニム)とする場合もあり、今後の研究が待たれる。 尚、「エナガ」の名前は、特徴である長い尾を柄杓の柄に例えて付けられたと言われている。 生態・生活 エナガは、国内では多くの地域で留鳥として見られ、平野部から低山地にかけての森林や雑木林などに生息している。 二次林でも多く見られ、河川や湖沼周辺の雑木林や藪などのほか、特に冬季には山地のものが平野部に降りてきて、寺社の樹林や樹木の多い市街地の公園などでもふつうに見られる鳥でもある。 群れで生活していて、数羽から20羽ほどの群れで、縄張りをもった生活をしている。 この群れは、ふつうは幾つかの家族群が集まったもので、合同の群れをつくっている。 また、比較的小さな群れは、しばしばシジュウカラやヤマガラ、メジロなど、他の鳥の群れと一緒になっていることが見られる。 主に樹上で生活していて、上・中層部に多いが、低木の枝にとまっていることもある。 樹上では常に動き回っていて、僅かな距離を移動しながら採餌している。 この時、しばしば「チュリリ」や「ジュリリ」などの小さな鳴き声をあげ、群れの仲間を確認するように動き回っている。 昆虫類やクモ類などのほか、木の実や種子などを食べるが、樹液などもよく食べ、時にかなり大きな昆虫の幼虫なども食べる。 地上で採餌することもあるが、枝の間を動き回り、時には逆さまになったりして、主に樹上で採餌している。 一羽が飛び立つと、後を追うように群れ全体が飛び去っていく。 また、夜間は群れになって同じ木の枝に並んで休んでいるが、市街地では街路樹をねぐらにすることもある。 繁殖・寿命 国内での繁殖期は4~6月頃で、繁殖は一夫一婦で行われる。 エナガは繁殖期も群れで生活しているが、繁殖ペアは群れの中で小さな縄張りを主張するようになる。 巣は樹上につくられ、枝や幹の叉などに袋状のようなものがつくられる。 巣作りは雌雄で行われ、巣材には小枝や苔類、獣毛などが利用されている。 巣の大きさは直径10cm、高さ15cm程で、側面の上部に小さな出入口があり、中には羽毛などの柔らかい素材が敷かれている。 雌は7~12個ほどの卵を産み、抱卵は雌雄によって行われるが、日中は主に雌が抱卵し、夜間は雌雄が抱卵するとされている。 卵は2週間ほどで孵化し、育児も雌雄によって行われるが、繁殖ペア以外の個体(繁殖に失敗した雄など)がヘルパーとして抱卵や育児に参加することもある。 ヒナは、孵化後2週間を過ぎるころには巣を離れる。 外敵はカラスや猛禽類、大型のヘビなどで、多くは卵やヒナが襲われるが、時に成鳥が襲われることもある。 また、野生下での寿命は、足環による標識調査で、7年を超えるものが観察されている。 保護状況・その他 エナガは分布域が広いこともあり、国際自然保護連合などでは、現在のところ絶滅の恐れはないとしている。 しかし、国内各地でもふつうに見られるが、生息数が減少している地域もあり、自治体にょっては準絶滅危惧種などに指定している。 尚、エナガは体の大きさや羽毛の色の違いなどから、次のような多くの亜種に別けられているが、北海道に分布するシマエナガ(A. c. japonicus)は、基亜種の同意語(シノニム)として記述している。 Aegithalos caudatus caudatus ヨーロッパ北部および東部からシベリアにかけて、日本、朝鮮半島などにも分布する基亜種 A. c. alpinus(またはrustamovi) アゼルバイジャン南東部やイラン北部、トルクメニスタン南西部 A. c. aremoricus フランス西部 A. c. europaeus フランス北東部やドイツからイタリア北部、トルコにかけて分布 A. c. irbii(または ibericus) スペイン南部、ポルトガル、コルシカ島 A. c. italiae イタリア中部および南部、スロベニア南西部 A. c. kiusiuensis 四国、九州に分布 A. c. macedonicus アルバニア・ギリシャから、ブルガリア・トルコ北西部にかけて A. c. magnus 朝鮮半島や対馬、壱岐 A. c. major トルコ北東部、コーカサス地方 A. c. passekii イラン南西部、トルコ南東部 A. c. rosaceus ブリテン諸島 A. c. siculus シチリア島 A. c. taiti フランス南部および南西部から、スペイン中部・ポルトガルにかけて分布 A. c. tauricus クリミア半島 A. c. tephronotus ギリシャ東部から、イラク北部・シリア・トルコ中部にかけて A. c. trivirgatus 本州や佐渡島、隠岐など また、エナガ科は、以前はウグイス科のフジイロムシクイ属に含まれていたが、現在は独立した科になっている。 |
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