セスジキノボリカンガルーは、名前のように、オーストラリア本土に分布するカンガルー属とは違って木に登り、半樹上性の生活をしている。 体つきもやや違っていて、前足は太くてがっしりとしている。 分布 キノボリカンガルーの仲間は、パプアニューギニアやオーストラリアのクイーンズランド州北東部、その周辺のいくつかの島などに分布しているが、セスジキノボリカンガルーは、インドネシアのイリアンジャヤ中央部からパプアニューギニアの中部からび東部にかけて分布している。 形態 体つきは本土のカンガルー属とは異なっていて、遠望していてもその様子がよく分かる。 後肢は発達しているが、オオカンガルーなどのカンガルー属ほど著しく大きくはない。 しかし、前肢がよく発達していて、見るからにがっしりとしている。 尾も体長より長いが、カンガルー属のように太くはなく、耳は大きいが、これもカンガルー属ほどではなく、吻も尖っている。 また、セスジキノボリカンガルーの四肢の爪は丈夫で長く、離れていてもよく目立つ。 体は僅かに雄の方が大きいが、毛色は雌雄ともに栗色や赤褐色のような色合いで、喉から腹側にかけてや四肢の先などは淡く、クリーム色のような色をしている。 また、頭部から背中の正中線に沿って2本の淡い筋があり、これは名前である「セスジ」の由来になっている。 尾にも淡色のリング状の模様や斑などがあるが、この模様は個体によって変化がある。 生態・生活 セスジキノボリカンガルーはオーストラリアのカンガルー類とは違い、草原や平原、岩場などでは見られず、山間部の森林地帯に生息している。 標高1,200~2,700m辺りのブナやカシが茂る熱帯雨林や落葉樹林で見られ、半樹上の生活をしている。 昼間も活動するが、早朝や夕暮れ時には特に活発に活動し、主として夜行性とも言われている。 普段は単独で生活していて、木の葉や木の実、果実や花、草類などを食べるが、植物質をバクテリアによって分解させるため、胃は反芻動物のように大きくなっている。 また、多くはないが、鳥やその卵、ヘビなどのタンパク質も食べる。 昼間は多くの時間を樹上で過ごしているが、採餌のためしばしば地面に降り、日が暮れると水を飲みに地上に降りてくる。 地上での動きはゆっくりとしているが、カンガルー属ほどではないが、後肢で跳ねることもでき、かなりの速さで移動することができる。 また、セスジキノボリカンガルーはカンガルー属と違って、歩く時は後肢を交互に動かして歩くことができる。 樹上での動きは敏捷で、長い尾はバランスをとるのに役立っている。 木に登るときは、前肢で幹をつかまえるようにして登るが、丈夫な爪や足裏の広い後肢も木登りに適している。 跳躍力は驚くほど優れていて、木の上から離れた別の木へ、下方に向かって10m程も跳ぶことができる。 また、地面へは、18m程もの高さの木の上から飛び降りることもできるとも言われている。 行動範囲は、雌で0.02平方km程度と言われていて、雄の行動範囲の中には、いつくかの雌の行動範囲が含まれている。 繁殖・寿命 繁殖は1年を通して見られるが、詳しい繁殖の様子などは分かっていない。 飼育下での妊娠期間は21~38日程度と言われているが、長ければ45日程かかるとも言われている。 カンガルー属と同様、雌の腹部には育児嚢があり、ふつうは1産1子を出産する。 生まれたばかりの子どもは自分の力で育児嚢に入っていき、10~12ヶ月程の間は育児嚢の中で成長する。 また、育児能から出た後も、数ヶ月の間は授乳され、雌は2年程度、雄は遅くて、4年を過ぎる頃に性成熟する。 外敵は大型のヘビ類などで、野生下での詳しい寿命は分かっていないが、飼育下での寿命は20年を超える。 保護状況・その他 セスジキノボリカンガルーには ・Dendrolagus goodfellowi goodfellowi ・D. g. buergersi の2亜種が知られているが、近年の開発による生息地の減少などにより、いずれも生息数は著しく減少している。 現在、国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(EN)としてレッドリストに指定されているが、更なる生息数の減少も懸念されている。 カンガルー科の動物へ / このページの先頭へ |
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セスジキノボリカンガルー