アグーチは中央アメリカから南アメリカにかけて分布している齧歯類で、一見して大きなリスのような感じも受けるが、アグーチの尾は短くてほとんど無尾に近い。 齧歯類の中では肢が長い特徴をもっていて、幾つかの種が知られている。
アグーチの分布域・生息環境 アグーチの仲間はメキシコ南部からアルゼンチン北部にかけて分布していて、森林や草原、サバンナや耕作地などに生息している。 河川や湖沼、湿地などの水辺周辺に多く見られ、標高2000m辺りまで生息している。 アグーチの大きさ・形態 アグーチは大きなリスのような体つきをしているが、四肢は長く、多くのリス類よりも体が大きい。 幾つかの種が知られていて、平均した体長は40~60cm程度、体重は1.5~4kg程だが、大きいものでは体長が70cm、体重も6kg程に成長するものもいる。 前肢に5本、後肢に3本の指があるが、尾はかなり短いか無いに等しく、毛は生えていない。 また、雌雄ともに肛門臭腺があり、縄張りなどに臭いをつける。 毛色には変化があるが、ほとんどのものはオリーブ色を帯びた茶色で全体に短いが、後半身の毛はオレンジ色を帯びていて長くなっている。 また、腹部は白っぽいか黄褐色をしているが、体の部分によっては白い毛があるものも見られる。 いずれにしても、アグーチは全体に美しい毛色をしている。 アグーチの生態・生活 アグーチは地上で生活し、森林や雑木林、サバンナなどに生息している。 耕作地などにも生息しているが、湿地や河川、湖沼周辺などの水辺周辺に多く見られる。 また、ペルーではアマゾン川流域に生息しているが、標高2000m辺りまで姿を現す。 アグーチはペアや家族単位の小さな群れで生活していて、ペアの関係は生涯の間続くと言われている。 昼間に活動するが、外敵や人との接触が多いようなところでは夜行性になる。 落下した果実のほか、木の実や根などの植物質のものを主に食べ、木登りはうまくないが、低木に登って果実を食べることもある。 鳥の卵やカニなどの甲殻類、昆虫類なども食べるが、採食するときは後ろ肢で立ち、前肢で挟むようにして食べる。 食料が豊富な所では大きな群れをつくることもあるが、アグーチはサルの群れの後をついて回り、サルが落とした落下果実を食べることが知られている。 また、食べ残した種子などを地中に埋めておく習性があることも観察されている。 これは食物が少ない時のためのと考えられているが、種子の散布によって森林の保全に役立ってもいる。 夜には樹洞や岩穴などで休むが、耕作地などに生息しているものは、(穴掘りもうまくないが)土を掘って巣穴をつくったりする。 行動範囲は食糧事情などによって変化するが、平均すると0.01~0.02平方km程と言われていて、その範囲には縄張りが主張される。 雄は縄張りに入ってきた他のアグーチを警戒し、威嚇の声を上げたり、時には激しく争うこともある。 しかし、普段の性質はおとなしく、むしろ臆病な動物で、小さな音などにも敏感で、驚いてすぐに逃げてしまう。 動きは敏捷で、走るのも驚くほど速く、泳ぐのもうまいと言われている。 また、跳躍力にも優れ、ひと跳び6mほども跳ぶことがあり、ジャガーやオセロット、ヤブイヌなどの外敵に出会ったりすると走ったり跳んだりして逃げる。 また、アグーチは肉を目的として捕獲されるほか、耕作地付近に生息しているものは、サトウキビやバナナなどの農作物に被害を与えたりするので、害獣として捕獲されたりする。 アグーチの繁殖・寿命 アグーチは一夫一婦で1年を通して繁殖するが、子どもは3~7月にかけて多く生まれている。 この時期は果実が多い時期にあたっているが、アグーチは年に2回繁殖することもある。 雌は樹洞を利用したり土を掘ったりして出産用の巣をつくり、中には草や細根、獣毛などが敷かれている。 雌の妊娠期間は100~120日程で、1産1~4仔を出産するが、ふつうは2仔を出産する。 生まれたばかりの子どもは毛が生えそろっていて、目も既に開いている。 生後しばらくすると走ることができると言われているが、子どもは4~5ヵ月程の間は授乳期間がある。 また、子どもが大きくなると、雌はより大きな巣穴に子どもを移すが、雌は子どもとは別の巣穴をもっていると言われている。 雌は1年半ほどで性成熟し、雌雄ともに野生での寿命は6~10年程度と言われているが、動物園などの飼育下での寿命は13~20年程度と、齧歯類の中では長い寿命をもっている。 アグーチの保護状況・その他 アグーチの仲間は中央アメリカから南アメリカにかけて広く分布しているが、一部の地域では、狩猟と生息地の開発などにより個体数が大幅に減少している。 国際自然保護連合(IUCN)では、種によっては絶滅危惧種や準絶滅危惧種などに指定していて、メキシコに分布しているものはもっとも絶滅の恐れが強いとされている。 尚、アグーチには次の種が認識されている。 Dasyprocta azarae (Azara's agouti・アザラアグーチ) D. coibae (Coiban agouti・コイバンアグーチ、準絶滅危惧種) D. cristata (Crested agouti・タテガミアグーチ) D. fuliginosa (Black agouti・ハイイロアグーチ) D. guamara (Orinoco agouti・オリノコアグーチ、準絶滅危惧種) D. kalinowskii (Kalinowski's agouti・ペルーアグーチ) D. leporina (Red-rumped agouti・ウサギアグーチ) D. mexicana (Mexican agouti・メキシコアグーチ、絶滅危惧種CR) D. prymnolopha (Black-rumped agouti・シリグロアグーチ) D. punctata (Central American agouti・マダラアグーチ) D. ruatanica (Ruatan Island agouti・ルアタンアグーチ、絶滅危惧種EN) D. variegata (Brown agouti・チャイロアグーチ/以前はD. punctataと同亜種とされていた) また、アグーチの仲間はバカ科に分類されていたが、現在は独立したアグーチ科へに属している。 しかし、アグーチ科をパカ科に、或いはパカ科をアグーチ科に含める説などもあり、これについては今後の研究が待たれる。 |
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