バンドウイルカはもっともよく知られているイルカの仲間で、北極や南極などの海域を除いて、世界の温帯から亜熱帯、熱帯海域に広く分布している。 日本近海でも見られるが、分布域が広いこともあり、幾つかの種や亜種に別けられていて、ふつうは本種・コモンバンドウイルカ(T.truncatus / Common bottlenose dolphin / 以下バンドウイルカ)を指してバンドウイルカと呼ぶことが多い。 体色などは地域によって差があるが、いずれも体は長い紡錘形で、水中生活に適したようになっている。 口は突き出ていて、頭部上方には噴気孔がある。 また、背びれは鎌形で背の中央辺りにあり、尾びれの後縁は湾入している。 体色は灰色や青灰色、暗灰色などで、背は少し暗く、体側は淡くて腹側は白い。 体の大きさにも差が見られるが、一般に、暖海に生息しているものは冷たい海域に生息しているものよりも体が小さく、体の脂肪も少ない。 また、バンドウイルカは外洋性のものと沿岸性のものが知られているが、外洋性のものは沿岸性のものに比べて体が大きく、体色も暗い色をしている。 沿岸性のものが平均体重190~260kg、体長2.5~2.7mほどであるのに対して、外洋性のものは3.7m程で、体重も450kg、最大で650kg程にも成長する。 全体としては大西洋のものは、太平洋に生息するものに比べて体は小さいが、いずれも体は雄の方が少し大きく、体重は雌よりもかなり重い。 バンドウイルカは群れで生活しているが、群れの構成は、多くの場合年齢や雌雄の性別に基づいている。 基本的な群れは2~12頭程のポッドと呼ばれもので、ポッドはふつう雌とその子どもたちから構成されている。 時にはポッドが集まって100頭を超える大きな群れをつくることもあるが、雄は普段は単独か2~3頭が集まって幾つかのグループをつくっている。 外洋から沿岸などに生息しているが、内湾や大きな河川の汽水域などでも見られる。 普段は水深1m程のところを遊泳していて、3~45m程のところを定期的に潜ったりしている。 泳ぐときは尾びれを上下に動かして泳ぐが、遊泳力は優れている。 ふつうは3~11km/h程の速さで泳いでいるが、獲物を捕らえるときなど、速く泳ぐ時には30~40km/h程に達し、短い距離なら更に速く泳ぐことができるとも言われている。 潜水能力も優れていて、実験下では水深540m程の深さまで潜ったことが知られている。 また、運動能力も高く、前肢にあたる胸びれを使って巧みに泳ぎまわるほか、海面から5m近くの高さまでジャンプすることもできる。 呼吸は毎分2~3回程度行われるが、外洋性のものは1~2分に1回程度とも言われている。 また、深く潜るときには5~8分程は呼吸をしないが、バンドウイルカは20分近く潜水していることができるとも言われている。 睡眠は1日に8時間程度と考えられているが、溺れることのないよう、脳の半分は眠っていても片方の半分は目覚めていて、水面に上がって呼吸をすると考えられている。 一度の睡眠時間は数分から数時間に別けて行われ、眠っている間は時折片目を閉じ、海面近くを漂ったりゆっくりと泳いでいる。 平均した行動範囲は125k㎡程とも言われているが、行動範囲は群れの大きさや食糧事情、生息環境などによって大きな幅がある。 魚類の他、イカや甲殻類などを食べるが、獲物の大きさは5~30cm程で、1日に4.5~16kg程の量を食べる。 歯は鋭くて獲物を捕らえるのに適しているが、歯は噛むことには使われず、獲物は丸呑みされる。 魚群などの獲物を捕らえるときは群れで行動するが、単独で底性動物などを捕らえることもある。 また、漁船が魚の群れを追っているときなどは、これについて獲物を捕らえたり、海面上で尾を振って、それを獲物に打ち付けて捕らえるようなこともする。 獲物を探し出すときは音波を出すことが知られているが、これはエコロケーション(反響定位)と呼ばれているもので、音は噴気孔と肺を結ぶ口喉と鼻内の気嚢を振動させることで発せられる。 この音は前頭部にあるメロンと呼ばれる器官で増幅され、反射してきた音は下顎内の脂肪層でとらえられ、骨を通して内耳と脳に伝えられ、その反射音によって獲物の位置や距離などを測ることができる。 また、嗅覚は劣っているが、視力は大変優れていて、獲物を捕らえるのに役立っている。 バンドウイルカは「輝膜(こうまく / タペタムとも)」と呼ばれる反射層を目にもっているが、これは夜行性のスローロリスなどがもっているもので、これによって水深が深い光の少ないところでも正確に獲物を捕らえることができる。 更に、オーストラリアに生息する一部のものは、海綿を口に咥えて砂底を探り、獲物を探し出すようなことが知られているが、これはイルカが道具を用いる例証としてとらえられている。 仲間同士のコミュニケーションは音声や体の接触などによって行われている。 音でのコミュニケーションはエコロケーションと呼ばれるものの他、可聴音でも行われる。 声帯はもっていないが、噴気孔近くにある6個の気嚢を使って、様々な音声を出すことができる。 この音声は人のように個々に違っていて、それぞれの識別や仲間同士のコミュニケーションをとる役割をしている。 また、社会生活をしているバンドウイルカは仲間意識も強く、傷ついたものや弱ったものなどは周りのものが助けようとするが、溺れているような人を海面へ上げようとした事があることも知られている。 好奇心も強く、船舶が航行するのについて泳いだり、ダイバーの周りに集まってきたりもする。 このほか、口に咥えた海草などを互いに投げ合って遊ぶようなこともするが、これは獲物を獲る練習にもなっている。 知能も高く、水族館などでは様々な芸を覚えて披露するが、変わったところでは、機雷除去のために軍事用に訓練されるようなこともある。 一夫多妻で、決まった繁殖期は見られないが、繁殖は暖かい季節に行われることが多い。 平均した妊娠期間は12ヵ月程で、1産1子、稀に2子を出産する。 出産は浅瀬で行われ、生まれたばかりの子どもは体長0.8~1.4m、体重は14~20kg(9~30kg程の幅がある)程で、インド洋に生息しているものの子どもは少し小さいと言われている。 出産や子育ては群れの仲間も協力して行われる。 子どもは生後数日の内にうまく泳ぐことを覚えるが、18~20ヵ月程の授乳期間がある。 4~5年ほどの間は親と一緒に生活し、雌は体長2.3m程に成長する5~10年、雄は2.4~2.6m程に成長する8~13年程で性成熟すると考えられている。 飼育下での寿命は35~45年、中には50年を超えたものも知られているが、野生下ではこれよりも短く、20~30年程度と言われている。 また、雌は雄よりもふつうは長く生きるほか、野生下でもバンドウイルカとオキゴンドウやハナゴンドウなどとの間には交雑種ができることが知られている。 外敵はメジロザメやイタチザメなどの大型のサメだが、多くは幼獣が襲われる。 バンドウイルカは体も大きく、成獣が襲われることはほとんどなく、むしろサメなどを撃退してしまう。 アメリカ合衆国やオーストラリアなどでは保護動物に指定されているが、一部の地域では食料として捕獲されている。 また、漁業に害を与えたりすることから、害獣として駆除されたりする他、漁具などに絡まったりして死亡することもあるが、バンドウイルカは分布域が広く、生息数も多いことから、現在のところ絶滅の危惧はないとされている。 尚、バンドウイルカの従来の和名は「ハンドウイルカ(半道海豚)」で、濁音になっていないが、現在は一般に「バンドウイルカ」が広く使われている。 また、クジラ類が陸上生活をしていた頃の名残として、極めて稀に腹びれをもっているものが知られている。 バンドウイルカの種類・亜種 鯨目の動物へ / このページの先頭へ |
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バンドウイルカ(コモンバンドウイルカ)