動物図鑑・スンダスローロリス

スンダスローロリス (グレータースローロリス)

スンダスローロリスさんのプロフィール


動物図鑑・スンダスローロリス
動物図鑑・スンダスローロリス 1動物図鑑・スンダスローロリス 2動物図鑑・スンダスローロリス 3動物図鑑・スンダスローロリス 4
和 名 スンダスローロリス
分 類 霊長目・ロリス科
学 名 Nycticebus coucang
英 名 Sunda slow loris / Greater Slow Loris
分布域 タイからマレー半島、インドネシアなど
生息環境 森林地帯など
体 長 27~38cm 前後
尾 長 ほとんどない
体 重 600~700g 程度
IUCNによる保存状況評価 / 絶滅危惧種 (EN)
スンダスローロリスは完全な夜行性の動物で、ほぼ樹上生活をしている。
動作はかなりゆっくりとしていて、移動する時にも音を立てない独特の動きをしている。
●分布域・生息環境
●大きさ・特徴
●生態・生活
●繁殖・寿命
●保護状況・その他

●写真ページ


スンダスローロリスの分布域・生息環境
スローロリスは原猿の仲間で、インドのアッサム地方からインドシナ半島、マレー半島、インドネシア、フィリピンなどに広く分布していて、毛色や模様などの違い、体の大きさなどによって幾つかの種に別けられている。

本種・スンダスローロリスは、タイ南部からマレー半島、インドネシアのスマトラ島やリアウ諸島のバタム島やガラン島などに分布していて、英名ではグレータースローロリス(Greater slow loris)とも呼ばれているが、国内では単にスローロリスと呼ばれることも多い。

主に低地の熱帯雨林などに生息しているが、標高1300m辺りの森林地帯にも生息していて、二次林や低木林、湿地林などでも見られる。


スンダスローロリスの大きさ・特徴

スンダスローロリスは、雌雄ともに体の大きさにはほとんど変わりがなく、体重600~700g程で、27~38cm程の体長がある。

体は丸みを帯びていて、フワフワとした羊毛状の短い毛が、びっしりと体を包んでいる。

毛色は、背面は灰褐色から赤褐色で、腹部は白色か灰色、ピンクを帯びた灰色や灰褐色などのような色をしている。
また、首から背中の中央は黒色や暗褐色で、目の周りは黒っぽく、それを囲むように白い毛が生えている。

頭は丸く、大きくて丸い目が特徴的で、額から目の間を通る鼻筋も白く、耳は小さくて、頭にぴったりとくっついている。

尾はきわめて短く、毛に隠れているので、一見して尾がないようにも見える。

スンダスローロリスは四肢には5本の指をもっているが、前足の第2指は短くなっている。
後足の第2指だけははっきりとした鉤爪になっているが、ほかの爪は人と同じように平爪になっている。

また、スローロリスの仲間は、肘の内側に強い臭いのする有毒な油を分泌する腺をもっているが、スンダスローロリスも同様の腺をもっている。

その有毒な油の成分は種によって異なるが、毛繕いの際には、舌などを使って体のさまざまな部分に繰り返し擦り付る。
この行為は行動範囲に臭いをつけたりするほか、外敵から身を守る役目も果たしている。

外敵に襲われた時などは、分泌された毒素を口に含んで唾液と混ぜ、相手に噛み付くこともある。


スンダスローロリスの生態・生活

スローロリスの仲間は主に森林地帯に生息しているが、完全な夜行性で、昼間は木の股や樹洞などで、頭を前足の中に入れて丸くなって眠っている。

スンダスローロリスも夜行性で、夕暮れ時になると活発に活動をはじめる。

しかし、同じ夜行性の動物であるヨザルガラゴのように素早く動くことはなく、動作はかなりゆっくりとしている。

樹間を跳躍して移動するようなことはなく、木の枝をしっかりと握りながらゆっくりと移動する。

その緩慢な動きはナマケモノほどではないが、枝などでは這うように移動する。
移動する時の音も立てず、植物に動きを与えるようなこともない。

この静かでゆっくりとした行動は、動物園などで見ていても同じで、動く速さの変化もほとんどなく、スンダスローロリスは独独の活動の仕方をしている。

そのように動くのは、外敵から見つからないように身を守っていると考えられているが、スンダスローロリスは握力も強く、四肢の内の一本か二本を使って、長いあいだ逆さまになって木の枝につかまっていることもできる。

地上に降りてくることは滅多になく、ほぼ樹上で生活しているが、スンダスローロリスは単独での生活を好む習性があると言われている。

しかし、単独で生活しているもののほか、雌雄とその子どもからなる家族で見られることもある。

時には、1頭の雌と複数の雄が一緒に見られることもあるが、これは繁殖のためとも言われている。

また、飼育下では同性のグループをつくることも観察されていて、雄よりも雌の方がグループを作りやすいとも言われている。

スンダスローロリスは、果実や木の葉、樹液などを食べるが、食事の6割以上を樹液と花の蜜が占め、果実が2割ほどを占めると言われている。

また、雑食性で、時には昆虫類やカタツムリ、クモやトカゲなどのほか、鳥の卵なども食べる。

犬歯は鋭く、硬い樹皮を噛み砕き、樹液や樹脂を舐めとるようにするが、飼育下では、水を満たしたココナッツの殻を両手で持ち、口に運んで水を飲む様子が観察されている。

また、昆虫類や爬虫類などの獲物を捕らえるときは、両足で木や枝をつかんでおいて、素早く両手で捕まえ、飛んでいる昆虫を捕まえることもある。

大きな目には「輝膜(こうまく・タペタムとも)」と呼ばれる反射層があり、これによって光を増幅し、夜間でも正確にものを捉えることができるようになっている。

スンダスローロリスの行動範囲は0.02~0.15平方km程度と言われていて、原生林では狭くなるとも言われているが、一晩に8km程も移動することがある。

また、行動範囲の樹木には尿などで臭いをつけ、縄張りを主張していると言われている一方、縄張り意識は強くなく、争うようなことはほとんど見られない。

夜間は樹木の上で休むが、高さ35mほどのところで休むこともあり、同じ場所をふた晩以上使うことは滅多にないと言われている。

スンダスローロリスの外敵は大型のアミメニシキヘビや猛禽類、ウンピョウなどだが、希にボルネオオランウータンに襲われることも報告されている。

危険を感じると、頭を隠してじっと動かずにいるが、相手が近づいてくると、上述したように、肘の内側にある分泌腺から毒素を含んだ油を唾液と混ぜ、相手に噛みつこうとする。

それが上手くいかなかったときは、体を丸めて木の上から落ちて逃れることもある。

また、親が採餌するために子どもと離れる場合、この毒のある油を子どもに塗り付け、外敵から守るようにすることも観察されている。

性質はおとなしく静かでだが、嫌なことをされたりするとグーグーとうなったり、キィキィと高い声で鳴く。

また、頭を素早くまわして噛み付こうとすることもある。
唾液と混ざった毒素は、ネズミなどの小動物にとっては致命的で、大型動物や人でも、傷口が化膿したり、強いアレルギー反応を引き起したりする。


スンダスローロリスの繁殖・寿命

スンダスローロリスには決まった繁殖期はなく、一年を通して繁殖が見られる。

しかし、繁殖は一夫一婦で行われると言われているが、一夫多妻であるとも考えられていて、これについてははっきりとしない。

雌は妊娠期間190日前後で、ふつうは1産1子、希に2子を出産する。
生まれたばかりの子どもは体重50g程で、目は既に開いていて毛も生えている。

育児は雌によって行われ、しばらくの間は母親の腹にしがみついて移動する。
子どもには5~7ヵ月ほどの授乳期間があり、子どもは親と同じぐらいになるまでは母親についてまわる。

雌雄ともに1年半から2年程で性成熟し、この頃には独立する。

スンダスローロリスの飼育下での寿命は20~25年程度と言われているが、一般に飼育下では食糧事情やストレスなどがあることから、平均した寿命は12~14年程度とも言われている。

また、野生での寿命は10年ほどと言われているが、20年近い寿命があるとも言われている。


スンダスローロリスの保護状況・その他

スンダスローロリスは、近年の森林伐採などによる生息地の減少などから、個体数が減少している。

近年までは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種II類(VU)としてレッドリストに指定されていたが、現在は、より絶滅が心配される絶滅危惧IB類(EN)に指定される状況になってしまっている。

スンダスローロリスはワシントン条約によっても保護されており、各国政府の許可がない限り国際的な取引は禁止されているが、違法なペット取引や密猟なども後を絶たず、更なる個体数の減少が心配されている。

また、一部のスンダスローロリスが生息する地域では、別種のベンガルスローロリスが人為的に放たれていることがあり、それによる交雑なども心配されている。

この他、スローロリスは動きがゆっくりとしていることから、別名を「ノロマザル」などと呼ばれたりするほか、「ロリス」とはオランダ語で「道化」という意味で、「ドウケザル」などと呼ばれたりすることもある。

●スンダスローロリスの写真ページへ
●ロリス科の動物へ
●このページの先頭へ
魚類図鑑
昆虫図鑑
鉱物図鑑
星座図鑑
百人一首の風景
百人一首の風景








Private Zoo Gardenは、国内の動物園で会える動物たちを紹介している、インターネット動物園です。
今後とも園内の充実を図っていく予定ですので、動物図鑑や写真集などとして、是非利用してください。
このページの先頭へ