ユーラシアカワウソは、カワウソの中ではもっとも分布域が広く、単に「カワウソ」、或いは「ヨーロッパカワウソ」と呼ばれることある。 他のカワウソと同様、半水生の生活をしていて、普段は単独で生活している。
ユーラシアカワウソの分布域・生息環境 ユーラシアカワウソは、ツンドラ地帯を省くユーラシアの大部分やインドネシアのスマトラ島などのほか、アルジェリアやチュニジア、モロッコなどの北アフリカの一部にも分布している。 カワウソの仲間の中ではもっとも分布域が広く、河川や湖、湿原などの水辺に生息している。 ユーラシアカワウソの大きさ・特徴 ユーラシアカワウソは、体長60~70cm程度、体重は7~10kg程で、尾は長く、体長の半分ほどの長さがある。 また、大きな雄では体長90cm、体重も12kg程に成長するが、中には体重が15kgを超えるものも見られる。 ユーラシアカワウソは半水生の生活をしていることから、体は水の中での生活に適したつくりになっていて、全体に細長く、やや扁平した体つきをしている。 四肢には水かきがあり、耳と鼻も閉じることができる。 尾は他のイタチ科やイヌ科、ネコ科などのものとは違い、筋肉質で太くなっている。 この尾も先が細くなっているので、水中を泳ぐのに適したものになっていて、尾の付け根には一対の臭腺がある。 体には防水性のある毛が密生していて、水の中では空気を閉じ込めて体温の低下をよく防いでいる。 毛色は、背面が灰褐色や黒褐色などで、口から喉を通って胸や腹側にかけては淡い黄色や白っぽ色をしている。 ユーラシアカワウソの生態・生活 ユーラシアカワウソは河川や湖、湿原など、水と密着した生活をしていて、海岸域にも生息している。 食べ物が豊富なことはもちろんだが、周囲には植物が豊富で、水のきれいなところで見られる。 また、海岸域で生活しているものは、淡水で体を洗う必要があることから、付近に川や湖沼などの淡水があるところで見られる。 普段は単独で生活しているが、時には数頭の緩やかな群れで見られることもある。 主として夜行性と言われているが、ユーラシアカワウソは昼夜共に活動する。 しかし、日中は巣穴や乾燥た場所などで休んでいることが多く、早朝や夕暮れ時、夜間に活動することが多い。 主に魚類を中心に甲殻類、貝類などを食べるが、ミミズや両生類、昆虫などのほか、水鳥やその卵なども食べる。 また、アナウサギなどの小型の哺乳類のほか、ヨーロッパビーバーの幼獣をとらえることもあるほか、植物質のものも少しは食べる。 1日におよそ1kg程の量を食べると言われているが、水中での動きは敏捷で、巧みに泳いで魚をとらえる。 長ければ30秒程の間水に潜っているが、ユーラシアカワウソは2分近くも潜ることができるとも言われている。 水中では視覚や触毛である長いヒゲを使って獲物の動きをとらえるが、ユーラシアカワウソは視覚や触角のほか、水の中で匂いをかぐこともできるのではないかと考えられている。 行動範囲は生息環境や食糧事情などによって変化し、河川に生息しているものは平均18km程度と言われているが、川幅などによって1~40km程と大きな差がある。 また、海岸で生活しているものの行動範囲は河川のものよりも狭く、3~5km程度と言われている。 行動範囲には縄張りが主張され、尾の付け根にある臭腺からジャ香のような匂いを出し、これを樹木や草木などにこすりつけたり、糞などによって縄張りを示す。 また、縄張りは同性のものに対して主張されるようで、雌雄の行動範囲はしばしば重複していることもある。 外敵は大型の猛禽類で、水の中ではワニに襲われることもある。 この他、カワウソの仲間は遊び好きで、動物園などでもしばしば遊んでいる様子が観察される。 野生下でも、腹ばいになって土手などを滑り降りたり、水中で遊泳したりするほか、駆けたり、互いに追いかけ合いをしていて、その様子は幼獣でも成獣でも観察されている。 この遊び好きの行動は、幼獣や若い個体には狩りするときの役に立っていると考えられている。 ユーラシアカワウソの繁殖・寿命 ユーラシアカワウソには決まった繁殖期が見られず、1年を通して繁殖するが、出産の多くは春と秋に見られる。 交尾は水中で行われるが、陸上で行われることもある。 巣は、ふつうは川岸の穴や樹洞、岩の割れ目などを利用する。 雌の妊娠期間は60~70日ほどで、雌は1産1~5子、ふつうは2~3子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は100~120g程で、目は閉じている。 生後ひと月ほどで目が開き、その後ふた月ほどで巣を離れるようになる。 この頃には水の中に入るようになっていて離乳するが、それまでの育児は雌によって行われる。 雄は育児に関わることはないが、雌とその子どもの縄張りは、ふつうは雄の縄張りの中にある。 雌雄ともに1年半から2年、遅くとも3年までには性成熟し、野生下での寿命は10~15年程度、飼育下での平均した寿命は20年程度と言われている。 ユーラシアカワウソの保護状況・その他 ユーラシアカワウソは、かつては毛皮を目的とした狩猟や、漁業に害を与える害獣として駆除されたりしていたが、近年では開発などによる生息地の減少や河川の汚染なども加わり、個体数は減少している。 別名・ヨーロッパカワウソとも呼ばれているが、ヨーロッパのいくつかの地域では既に見られなくなっているほか、インドやパキスタン、タイやミャンマー、モンゴルなどでは絶滅危惧種に指定されていて、韓国でも天然記念物・絶滅危惧種に指定されている。 保護活動などによって、個体数が回復傾向にある地域もあるが、ユーラシアカワウソは、現在、国際自然保護連合で準絶滅危惧種(NT)に指定されている。 尚、ユーラシアカワウソは分布域が広いこともあり、次のような亜種が認識されている。 Lutra lutra lutra L. l. angustifrons L. l. aurobrunneus L. l. barang L. l. chiensis L. l. hainana L. l. kutab L. l. meridionalis L. l. monticolus L. l. nair L. l. seistanica また、国内では既に絶滅している二ホンカワウソは、別種・Lutra nippon とされることもあるが、亜種・L. l. nippon とされることもある。 |
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ユーラシアカワウソ (カワウソ)