コツメカワウソはカワウソ類の中ではもっとも体が小さいが、手足の爪が小さいことからコツメカワウソと呼ばれている。 インド南部・東部からネパール、ブータン、バングラデシュ北部、ミャンマー北部からインドシナ半島、中国南部やフィリピン、マレー半島、インドネシアのスマトラ島・ボルネオ島などに広く分布してい.る。 河川や湖の周辺、沼地や湿地帯などのほか、水田の周辺や沿岸部などにも生息していて、低地から標高2000m辺りの高地にまで見られるが、いずれの地域でも、水と密着した、半ば水生生活をしている。 体つきは全体に細長く、水中での抵抗が少ないようになっている。 毛色は暗い灰褐色で、口の下や頬、首などは白っぽい。 頭部は平たく、胴は長くて四肢は短い。 また、耳は丸くて小さいが、水中では耳孔や鼻孔を閉じることができる。 名前のように、前足の爪は小さく、爪は足の先からはみ出ることはない。 前足にある水掻きも小さく、指はずんぐりとした感じがする。 しかし、尾は長くて太く、体長の三分の一程の長さがある。 この長い尾は水の中を泳ぐ時にバランスをとったり、推進力をつけたりするのに役立っていて、コツメカワウソは水中でもかなり敏捷に動き回ることができる。 潜水能力にも優れていて、水の中に6~8分ほども潜っていることができると言われている。 主に魚やカニ・ザリガニなどの甲殻類、カエルなどの両生類などを食べるが、歯が丈夫で、貝なども噛み砕いて食べてしまう。 しかし、川の水が干上がったときなどは、森林の中でヘビや他の小動物を捕らえることもあり、季節によって様々なものを食べる。 また、カワウソの仲間には、水中で前足を使って獲物を獲るものと、口を突き出して直接獲物にかぶりつくものとがあるが、コツメカワウソは前者で、前足を自由に使って、獲物を器用につかまえる。 昼間は寝ていることも多いが、コツメカワウソは主として昼光性の動物で、動物園などでも活発に動き回ったりする姿がよく見られる。 巣は川岸にある木の根の間などを利用しているが、水から上がったあとの毛づくろいにはかなりの時間を費やしているので、巣の中はあまり濡れていない。 主な習性はユーラシアカワウソ(ヨーロッパカワウソ)に似ているが、普通は10~15頭ほどの大きな家族群で生活している。 一夫一婦で、コツメカワウソはつがいの結びつきが強いと言われている。 決まった繁殖期はなく、妊娠期間60~80日ほどで、雌は1産1~6子、普通は2子を出産する。 生まれたばかりの子どもは体重50g程度で、目は閉じている。 目は生後40日程で開くが、3ヵ月程は授乳期間がある。 離乳する頃には泳ぎはじめるが、子どもは、母親に次の子どもができるまでは一緒に過ごしている。 また、子どもの世話は雌が行うが、雄も出産前の巣を作ったり、食べ物を運んだりして育児を手伝う。 飼育下での寿命は11~16年程度と言われているが、野生下での寿命ははっきりと分かってはいない。 しかし、外敵はマレーガビアルなどのワニやアミメニシキヘビ、インドニシキヘビなどの大型のヘビなどと考えられているが、水中では敏捷に泳ぐことができるので、野生下でも生存率は高いとも言われている。 また、コツメカワウソは遊び好きで、獲物を獲る以外でも、よく水の中に入って泳いだり、川岸の斜面を登ったり、滑り降りたりして過ごしている。 人にもよく慣れるので、マレーシアなどでは伝統漁法として漁に使ったりすることもあった。 しかし、コツメカワウソは獲物を捕らえるために水田に入り込んだりするので、地域によっては害獣として扱われ捕獲されるほか、近年の森林や河川の開発などによってその生息地は減少している。 その結果、分布域が広いにも関わらず生息数は減少していて、現在では、国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(VU)としてレッドリストに指定される状況になっている。 この他、コツメカワウソには幾つかの亜種があるとされているが、 ・Aonyx cinerea cinerea (中国南部などに分布する基亜種) ・A. c. concolor (インド北東部からミャンマーを経て、スマトラ辺りに分布) ・A. c. nirnai (インド南部の丘陵地帯に分布) の3亜種が確認されている。 イタチ科の動物へ / このページの先頭へ |
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コツメカワウソ