テンの仲間は、北半球の針葉樹林や落葉広葉樹林などに広く分布しているが、国内で「テン」と言えば、本種・ホンドテン(M. m. melampus)を指していることが多い。 ホンドテンは日本の固有種で、時にニホンテンと呼ばれることもあり、本州・四国・九州に分布していて、対馬には亜種・ツシマテン(M. m. tsuensis)が分布している。 体は細長いが、四肢は短い。 頭部は平たく、鼻面はとがっていて、耳は幅広くて短い。 また、体は雄の方が大きく、平均すると、雌の体重は1kg程度だが、雄では1.5kg程の体重がある。 毛はふさふさとしているが、毛色は地域や季節によって変化がある。 特に、夏は全身褐色や赤褐色のような色をしているが、顔は黒っぽい色をしていて、喉から胸にかけてはオレンジ色をしている。 また、四肢も黒っぽいが、尾の先は白い。 これに対して、冬毛では四肢の黒っぽいところを省き、全体に黄色っぽい色になり、顔や頭部は白い色をしている。 このものを「キテン」と呼んでいるが、冬でも毛色が夏毛と同じかそれほど変わらず、頭部が灰白色をしているものを「スステン」と呼んでいる。 テンは一見してイタチに似ているが、テンはイタチよりも一回りほど体が大きい。 しかし、体つきには個体差もあり、毛色にも変化があるので、よく見ないと見分けるのは難しい。 ふつう、イタチは鼻と顔周りが黒っぽく、口元は白い色をしているが、テンは顔全体が黒っぽい色をしている(夏毛)。 ホンドテンは低地から山地にかけての森林や雑木林、二次林などに生息していて、標高1800m辺りでも見られる。 普段は単独で生活していて、山地では谷に沿って多く見られるが、樹木があれば農地周辺や人里近くに現れることもある。 雑食性で、季節に応じてさまざまなものを食べるが、春から秋までは主に果実など、夏から秋にかけては昆虫類などを食べる。 また、一年を通してネズミやウサギなどの小型の哺乳類や鳥などを捕らえるが、カエルやトカゲ、サワガニなどの甲殻類、魚やミミズなど、テンは実にさまざまなものを食べる。 動きも敏捷で、イタチよりも木登りもうまく、泳ぎも巧みにこなす。 また、テンは夜行性の動物で、昼間は岩穴や木の洞などで休んでいると言われているが、時に日中も活発に活動する。 雌雄共に縄張りをもった生活をしていて、臭いを付けるなどして縄張りを主張する。 雄の行動範囲は平均して0.70平方キロメートル程度、雌はこれよりも少し狭いと言われているが、縄張りの広さは食べ物の多さや環境などによって変化する。 詳しい繁殖の様子などは分かっていないが、繁殖期は7~8月の夏季で、雌は着床遅延を含めて8~9ヶ月の妊娠期間の後、翌年の3~5月頃に1産2~4子を出産する。 稀に5子を出産することもあるが、生まれたばかりの子どもは目が見えず、耳も聞こえていない。 子どもは雌によって育てられるが、生後3~4ヶ月程で離乳し、雌雄共に1~2年程で性成熟する。 外敵はキツネなどで、飼育下では12年程度の寿命をもっているが、野生下での寿命は詳しく分かっていない。 ところで、現在では需要が少なくなっているが、テン(特にキテン)の毛皮は良質で高級品として重宝されていて、一時は毛皮を目的とした狩猟のため、生息数が減少した経緯がある。 現在のところは絶滅の恐れはないとされているが、開発などによる生息地の減少に伴う個体数の減少が心配されている。 特に、ツシマテンは生息数が少なく、1971年に国の天然記念物に指定されているが、イヌによる殺害などの他、近年では交通事故による死亡も多くなっていて、ツシマテンは環境省のレッドリストに準絶滅危惧(NT)として指定される状況にもなっている。 一方、毛皮の需要が盛んだった頃、毛皮製品を増やすために、本州から北海道南部にホンドテンが導入され、移入定着している。 北海道には同属異種のエゾクロテン(Martes zibellina brachyura / 環境省レッドリスト・準絶滅危惧種)が生息しているので、交雑や競合が心配されているほか、佐渡島へも、林業の害獣であったノウサギ駆除のためにホンドテンが導入され、定着している。 しかし、佐渡でも、捕食により減少しつつあるノウサギなど、在来種への影響が心配されている。 このほか、朝鮮半島南部にも亜種・コウライテン(M. m. coreensis)がいるとされているが、コウライテンは捕獲例が少なく、従来からの野生のものか移入されたものなのか、はっきりとしていない。 イタチ科の動物へ / このページの先頭へ |
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テン (ホンドテン)