ナマケグマはインドではよく見られる大型の動物で、インド東部からスリランカ、ネパール、バングラデシュなどの森林地帯に生息していて、ヒマラヤの山裾にも現れる。 体は雄の方が大きいが、スリランカに分布している亜種では雌雄共に少し小さい。 毛色はふつう黒色だが、赤褐色のものなども見られ、体毛は長く、肩の部分が特に長い。 また、足の裏には毛がないが、耳にも長い毛が生えている。 胸にはツキノワグマに見られるような大きなV字型の白色や黄色などの斑紋があり、鼻づらは灰色で長い。 鼻孔は閉じることができ、前肢には長さ6~8㎝程の強力な爪がある。 また、前肢は内側へ向かい、歩く時は少し内股であるほか、後肢は前肢よりも短く、爪も長くはない。 動作はさほど活発ではないが、丈夫で長い爪を利用して木には巧みに登ることが出来る。 また、この長い爪を利用して木にぶら下がることもでき、その姿が南アメリカに分布しているナマケモノを思わせることが名前の由来になっている。 しかし、ナマケグマは木登りはうまいが、他のクマ類のように水に入ることはほとんどしない。 また、嗅覚は鋭いが、視覚や聴覚はそれほどでもない。 湿度のある森林地帯から乾燥したサバンナや草地などに生息しているが、低地から高地まで見られ、標高2000m程のところにも姿を見せる。 繁殖期や母親と子ども以外は単独でいることが多いが、まれに数頭程度が集まって小さな群れをつくることもある。 ナマケグマは昼夜共に活動するが、主として夜行性で、昼間は樹洞や岩穴などで休んでいることが多い。 昆虫や鳥の卵などを食べるが、特にハチミツやシロアリを好み、丈夫な爪で巣を壊した後、長い舌と一緒に口を円筒状のようにしてゴミを吹き払い、ズーズーと音を立てながら独特の食べ方ですすりこむように食べる。 ナマケグマの口は長く、くちびるもよく動かすことができるので、シロアリなどを吸い込むのに都合が良く、上あごの門歯の中央の2本がないこともこれに適している。 また、雑食性で果実や花などの植物質のものも食べるほか、小動物や動物の死骸など、季節や生息環境に応じて様々なものを食べる。 行動範囲は生息環境などによって異なり、ネパールでは10~14k㎡程度、インドのものでは100k㎡を超すとも言われていて、食糧事情などによっても大きく変化する。 外敵はあまりいないが、時折ベンガルトラなどに襲われることがある。 繁殖期は地域によって異なり、インド南部のものは周年繁殖する言われている。 インド北部辺りのものでは6~7月頃に繁殖が見られ、妊娠期間6~7ヵ月程で、1産1~3子、ふつうは1~2子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は400g程で、巣穴は自ら掘った穴や自然の洞穴などを利用する。 子どもは3週間ほどで目が見えるようになるが、2~3ヶ月程は巣穴の中で育てられる。 その後は巣穴から出てくるが、クマの中では珍しく、ナマケグマの母親は幼獣を背中に乗せて移動する。 子どもは1年半~2年半程は母親と一緒に生活し、その後独立していく。 飼育下での寿命は30~35年ほどで、冬眠はしない。 外敵が少ないにもかかわらず、近年は森林地帯の開発などによってナマケグマの生息地が減少しているほか、農地化されたことによって、作物に被害を与える害獣として駆除されたりもすることから、生息数はかなり減少している。 現在、ナマケグマは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、レッドリストに絶滅危惧種(VU)として指定されているが、肉や薬用を目的とした密猟などもあり、更なる保護が求められている。 クマ科の動物へ / このページの先頭へ |
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ナマケグマ