キジバトは日本を含むユーラシア東部に広く分布するハトの仲間で、国内では「ヤマバト」とも呼ばれている。 平地から低山地の森林に生息していて、国内では留鳥として一年を通して見られるが、北海道や本州の雪の多い地方では夏鳥で、冬には南の暖かい地方へ移動して冬を越す。
分布域・生息環境 キジバトは国内でよく見られるハトの仲間だが、インドからミャンマー、ベトナム北部を経て、中国南部や朝鮮半島、台湾などに広く分布している。 トルクメニスタンやカザフスタン、ロシア南部でも繁殖していて、主に平地から低山地にかけての森林に生息している。 また、寒い地方のものは、気温が下がる時期には南へ移動し、山地のものは平地に降りてくる。 大きさ・形態 体はカワラバトと同じほどで、全長30~35cm程度で、165~270g程の重さがある。 しかし、ややほっそりとしているのか、少し小さくも見え、嘴もカワラバトに比べると随分細くなっている。 雌雄同色の鳥で、頭部から胸、腹にかけてはやや紫色を帯びたような灰褐色で、首の両側には黒色と青灰色の縞模様がある。 翼には灰黒色に赤茶色の縁取りのあるうろこ模様があり、これが雌のキジのように見えることから「キジ」の名前が付けられている。 また、尾羽は黒っぽく、先端と両端は灰白色をしている。 目はオレンジ色で、嘴は灰黒色、足は赤っぽい色をしている。 生態・生活 キジバトは、平地から山地にかけての明るい森林や疎林などに生息しているが、比較的明るくて開けた環境を好み、里山や耕作地周辺の雑木林など、人の住む周りにも生息している。 国内では多くの地域で一年を通して見られるが、北海道や本州北部の雪の多い地方では夏鳥として見られ、冬には南の暖かい地方へ移動して冬を越す。 また、キジバトは「ヤマバト」とも呼ばれるように、元来は主に里山や丘陵地、低山地などに生息していたが、近年は都市部や市街地でも見られるようになっていて、公園などではカワラバトと同所的に見られるところも多い。 しかし、地方の耕作地などでは群れになって採餌していることもあるが、都市部や周辺では単独やペアで見られることが多く、カワラバトのように群れをつくることはない。 採餌はほとんど地上で行われ、主に果実や種子を食べるが、昆虫類やミミズ等も食べる。 夕方になるとねぐらのある森へ帰っていくが、寺社の樹林などでも休んでいる。 性質はおとなしいが、カワラバトのように人に馴れることはない。 近年は市街地の公園でもふつうに見られるになっていて、人を恐れることも少ないようだが、公園で餌をねだってくるようなこともない。 国内での外敵はカラスやカササギ、オナガなどで、主にヒナや卵が狙われ、ネコやアオダイショウなどのヘビ、イタチやテンなども外敵になっている。 鳴き声はのんびりとしていて、「デデッポーポー」のように聞こえる。 繁殖・寿命 キジバトは分布域が広く、繁殖期には幅があるが、主に春から夏にかけて見られる。 しかし、インド南部では冬に見られ、国内での繁殖期にも幅がある。 また、繁殖期は長く、地域によっては一年を通して繁殖が見られ、年に数回繁殖を行うこともある。 繁殖は一夫一婦と言われているが、毎年同じ相手を選ぶとは限られていない。 巣は樹上に小枝などを用いて皿状のものをつくるが、あまり高いところにはつくらず、平均すると2~4mの高さのところにつくることが多い。 時には10m程の高さのところに営巣することもあるが、地上から数十cmほどの高さの茂みの中につくられることもある。 また、時には古巣を再利用することもあるほか、都市部では街路樹や鉄塔、建物などに巣をつくることもある。 営巣場所は雌が決めると言われていて、巣材は雄が集め、巣作りは雌が行う。 雌はふつう2個の卵を産み、抱卵は雌雄によって行われる。 また、日中は雄が抱卵し、夜間は雌が抱卵すると言われている。 卵は14~16日ほどで孵化するが、孵化したばかりのヒナは灰黒色で、黄色い綿毛がまばらに生えている。 孵化後、4~5日ほどの間は親が巣に留まり世話をするが、この間、親は嗉嚢(そのう)から「ピジョンミルク」と呼ばれる栄養のある物質を分布してヒナに与える。 フラミンゴの仲間も「フラミンゴミルク」と呼ばれる栄養のある液体を分泌し、ヒナに口移しで与えるが、ハトの仲間もこのピジョンミルクを分泌してヒナに与えている。 ビジョンミルクは雌雄ともに分泌するが、これは採餌できる餌の量に関係なくヒナを育てられることに繋がっていて、キジバトの繁殖期は、季節を含め、入手できる餌の量に関連しているとも考えられている。 ヒナは徐々に親と同じようにものを食べるようになり、14~17日ほどで巣を離れるようになるが、その後も、しばらくは親からの給餌を受けて成長する。 キジバトの性成熟年齢は分からないが、飼育下での寿命は10~20年、野生下での寿命は、長いもので10年程度と言われている。 保護状況・その他 キジバトは分布域が広いこともあり、現在のところ絶滅の恐れはないとされている。 近年は都市部にも進出していて、環境への適応力も備えているようで、国内での生息域は広がっているようにも思える。 尚、キジバトは分布域が広いこともあり、次の亜種が認識されている。 Streptopelia orientalis. orientalis シベリア中央部から朝鮮半島、日本のほか、ヒマラヤ南部から中国南部、ベトナム北部などに分布する基亜種 S. o. agricola インド東部から北東部、ミャンマー南部から海南島などに分布 S. o. erythrocephala インド南部に分布する亜種で、頭部は赤褐色をしている S. o. meena 東アジアからヒマラヤ山脈南部、カシミールからネパールなど S. o. orii 台湾に分布 S. o. stimpsoni (リュウキュウキジバト) 屋久島や奄美諸島、琉球諸島などに分布 |
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