シジュウカラガン

シジュウカラガン さんのプロフィール


シジュウカラガン

シジュウカラガン

カモ目・カモ科
学 名 Branta hutchinsii
英 名 Cackling goose
分布域 北アメリカなど
生息環境 河川や湖沼、干潟など
全 長 63~65cm 程度
翼開長 110~130cm 程度
体 重 1.4~2.5kg 程度
環境省では絶滅危惧種(CR)

シジュウカラガンは、国内では冬鳥として見られる水鳥だが、飛来数は少なく、越冬地も限られている。
カナダガンとは大変よく似ていて、以前はカナダガンン(Branta canadensis)の亜種とされていたが、現在は別種として認識されている。
●分布域・生息環境
●大きさ・形態
●生態・生活
●繁殖・寿命
●保護状況・その他


シジュウカラガンの分布域・生息環境
シジュウカラガンは北アメリカに分布する水鳥で、夏はカナダ北部とアラスカのツンドラ地帯、アリューシャン列島などで繁殖し、冬には主にカナダ西部やアメリカ西海岸、メキシコ北部などに渡って越冬する。

国内では、かつては冬鳥として多くが飛来していたが、現在は少数が飛来する程度になっている。

また、シジュウカラガンはカムチャッカ半島や中国東部、更には西ヨーロッパでも稀な冬鳥や迷鳥として見られる。

湖沼や河川、植物が繁茂する湿地などに生息していて、冬には耕作地などでも見られる。


シジュウカラガンの大きさ・形態
シジュウカラガンは、以前はカナダガンの亜種とされていたこともあり、カナダガンとは大変よく似ている。

体の大きさは、平均するとほとんどのカナダガンよりも小さいが、亜種によってはカナダガンと同じほどの大きさがある。
羽毛の色もカナダガンとよく似ているが、シジュウカラガンの首や嘴はやや短く、額はより急勾配になっている。

シジュウカラガンは、雄の方が雌よりも体が大きいが、雌雄ともにほとんど同じ色をしている。

羽毛の色は亜種によってやや違いがあるが、暗褐色から淡褐色のような色で、頭部と首は黒く、嘴や足も黒い色をしている。
喉には白い斑が見られ、首の付け根にも白い輪になった帯がある。

この首の付け根の白い輪はカナダガンに見られないが、中にはこの輪が見られないシジュウカラガンもいるので、注意する必要がある。


シジュウカラガンの生態・生活
シジュウカラガンは、湖沼や河川、植物が繁茂する湿地などに生息していて、沿岸の干潟や汽水域などでも見られる。
冬には耕作地や牧草地などでも見られるが、水辺から遠く離れたところでは見られないと言われている。

繁殖期は以外は大きな群れをつくって生活し、カナダガンなどと混成の群れをつくることもある。

日中に活動し、特に早朝や夕方には活発に活動する。
主に草類や種子など、陸生・水生のさまざまな植物質のものを食べるが、昆虫類や軟体動物、甲殻類なども食べる。
また、渡りの時期や冬季には、耕作地に残っている穀類なども食べる。

地上で採餌することが多いが、水の中では頭を水の中に突っ込んだり、時にはカモ類のように逆立ちするようにして採餌したりする。

外敵はキツネコヨーテ、大型のヘビなどで、主に卵やヒナが襲われる。


シジュウカラガンの繁殖・寿命
繁殖期は春に見られ、単独のペアやコロニーをつくって行われるが、他のガンとの混成のコロニーをつくることもある。
繁殖は一夫一婦で行われ、その関係は生涯に渡って続くと言われている。

巣は雌雄によって水辺近くの高台や河川や湖沼の中州などにつくられるが、アリューシャン列島で繁殖するものは急斜面や崖の隙間などに営巣する。

巣には草や羽毛などが敷かれていて、雌はふつう3~6個ほどの卵を産み、抱卵は雌によって行われる。
その間、雄は巣の周りをよく警戒し、時には攻撃的になる。

卵は24~26日ほどで孵化するが、ヒナは羽毛に覆われ、既に目は開いている。
ヒナは孵化後1~2日ほどで巣を離れて、自ら採餌するようになる。

育児は雌雄によって行われ、移動するときは片方の親が先頭に立ち、もう片方の親が最後尾について幼鳥を守っている。

幼鳥はひと月半からふた月ほどで飛べるようになるが、その後も1年ほどの間は親と一緒に生活している。
雌雄ともに2~3年ほどで性成熟するが、シジュウカラガンの詳しい寿命は分かっていない。

ただ、2010年オレゴン州で狩猟されたものが、1987年にアラスカ州で足環を付けられていたことから、野生下では少なくとも22年以上の寿命をもっていたことが記録されている。

また、近縁のカナダガンの野生下での寿命は10~25年、飼育下では40年以上の寿命があるので、シジュウカラガンもこれと同じほどの寿命をもっているのだろう。


シジュウカラガンの保護状況・その他

シジュウカラガンは、19世紀後半から 20世紀の初頭にかけての乱獲や開発などによる生息地の喪失により、個体数が大きく減少した時期があったが、その後の保護政策などもあり、現在の個体数は回復してきている。

しかし、シジュウカラガンは依然として狩猟の対象になっているほか、開発やそれに伴う土壌汚染などの影響も心配されている。

国際自然保護連合では、現在のところ絶滅の恐れはないとしているが、狩猟区域では落ちている鉛の弾などを食べることによる鉛中毒や、農薬による中毒も依然として指摘されている。

また、国内でもかつては多くが冬鳥として渡って来ていたが、開発などによる越冬地の減少で、ほとんど見られなくなっていた。

しかし、保護活動や越冬地の保全の取り組み、個体数の回復計画などにより、宮城県などでは冬季の飛来数が増加している。
だが、全体としての飛来数は少なく、環境省では冬季に国内に飛来して来る亜種・B. h. leucopareia を絶滅危惧種(IA類・CR)として指定している。

尚、シジュウカラガンには次の亜種が認識されている。

Branta hutchinsii hutchinsii
シジュウカラガンの基亜種で、ふつうは白い首輪が見られない。
主にカナダ中央部と東部の北極圏やグリーンランドで繁殖し、北アメリカ大平原(グレートプレーンズ)南部で越冬する。

B. h. leucopareia
亜種の中では2番目に小さく、夏にはアリューシャン列島で繁殖し、アメリカ合衆国西部などで越冬し、国内にも少数が飛来する。

B. h. minima
もっとも小さな亜種で、羽毛の色ももっとも黒っぽい色をしている。
アラスカ西部で繁殖し、オレゴン州とカリフォルニア州などで越冬する。

B. h. taverneri
もっとも大きな亜種で、体重は最大3kg程にも成長し、カナダガンと同じほどの大きさがある。
アラスカ北東部からカナダ北部にかけて繁殖し、冬にはアメリカ合衆国南西部やメキシコなどへ渡って冬を越す。

また、絶滅亜種とされる B. h. asiatica (千島列島などで繁殖し、アメリカ合衆国のカリフォルニア州で越冬) も挙げられるが、この亜種については B. h. leucopareia との区別が曖昧なこともあり、亜種としてははっきりとしない。

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