マルミミゾウは西アフリカやコンゴ盆地などに分布している小型のゾウで、森林地帯に生息している。 別名・シンリンゾウとも呼ばれていて、サバンナなどでよく見られるアフリカゾウをサバンナゾウ・ソウゲンゾウなどと呼ぶこともある。
マルミミゾウの分布域・生息環境 マルミミゾウ(シンリンゾウ)は、コートジボワールやガーナ、カメルーンやガボン、中央アフリカ共和国やコンゴ民主共和国などの森林地帯に生息する小型のゾウで、アフリカゾウのようにサバンナや渓谷などでは見られない。 ギニア北部にも生息していると言われているが、西アフリカの分布域は連続しておらず、分布域は断片化している。 マルミミゾウの大きさ・特徴 マルミミゾウはサバンナなどで見られるアフリカゾウと大変よく似ているが、アフリカゾウよりも体が小さいことが特徴で、耳も小さい。 しかし、雄の肩高は2.4~3m、体重も4,000~6,000kg程はあり、大きいものでは6,000kgを超えるものも見られる。 一方、雌はかなり小さく、肩高1.8~2.4m、体重は2,000~4,000kg程と言われている。 マルミミゾウは爪も特徴になっていて、アフリカゾウの爪はふつう前足に4本、後ろ足に3本 (インドゾウはふつう前足に5本、後ろ足に4本) あるが、マルミミゾウは前足に5本、後ろ足に4本の爪がある。 しかし、爪の数や耳の大きさ、形には変異があるので、外見だけではマルミミゾウを見分けるのは難しい。 また、アフリカゾウよりも体は小さいが、マルミミゾウだけを見ると、やはり大きく見える。 牙は雌雄ともにもっているが、牙はふつう下方に向かって、あまり曲がらずに伸びている。 これは、森林の中での移動に適していると考えられていて、耳が小さいことも同じ理由によるものと考えられている。 マルミミゾウの生態・生活 マルミミゾウは湿潤な熱帯林に生息していて、アフリカゾウと同様、年長の雌をリーダーとした母系の群れで生活している。 数頭から20頭ほどの群れで生活していが、森林地帯で生活することから、群れの数はそれほど多くはなく、平均した群れの数は3~5頭ほどと言われている。 また、若い雄は雄同士の群れをつくって生活しているが、やがて単独で生活するようになる。 食性はアフリカゾウと同じで、木の葉や種子、果実や樹皮など、さまざまな植物質のものを食べる。 森林で生活していることから、行動範囲などははっきりとしないが、100~5,500平方キロメートルと考えられている。 かなり幅があるが、行動範囲は食料の量や水辺への距離など、生息環境によって変化する。 外敵はライオンやハイエナなどだが、体が大きいこともあり、成獣が襲われることはほとんどない。 時に、群れから離れたものや弱った子どもが襲われることがあるが、マルミミゾウの生息地ではライオンやハイエナは稀で、一番の外敵は人間になっている。 この他、マルミミゾウはふつう日中に活動するが、耕作地周辺などの人と競合する環境では、しばしば夜間に活動する。 マルミミゾウの繁殖・寿命 他のゾウと同様、マルミミゾウには決まった繁殖期が見られないが、1年に2回ある雨期の頃に多く見られる。 雌の妊娠期間は22~24ヵ月と長く、ふつうは1子、稀に2子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は100kg程で、生後間もなく歩けるようになる。 子どもは3ヵ月ほどの間は授乳され、その後徐々に植物を食べはじめるようになる。 育児は群れの中のほか雌によっても行われ、1年半から3年ほどで牙が生えはじめる。 子どもは4~5年ほどで自立するが、長ければ6~7年ほどは親に頼った生活をしている。 雌雄ともに11~15年ほどで性成熟するが、環境や栄養状態がよいと、雌はこれよりも早く性成熟すると言われている。 しかし、実際の繁殖は更に先になり、雌は20歳を過ぎてから繁殖をはじめ、5~6年の間隔で出産すると言われている。 また、雌はそのまま出生した群れの中に留まるが、雄は性成熟する頃には群れを離れていく。 雄はアフリカゾウよりも単独で生活する傾向があり、しばらくは若い雄の群れに入っているが、やがて単独で生活するようになる。 マルミミゾウのはっきりとした寿命は分かっていないが、アフリカゾウと同様、野生下では65~70年ほどの寿命をもっていると考えられている。 マルミミゾウの保護状況・その他 ほかのゾウの仲間と同様、森林の開発や破壊などによってマルミミゾウの生息地は断片化していて、個体数も減少している。 牙を目的とした密猟も続いていて、現在、マルミミゾウは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、もっとも絶滅が危惧される絶滅危惧種(CR)としてレッドリストに指定されている。 マルミミゾウの生態や繁殖の様子などはまだまだ分かっていない状況にもかかわらず、既に見られなくなった地域もあり、更なる個体数の減少が心配されている。 ところで、コンゴ川下流域の森林地帯に生息するマルミミゾウは、体がさらに小さく、コビトマルミミゾウ、ピグミーマルミミゾウなどと呼ばれることがある。 この個体群は亜種・L.c.pmilio とされていたが、その後、別種・Loxodonta pumilio として扱われることもあった。 しかし、現在ではマルミミゾウの個体変異と考えられていて、マルミミゾウに亜種はいないと考えられている。 尚、マルミミゾウをアフリカゾウの亜種とする場合は、草原やサバンナに生息するアフリカゾウをソウゲンゾウ(Loxodonta africana africana)と呼び、これに対して、森林地帯に生息するマルミミゾウをシンリンゾウ(L. a. cyclotis)と呼んでいるが、それぞれを独立種とした場合も、両種の混同を避けるため、各呼称を用いることがある。 |
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