アフリカゾウはアジアゾウよりも体が大きく、現存する陸上動物のうちでは最大の動物としてよく知られている。 各地の動物園でも人気のある動物で、大きい雄は、推定体重10トン程に成長するものもいる。
アフリカゾウの分布域・生息環境 アフリカゾウはサハラ砂漠より南のアフリカに分布しているが、現在の分布域は連続しておらず、断続的で分断されてしまっている。 現在はウガンダやケニア、タンザニアやジンバブエのほか、ボツワナやナミビア、ザンビア、アンゴラ、マラウイ、マリ、南アフリカなどで見られるが、他の地域では既に見られなくなっている。 主にサバンナや森林地帯、疎林や河川の渓谷、湿地帯などに生息しているが、これらの生息環境も徐々に減少傾向にある。 アフリカゾウの大きさ・特徴 アフリカゾウは最大の陸上動物で、体は雄の方が大きく、平均した肩高は3.2m程もある。 雌も2.6m程の肩高があり、平均した体重は雄で6000kg、雌でも3000kg程はあり、大きい雄では肩高390cm程で、推定体重が10トンを超えるものもいる。 尾を含めた体長も6~7.5m程はあり、近くで見ると、その大きさに圧倒される。 また、鼻が長いのがゾウの特徴だが、この鼻は、立っていても地面に届くほどに長い。 この鼻は上唇と鼻が一緒に伸びたもので、中には2本の鼻の穴が通っているが、強い筋肉によって自由に動かすことができる。 鼻の先には指状の突起があり、これを上手に使ってどんなものでも掴むこともできるが、鼻の力も強力で、250kg程の重さのものを持ち上げることができると言われている。 また、この大きな鼻を支える為、ゾウの頭部は体に対して大きくなっていて、首は短い。 耳も見るからに大きいが、雄では幅1m、長さ1.6m、時に2×1.5m程になるものも見られ、耳は肩を覆うほどに大きい。 この大きな耳は体温調整の役割を果たしていると考えられていて、アフリカゾウは日中も暑さをいとわずに行動する。 上顎の門歯は無根で、いわゆる牙となっている。 牙は雌雄共がもっていて、この牙はいずれも大きくて見事である。 牙の成長は、雌ではやがて止まるが、雄では成長が遅くなるが伸び続け、長さが4m以上のものも知られている。 しかし、雌の牙も立派なもので、2.5m程の長さがある。 サイやカバなど同様、皮膚は厚く、体にはほとんど毛が生えていない。 体色は、赤褐色や黄土色などに見えることがあるが、これは砂浴びや泥浴びによるもので、体色は灰色や灰褐色をしている。 アジアゾウとの外見上の違いは、アフリカゾウの背中の中程がくぼんでいることが特徴で、耳もかなり大きい。 また、アフリカゾウはふつう前足に4つ、後足に3つの蹄をもっているが、アジアゾウではふつう前足に5つ、後足に4つの蹄をもっている。 鼻の先に見られる指状の突起も、アジアゾウでは上側にひとつだけだか、アフリカゾウでは上下に見られることも特徴になっている。 アフリカゾウの生態・生活 アフリカゾウはサバンナや森林地帯、河川の渓谷や湿地帯、半砂漠地帯の疎林などに生息していて、生活の様子はアジアに生息するものとよく似ている。 アジアゾウと同じ群居性で、家族単位や20~30頭、時にはそれ以上の群れをつくって生活している。 ひとつの家族単位は1頭の雌とその子どもたちからなる3~10頭程の母系社会で、代を重ねることによって群れの数は多くなる。 いずれも1頭の年長の雌が群れを率いているが、群れの数が多くなると、普通は分散して新しい群れをつくる。 また、多くの若い雄は雄同士の群れをつくるが、年老いたものは単独で生活することがある。 活動は日中に行われるが、人との接触が多いようなところでは、しばしば夜間に活動する。 食性も草食性でアジアゾウに似ているが、アフリカゾウはより葉食性がつよいと言われている。 採食する時は、長い鼻を巧みに使って木の葉などを巻き取るようにして食べるが、木の葉や木の枝などのほか、樹皮や果実なども大量に食べ、牙で地面を掘って木の根なども食べる。 体が大きいこともあり多くの植物類を食べるが、毎日100~300kg程の食べ物を食べ、1日の多くを採食に費やしている。 水があれば毎日大量に飲むが、水を飲むときも、鼻で吸い込んで口に運んで飲む。 また、乾季に水がなくなった時などは、地面を掘って水を探し出すこともする。 アフリカゾウはサイのように水浴びや泥浴びをする習性があるが、これは皮膚を乾燥から守ったり、寄生虫などを駆除する為のものと考えられている。 体が褐色や赤褐色、黄土色などに見えるのは、この泥浴びなどによるもので、泥浴びの後、岩や樹木に体を擦りつけたりしている。 これも寄生虫などを駆除したり、古い皮膚をとり省いたりするもので、この様子は動物園なども時々見ることができる。 ところで、ゾウは仲間意識が強く、外敵や銃などで撃たれるなどして傷ついたものを、同じ群れのものが左右から支えて助けようとする。 アフリカゾウは体も大きく力も強いので、外敵はほとんどいないが、幼獣や弱ったものなどはライオンやハイエナなどに襲われることがある。 このような場合は、前述したように、周りのものたちが弱いものを取り囲み、守るようにしている。 外敵などを威嚇するときは耳を広げ、鼻を上に伸ばして大きなほえ声をあげる。 それでも相手がひるまない時は、鼻を下げて突進していく。 また、ライオンなども成獣を襲うことは滅多にないが、乾季などで獲物が少ない時などは、群れになって成獣を襲うことがある。 成獣が襲われる場合、そのほとんどが夜間で、やはり弱っているものが狙われる。 しかし、一番の外敵は人間で、牙を目的とした密猟も後を絶たないと言われている。 アフリカゾウは、アジアゾウに比べると性質は荒いと言われるが、象牙を目的に狩られたり、かつてはスポーツとしての狩猟なども行われていた為、攻撃的にならざるを得なかったと思われ、普段はおとなしく静かな動物で、知能もかなり高い。 また、アフリカゾウはアジアゾウのように家畜として使役されたことはないが、18世紀のはじめくらいまでは軍用として使われてきた歴史がある。 古くは紀元前218年、カルタゴのハンニバルがアフリカゾウを引き連れてアルプス越えをしたことは有名で、アフリカゾウと人との関わりは随分と古い。 アフリカゾウの繁殖・寿命 アフリカゾウには決まった繁殖期が見られないが、出産は雨季の間に多く見られる。 繁殖は一夫多妻で行われ、雌の妊娠期間は長く、20~22ヶ月程で普通は1産1子を出産するが、稀に2子を出産することもある。 生まれたばかりの子どもの体重は100~130kg程で、生後30分ほどの間に歩くことができるようになる。 幼獣は2~3年程の授乳期間があり、育児は群れの中の他の雌たちも協力して行われる。 雌雄ともに10~12年で性成熟し、雄はこの頃には群れを離れ、普通は若い雄同士の群れをつくるが、しばらくは単独で生活したりする。 また、雌は15歳を過ぎるころに初めての出産を迎え、その後は、早くても4年の間隔で出産する。 アフリカゾウの寿命は長く、野生で50~70年、飼育下では80年を超すものが知られている。 アフリカゾウの保護状況・その他 かつてはサハラ砂漠より南のアフリカに広く分布していたアフリカゾウは、象牙を目的とした狩猟によって生息数が激減し、現在では分布域も断片化してしまっている。 国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、アフリカゾウは絶滅危惧種としてレッドリストに指定されているが、その程度も絶滅危惧II類(VU)から、現在は絶滅危惧IB類(EN)に引き上げられている。 近年の生息地の破壊に加え、象牙を目的として密猟も後を絶たず、個体数は依然として減少傾向にある。 分布域はアフリカの広範囲に及んでいるにも関わらず、主な生息地は保護区だけになっているとも言われている。 尚、アフリカゾウの学名は「Loxodonta africana」と記述されるが、「Elephas africanus」も同意語(シノニム)として認識されている。 英名も「African bush elephant」と呼ばれているが、「African savanna elephant」と呼ばれることもある。 また、アフリカゾウの中でも主にサバンナや草原に生息しているものをソウゲンゾウ(Loxodonta africana africana)、主に森林地帯に生息しているものをシンリンゾウ(L. a. cyclotis)として別亜種としていたが、現在はシンリンゾウ(マルミミゾウ)を独立種(Loxodonta cyclotis・ African forest elephant)として認識している。 しかし、森林地帯に生息するマルミミゾウは、サバンナに生息するアフリカゾウよりも生息数が少なく、IUCNでは更に絶滅が懸念される絶滅危惧IA類CR)としてレッドリストに指定している。 この他、ゾウは各地の動物園でも人気のある動物だが、アフリカゾウは日本に1953年に渡来した記録が残されている。 |
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