アジアゾウ

アジアゾウ さんのプロフィール



動物図鑑・アジアゾウ

アジアゾウ

長鼻目・ゾウ科
学 名 Elephas maximus / Elephas asiaticus
英 名 Asian elephant
分布域 南アジアから東南アジアなど
生息環境 森林や草原、二次林や雑木林など
体 長 5.5~6.5m 程度
尾 長 1.2~1.5m 程度
体 重 3,000~5,000kg 程度
IUCNによる保存状況評価 / 絶滅危惧種

アジアゾウは南アジアや東南アジアなどに分布しているゾウの総称で、アフリカゾウと同様、陸上で最大の動物としてよく知られている。

体は大きく、鼻は地面に届くほど長く、この大きな鼻を支えるため、首は短くて頭部は大きい。
耳は大きいが目は小さく、四肢は太くて長い。
尾の先には毛があるが、体の毛はまばらに生えている。

体色は灰色や暗灰色、褐色を帯びたような灰色で、頭部や耳、鼻の基部などに薄いピンク色の斑があるものも見られる。
牙は雌雄共にもっているが、雌の牙は小さく、ふつうは外からは見えることはない。

アフリカゾウとの外見上の違いは、アフリカゾウの背中は真ん中辺りがくぼんでいて、頭部と腰の部分が高くなっているが、アジアゾウの体は樽型のような感じで、背中の真ん中が一番高くなっている。

額部分は、アフリカゾウでは真ん中が出っ張っているのに対して、アジアゾウでは左右が突き出ていて、額の中央はくぼんで見える。
また、耳はアジアゾウもかなり大きいが、アフリカゾウでは更に大きく、肩を覆うほどに大きい。

爪は、アジアゾウではふつう前肢に5本、後肢に4本もっているが、アフリカゾウでは前肢に4本、後肢に3本もっている。
鼻はいずれも長く、器用に使いこなしているが、鼻の先端には物をつかめるような突起があり、アジアゾウでは先端上部にひとつだけだが、アフリカゾウは上下ふたつの突起がある。

その他、体はアフリカゾウの方が大きく、牙はアジアゾウでも雌雄共にもっているが、雌の牙は小さく、稀に牙をもっていないものも見られるなどの違いがある。

アジアゾウは草原や常緑林、二次林や落葉林など、多様な森林地帯に生息しているが、開けた草原と続いているようなところに多く、草原や背の低い植物の広がる場所、森林などが入り混じっているようなところに多く見られる。
湿気の多い森にも生息していて、インド北東部などでは標高3000m程の高地にも生息している。

アジアゾウは社会的な生活を営んでいて、多くは15~20頭程の群れで生活している。
この群れはアフリカゾウと同様、母系の家族単位で、雌とその子どもたちからなっていて、群れは年長の雌によって率いられている。
代を重ねることによって群れの数は多くなるが、群れがある程度大きくなると分散していく。
また、雄は単独でいることが多い。

縄張りを主張するようなことはないが、平均すると雄は15k㎡、雌の群れは30kk㎡程の行動範囲をもっていて、食料や水を求めて毎日移動している。
乾季などには行動範囲は広くなるが、食料事情や群れの大きさ、生息環境などによっても行動範囲は変化する。
また、アジアゾウはかつて季節移動していたことが知られているが、現在は農地の開発などで生息地が分断されていて、事実上不可能になってしまっている。

草類などの植物質のもの食べるが、木の葉や樹皮、木の根や枝、低木の茎、ブドウなどの果実類など、さまざまな種類の植物を食べる。
採食するときは鼻を巧みに使い、木の葉などは鼻で巻き取るようにして食べ、直接口でかぶりつくようなことはしない。

また、背の低い草などは、鼻の先端にある突起をうまく使って食べるが、この鼻は上唇と鼻が一緒に伸びたもので、中には2本の鼻の穴が通っている。
鼻の先端の感覚は敏感で、人の指のように使いこなすことができるほか、鼻の筋肉は強靭で、250kg程の重さのものも持ち上げることができると言われている。

採食は早朝や夕方、夜間に行われるが、休息や採食はほぼ同じ場所で行う習性があると言われている。
平均すると1日に150kg程の植物を採食するが、水も1日に80~200リットル、平均すると140リットル程も飲むと言われていて、水源から遠く離れてしまうようなことはない。
水を飲むときも鼻を使って口に運ぶが、長い鼻は一度に4リットル程の水を吸い込むことができる。

また、サイのように水浴びや泥浴びすることを好み、体色はしばしば土壌の色を帯びていることがある。
動物園などでも砂や水をかけている様子が見られるが、これは寄生虫などから皮膚を守る役目を果たしていると考えられている。

牙は、アジアゾウも雌雄共にもっているが、ふつうはアフリカゾウのものよりは小さい。
特に雌の牙小さく、口を開けないと見ないほどで、稀に牙をもっていない雌もいる。

しかし、雄の牙は長さ1.8m、重さは45kg程度、中には3m程の牙をもつものもいて、アフリカゾウに劣らないほど立派なものも見られる。
この牙もさまざまな目的に使われ、樹皮を剥いだり、地面を掘って木の根や水を得たりするほか、倒木を移動することなどに使われている。
平均した体の大きさもアフリカゾウよりは小さいが、それでも体高3.4m、体重が6500kg程に成長するものも見られ、力も強い。

視覚は弱く、首が短いので後ろを見ることはできないが、聴覚と嗅覚はきわめて優れている。
また、足を地面から同時に離して駆けることはできないが、走るのも速く、50km/h近くの速さで駆けることができる。

このほか、アジアゾウは他の大型哺乳類と同様、温度変化によく対応している。
日中の暑い時間は日陰などで過ごし、大きな耳で扇ぐようにして体温を放熱しているが、皮膚は厚く、寒さにもよく耐える。

一夫多妻で、決まった繁殖期は見られない。
妊娠期間は18~22ヵ月と幅があり、1産1子で、稀に2子を出産する。

生まれたばかりの子どもの体重は50~150kg、平均100kg程で、生後間もなく立ち上がることができる。
育児は他の雌によっても行われ、数ヶ月の後には草類を食べはじめるようになるが、この間に、子どもはセルロースの消化を助ける細菌などが含まれている母親の糞も食べる。

授乳期間は18ヵ月程だが、離乳後も数年の間は子どもの面倒をみていて、幼獣は移動する時、親や兄弟の尾に鼻を巻きつけて付き従っている。
完全に離乳するのは3~4年程度と言われていて、雌は子どもが完全に独立するまでは、次の繁殖を行うことはない。

雌雄共に12~15年、概ね14年程で完全に性成熟し、雌は同じ群れに留まるが、雄は離れて独立していく。
寿命は長く、飼育下では70~80年、野生でも60年程の寿命をもっている。

外敵はトラライオンなどだが、成獣のアジアゾウが襲われることはほとんどない。
幼獣や傷ついているものなどは時に襲われることもあるが、このような場合は、周りのものが取り囲み、弱いものを守るようにしている。
相手が諦めたり怯まないときは、牙の間に鼻を入れて突進し、追い払ってしまう。

尚、アジアゾウは分布域も広いこともあって、いくつかの亜種に別けられている。
もっとも広く分布しているのはインドゾウで、インドゾウを指してアジアゾウと呼ぶこともある。

インドゾウ (E.m. indicus / Indian elephant)
動物園でもよく見られる亜種で、インドやネパール、ブータン、バングラデシュなどを経て、ミャンマーやタイなどのインドシナ半島からマレー半島のほか、中国南部の一部にも分布している。
体重は2000~5000kg程で、草原や常緑林、二次林など様々な環境に適応している。
各19本の肋骨をもっているが、分布域が広いことから別亜種が含まれているのではないかとも言われている。
セイロンゾウ (E.m. maximus / Sri Lankan elephant)
スリランカゾウとも呼ばれいて、アジアゾウの基亜種になっている。
主にスリランカの北と東や南東部の乾燥地帯に生息していて、体重は2000~5500kg、体高は2~3.5m程に達し、アジアゾウの中ではもっとも体が大きい。
各19本の肋骨をもっているが、インドゾウよりは体色が暗いとされている。
スマトラゾウ (E.m. sumatranus / Sumatran elephant)
体長2~3.2m、体重は2000~4000kg程で、インドゾウよりは明るい体色をしていて、各20本の肋骨をもっている。
スマトラとボルネオ島に分布しているが、生息地は分断している。
ボルネオゾウ (E.m. borneensis / Borneo elephant・Bornean Pygmy elephants)
ボルネオ島の北部と北東部の限られた低地林に分布しているが、アジアゾウの中ではもっとも体が小さく、ピグミーゾウとも呼ばれている。
雄でも体高2.5m程度で、ほかのアジアゾウとは遺伝的に異なっていると考えられている。

アジアゾウはアフリカゾウとは異なり、古くから使役動物として利用されてきたが、紀元前3000程のインダス文明が栄えていた頃には既に家畜化されていたと言われている。
かつては軍用などにも利用されていたが、アジアゾウは現在でも森林地帯での荷物の運搬に利用されているほか、宗教的儀式でも重要な役割を果たしている。

国内の動物園でも必ずと言っていいほど飼育されている動物で、大きな体と長い鼻で人気をさらっている。
また、ゾウの仲間はゴリラチンパンジーなどと同じように、固体による個性も現れやすい動物で、知能もかなり高く、記憶力にも優れている。

しかし、アジアゾウは長い間食用として狩猟の対象になっていたほか、牙を目的とした密猟などもあって、生息数は減少を続けてきている。
元来は西アジアにも広く分布していて、中国では長江(揚子江)辺りまで分布していたと考えられているが、近年では森林の開発などによって生息地が減少し、アジアゾウの個体数も更に減少している。
また、分布域が広いにも関わらず、生息地は断片化していて、生息地を奪われたものが、耕作地に現れてバナナやトウモロコシなどに害を与えるなどの問題も起こっている。

現在、いずれの亜種も国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって絶滅危惧種としてレッドリストに指定されているが、更なる保護も求められている。


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