カバは動物園などでも人気のある動物で、特徴のある体つきでよく知られている。 しかし、近年の個体数は減少していて、絶滅危惧種に指定されている動物でもある。
カバの分布域・生息環境 カバはサハラ砂漠より南のアフリカ大陸に広く分布していて、河川や湖沼などの水辺近くに生息している。 しかし、アルジェリアやエジプト、モーリタニアやリベリアでは既に見られなくなっていて、生息域は連続していない。 カバの大きさ・特徴 カバは陸上動物の中でもサイと共にゾウに次ぐ大きな体をしていて、体長は3~4m、1300~2000kg程の体重がある。 体は雄の方が大きく、大きな雄では体長が5mを超え、体重は4,500kg近くになるものもいたと言われている。 カバは、かつてはサハラ砂漠より南のアフリカに広く分布していたとされているが、現在の分布域は主な河川周辺などに限られていて、大きな固体を見ることは少ないと言われているが、それでも体重が3200kg程のものも見られ、シロサイほどの大きさがある。 また、カバは体つきにもかなり特徴があり、頭部は非常に大きく、突出した目や鼻孔、耳が一直線に並んでいる。 口がかなり大きいことも特徴で、長い門歯と犬歯をもっている。 顎の筋肉が発達しているので、大きな口は150度程も開くことができる。 動物園などでも、時折口を大きく開けている様子が見られるが、その大きさと開き具合には驚かされる。 犬歯も長くて大きくなるが、この犬歯は50cm程になることもあり、上あごをつき抜けているものもしばしば見られる。 体色は灰色や灰褐色で、被毛はほとんどなく、尾の先と口のまわりに剛毛が見られるだけになっている。 また、皮膚はたるんでいて、四肢の上方に被さっている。 このほか、カバはウシやキリン、イノシシやラクダなどの仲間と共に偶蹄類に分類されているが、遺伝的にはクジラやイルカ類が属するクジラ目に近いとされ、カバとクジラ類の共通の祖先からウシ亜目が別れ、その後すぐにクジラとカバの系統が別れたと考えられている。 カバの生態・生活 カバは河川や湖沼などの水辺近くで生活している半水生の哺乳類で、河口などにも生息している。 1日のほとんどを水の中で過ごしているが、水の深さは全身を水没させるに十分な深さが必要で、水深2m程が望ましいとも言われている。 動物園でもよく水の中に浸かっていて、水から上がってくるのは、日光浴程度にも見える。 体が重いためか、水から上がっているときはあまり動き回ることもなく、横になっているか、重い頭部を下げて少しばかり移動する程度で、じっとしていることも多い。 自然下では、普通20~30頭ほどの群れをつくって生活しているが、大きいものでは100頭ほどの群れをつくることもある。 この群れは雌とその子どもたちからなるもので、雄はふつう単独で生活している。 主に夕方から夜間にかけて、陸上で草類や芽、茎、樹皮などを採食するが、50cm程もある幅広い筋肉質の唇は地面の草を食べるのに適していて、木の根などを掘り出すようなことはない。 大きい体を維持するため、一日に40~50kg程の量を食べるが、食性が植物質のものなのでかなりの量になり、飼育下で与える量を見ていても相当なものに見える。 また、カバの胃は反すう胃のようだが、ウシのように反すうはしない。 カバは草食動物だが、時に小型の偶蹄類や動物の死肉を食べることも知られている。 これはキリンやトナカイなど、他の草食動物にも見られることで、動物質のものも少しは食べる。 しかし、胃は肉を消化するには適していないことから、これらは栄養失調や病気などの理由から食べるものだと考えられている。 カバの特徴的な頭部は水の中での生活に適していて、一直線に並んでいる目と鼻、耳だけを水の上に出して周囲の様子を伺うことができる。 鼻孔は自由に閉じることができ、4~5分程度は水中に潜っていることができる。 水の中では泳ぐというよりも水底を歩くといった方が相応しいが、毎時8km程の速さで移動することができるとも言われている。 また、カバには排糞時に尾を動かして糞を飛ばし縄張りを示す習性があるが、カバは縄張り意識の強い動物で、自分のテリトリーに入ってきたものに対しては激しく攻撃する。 ライオンなどの外敵に対してはもちろんだが、他のカバに対しても激しく攻撃する。 攻撃の際には大きな口と巨大な犬歯が強力な武器となり、雄同士の争いでは瀕死の重傷を負うこともしばしばある。 体が大きいこともあり、成獣を襲うものはほとんどいないが、時にライオンに襲われることがあるほか、子どもはハイエナや大型のワニなどに襲われることもある。 また、カバは人気のある動物だが、本来は性質が荒いと言われていて、カバが生息する地域での野生動物の攻撃による人間の死者数は、カバによるものが最も多いと言われている。 これはカバの縄張りに誤って侵入したことが原因と考えられるが、カバはその外見では鈍重でおとなしい動物のように見られているが、短い距離なら時速40km程で走ることができると言われているように、意外とすばやい動きをする。 ところで、カバは血の汗を流すといわれているが、カバには汗腺がなく、これは体表から分泌される赤みを帯びた粘液で、皮膚を乾燥から守るために分泌される。 皮膚は乾燥に弱く、水の中を好むのも皮膚が裸出しているので乾燥を防ぐ為でもある。 カバの繁殖・寿命 カバの繁殖は一夫多妻で決まった繁殖期は見られないが、普通は2~8月の乾季に繁殖活動が見られ、出産は10~4月の雨季に多く見られる。 雌の妊娠期間は8ヵ月程で、普通は1産1子を出産するが、稀に2子を出産する。 出産前後の雌はかなり気が荒くなり、出産の1週間ほど前からは群れから少し離れ、出産後2週間ほどを過ぎた頃に子どもと一緒に群れに戻ってくる。 カバの出産は水中で行われるが、交尾や哺乳なども水中で行われる。 生まれたばかりの子どもの体重は22~55kg程で、6~8ヵ月程の授乳期間がある。 遅くても雌は5~6年、雄は7~8年で性成熟し、寿命は野生下・飼育下ともに45~55年程と考えられているが、飼育下では60年を超えたものも知られている。 カバの保護状況・その他 カバは国内の動物園でもよく見られる動物で、かつてはナイル川周辺やサハラ砂漠より南のアフリカで広く見られたが、近年は生息地の開発や破壊などによって個体数は減少していて、現在は国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(VU)としてレッドリストに指定されている。 尚、カバの亜種については、現在のところ次の5亜種が提唱されている。 しかし、これらは形態学的な頭蓋骨の地域的な違いによって指摘されているもので、遺伝的な違いなどを確認するには、更に今後の研究を待たなければならないと言われている。 Hippopotamus amphibius amphibius タンザニアからモザンビークなどに分布する基亜種 H. a. kiboko ケニアやソマリアなどに分布 H. a. capensis ザンビアからのアフリカ南部にかけて分布 H. a. tschadensis 西アフリカ全域やチャドの一部に分布 H. a. constrictus アンゴラやコンゴ民主共和国南部、ナミビアなど また、カバ科に属する動物として、オカピ、ジャイアントパンダと共に三大珍獣として数えらているコビトカバが上げられるが、コビトカバは単にカバの小さいものではなく、カバとは形態も異なっていて生活様態なども異なっている。 |
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