キリンの仲間は全てアフリカ大陸に分布していて、地上でもっとも背の高い動物としてよく知られている。 但し、ふつう「キリン」と言えば、キリン科のキリン亜科に属している首の長いキリンを指していて、ここでもキリン属のものを紹介をしているが、キリン科には背の低いオカピが属しているオカピ亜科も含まれていて、広い意味では偶蹄目キリン科を指すこともある。 いずれにしても、キリンは動物園でも人気のある動物で、必ずと言っていいほど飼育されている。
キリンの分布域・生息環境 キリンの仲間はサハラ砂漠より南に分布しているが、多くはチャドやニジェールなどのアフリカ中央部、エチオピアやソマリアからタンザニアなどのアフリカ東部、ナミビアやボツワナ、南アフリカ共和国などのアフリカ南部に分布している。 その分布範囲は必ずしも連続していないが、草原やサバンナ、開けた森林地帯などに生息していて、群れをつくって生活している。 キリンの大きさ・特徴 キリンはゾウやサイ、カバと並ぶ大型の草食獣で、平均した頭頂高は4.5~6m、体高2.2~3.4m、体重は800~1200kg、大きいものでは体重が1600kgを超えるものも見られる。 体は雄の方が大きいが、雌雄共に淡褐色や黄褐色の地に、暗褐色や赤褐色などのはっきりとした多数の斑があるのが特徴で、全体には網目模様のように見える。 この斑の大きさや形、色合いなどは亜種や固体などによって異なっているが、多くは腹面や四肢の内側は斑が薄く、下肢には斑がないものなども見られる。 また、尾にも模様があり、先には黒っぽい毛が生えている。 胴は短いが、四肢は首と同じように長く、体は肩の方が腰よりも高くなっている。 四肢には第2指と第3指があるだけで、ほかの指は完全に退化してしまっている。 また、首が長いことがキリンの特徴だが、首の骨(頚骨)は他の哺乳類と同じ7個しかない。 角は雌雄共に2本もっているが、シカの仲間やウシの仲間などのように鋭くはなく、長くもない。 この角もキリンの特徴になっていて、全体が毛の生えた皮膚で覆われていて、先だけは角質化していて硬いものになっている。 また、キリンには頭頂にある角のほか、額の骨が突き出ていて、これが小さな前角のように見える。 固体によっては後頭部にも小さな突出した部分があり、これは後頭角と呼ばれている。 嗅覚や聴覚が優れているが、視覚も優れていて、キリンは色を見分けることができると言われている。 鼻孔はラクダのように閉じることができるほか、高い位置にある脳に血液を送るため、心臓は大きく、10~12kg程の重さがある。 心拍数も150~170拍/分ほどで、人の60~90回/分に比べてかなり多くなっている。 また、キリンは鳴くことが滅多にないが、ウシのような声をあげるほか、幾つかの鳴き声もあげることが知られている。 キリンの生態・生活 キリンの仲間は草原やサバンナ、開けた森林地帯などに生息していて、乾燥した環境を好み、水源から離れたところでも見られる。 普通は10~20頭ほどの群れで生活しているが、時には70頭程の群れをつくることもある。 群れには強い社会性はなく、群れを構成しているメンバーはしばしば入れ替わることがある。 シマウマやヌーなどと一緒にいることも多く、昼間に活動するが、暑い日中は休んでいて、主に早朝や夕方に採食を行う。 草食性の動物だが、キリンはふつう地面にある草類などは食べず、高い木の木の葉や小枝、果実などを食べる。 これによって、他の草食動物との食物的な競合を避けているが、採食するときは、口で直接食べるのではなく、40cm程もある長い舌を使って木の葉などを巻き取るようにして食べる。 1日に30~60kg程の植物を採食し、主にアカシアの木の葉を好むが、60種類ほどの植物を食べると言われていて、キリンは季節によって様々な種類の植物を食べている。 水分の多くは植物からとっていて、あまり水を飲まなくても過ごすことができるが、水を飲むときは、前足を大きく広げて首を真っ直ぐに下ろし、やや膝を曲げるような格好で飲むようにしている。 また、ミネラル補給の為、土や動物の骨など舐めることもするほか、キリンの胃は4室に分かれていて、休んでいる時は反芻をしている。 この他、飼育下では座って寝るようなことも多いが、野生ではふつう立ったままで眠っている。 外敵の心配がないような場合は座って眠ることもあるが、立ったまま長い首をアーチ状にして後足の方に回し、浅く眠る時は首を直立したままで眠っている。 外敵はライオンやヒョウ、ハイエナなどだが、主に幼獣や傷ついたものが狙われる。 成獣のキリンは体も大きく、後足の蹴りは強力で、時には相手を蹴り殺してしまうこともあり、成長したものは滅多に襲われることはない。 また、キリンはゆっくりと走っているように見えるが、短時間なら50~60km/h程の速さで走ることができる。 キリンの繁殖・寿命 キリンの繁殖は一夫多妻で、決まった繁殖期は見られないが、出産の多くは5~8月に見られる。 繁殖時期の雄は雌をめぐって争うが、この時は長い首を相手の体などに打ち付けるようにして争う。 雌の妊娠期間は400~460日程と長く、1産1子、稀に2子を出産する。 出産は立ったままで行われ、生まれたばかりの子どもの体重は50~60kg程で、1.8~2m程の高さがある。 子どもは生後数時間ほどで走り回ることができ、雌雄共に12~16ヵ月程で完全に離乳する。 雌は4年、雄は4~5年程度で性成熟するが、実際の繁殖はこれよりも遅い。 飼育下での寿命は20~30年、野生ではこれよりも短く、10~15年程度と言われている。 キリンの保護状況・その他 キリンはよく紹介される動物だが、近年の開発や耕作地の拡大などによって生息地が減少し、個体数も減少傾向にある。 現在、国際自然保護連合(IUCN)では絶滅危惧種(VU)に指定しているが、一部の地域では肉や皮を目的とした密猟も行われていて、更なる個体数の減少が心配されている。 尚、キリンの亜種については意見が異なったり、幾つかの混乱なども見られるが、概ね次のような亜種が認められている。 ただ、体色や、体や四肢に見られる模様には個体差や季節変化もあるので、一部を省き、外見だけで判別するのは難しい。
また、従来キリンは1種とされていて、上の様な亜種に別けられているが、 コルドファンキリン、ヌビアキリン、ナイジェリアキリン、アミメキリンを同種・キタキリン (Northern giraffe・G. camelopardalis)として、それでれ G. c. antiquorum、G. c. camelopardalis、G. c. peraltae、G. c. reticulataと記述 但し、アミメキリンを別の独立種・Giraffa reticulataとする意見もある。 アンゴラキリン、ケープキリンを同種・ミナミキリン (Southern giraffe・G. giraffa)として、それぞれを G. g. angolensis、 G. g. giraffaと記述 マサイキリンとローデシアキリンをひとつのマサイキリン (Masai giraffe・G. tippelskirchi)として、それぞれを G. t. tippelskirchi、G. t. thornicroftiと記述し、従来の亜種を3種、或いは4種に別ける意見もあり、キリンの種や亜種については今後の研究が待たれる。 尚、キリンが日本に最初に紹介されたのは、明治40年、上野動物園に来たものだと言われている。 また、学名の「giraffe」はアラビア語の「速く走るもの」と「品のある動物」という語から転化したもので、「camelopardalis」はラテン語で「ヒョウ模様のラクダ」という意味を指している。 |
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