ヌートリア

ヌートリア さんのプロフィール


動物図鑑・ヌートリア

ヌートリア

齧歯目・ヌートリア科
学 名 Myocastor coypus
英 名 Nutria / Beaver-rat / Coypus
分布域 南アメリカ
生息環境 河川や沼、湖などの岸辺や湿地帯など
体 長 40~60cm 程度
尾 長 30~45cm 程度
体 重 4.5~7kg 程度

ヌートリアは南米に分布する大型のげっ歯類で、湖沼や河川周辺に生息していて、半水生の生活をしている。
国内でも外来種として定着していて、河川のほか、大きな池のある都市部の公園で見られることもある。

●分布域・生息環境
●大きさ・形態
●生態・生活
●繁殖・寿命
●保護状況・その他


ヌートリアの分布域・生息環境
ヌートリアは南アメリカに分布する大型のげっ歯類で、チリやアルゼンチン、パラグアイやウルグアイ、ボリビアやブラジル南部などに分布している。
しかし、毛皮などを目的として飼育されていたものが逃げ出したりして、現在はヨーロッパからアジア、北アメリカなどて野生化し、外来種として定着している。

湖沼や流れの緩やかな河川周辺に生息していて、水辺の周辺に水生植物が繁茂しているところに多く見られる。


ヌートリアの大きさ・形態

ヌートリアは大型のげっ歯類で、体長は40~60cm、平均した体重は5.5kg程もある。
雄は雌よりも大きく、大きい雄では体長70cm、体重も10kgを超えるものも見られる。

体つきは大きなネズミのようで、四肢は短く、前足は後ろ足よりも短くなっている。
前足に4本の指と、退化した親指があり、後ろ足は5本の指があり、4本は水掻きで繋がっている。

門歯は鋭くて大きく、色もオレンジ色でよく目立ち、この門歯は生涯伸び続ける。

雌雄ともに体毛はこげ茶色や茶色、茶褐色などで、尾は長いが毛はほとんど生えていない。
目は小さく、耳も小さくて丸く、鼻孔と口の周りは白くなっている。

一見してビーバーに似ているが、ヌートリアの尾は長く、ビーバーのように平らなオール状になっていないので簡単に見分けることができる。


ヌートリアの生態・生活

ヌートリアは河川や湖、池や湿地などの水辺を好み、水草や多肉植物の多いところに生息している。

元来は南アメリカに分布しているが、国内でも飼育していたものが逃げ出し、自然が残る河川など生息している。
また、環境によく適応していて、都市部でも、水生植物が繁茂するような大きな池があれば公園に生息していることもある。

ヌートリアは、水と密着した半水生的な生活をしていて、水辺から100mを超えるようなところでは見られないとも言われている。

若い雄は単独でいるものも見られるが、ヌートリアは、ふつう雌雄のペアや複数の雌雄とその子どもからなる2~13頭程のコロニー的なグループを形成して生活している。

マコモやホテイアオイなどの水性植物の葉や茎、地下茎などを主に食べるが、陸性の植物も食べるほか、ときに軟体動物や魚なども食べる。

また、採餌するときは、前足の第1指は痕跡的だが、他の指を器用に使って食べ物を口に運ぶ。

巣穴は水辺近くに単純なトンネル状のものをつくるが、長さが15mを超え、いくつかの部屋を備えた深くて入り組んだものをつくることもある。

また、ヌートリアは水辺の草むらや中洲などに草の茎や枝など使ってつくることもあり、直接水の上に植物を積み上げて、「プラットホーム」と呼ばれる浮き巣をつくることも知られている。

巣の周辺の草むらや藪などには走路をつくり、巣穴から半径150~200m程の範囲を動き回る。

行動範囲はほぼ一定していると考えられていて、雄で0.056k㎡程度、雌は0.025k㎡程度と言われているが、河川では水の中を泳いで結構長い距離を移動しているようにも見えるので、食糧事情などによって、行動範囲にはある程度の幅があるのだろう。

しかし、特別な環境変化などがなければ、ヌートリアは同じ場所に定住し、活動している時の時間のほとんどは、採餌やグルーミングに費やされている。

水辺での生活に適したように、後足の第1~第4指の間には水かきがあり、泳ぎは大変うまく、潜水能力にも優れ、時には5分程も潜っていることがある。

また、ヌートリアは主に低地で生活しているが、アンデス地方では標高1200m程の高地にも姿を見せるほか、普通は淡水域に生息しているが、チリのチョノス諸島に分布するものは、汽水域や塩水の湿地などでも見られる。

ところで、ヌートリアは主に早朝や夕方、夜間に活動し、日中は巣穴や草むらなどに潜んでいることが多い。

しかし、主として夜行性と言われているが、ヌートリアは昼夜共に活動し、昼間もよく動き回っている。
国内でも河川や湖沼のほか、大きな池のある都市部の公園でもしばしば見られるが、昼間もよく活動している。

人との接触や外敵が多いと夜行性になるのだろうが、国内にはこれといった天敵もおらず、人も危害を加えることがないので、日中でもふつうに活動しているのだろう。


ヌートリアの繁殖・寿命

ヌートリアには決まった繁殖期は見られず、一年を通して繁殖する。

雌の繁殖の間隔は5~60日と幅があるが、栄養状態や気候等の環境によって変化すると言われている。
また、雌の妊娠期間は125~145日程度と長く、1産2~12子、普通は3~6子を出産する。

生まれたばかりの子どもの体重は225g程度で、目は既に開いていて、毛も生えそろっている。

8週間程の授乳期間があるとされているが、ヌートリアの子どもはよく発達して生まれるので、その日のうちに草を食べはじめ、生後1日ほどで泳げるようになる。
この為、早いものでは5日程で授乳を終え、雌は1年に2~3回繁殖することができる。

また、ヌートリアの雌の乳頭は4対あるが、体側についているため、授乳は水上でも行うことができるようになっている。

成長は早く、雌雄共に半年を過ぎるころには性成熟し、野生での寿命は5~6年程度、飼育下では6~10年程度と言われている。

元来の分布域での外敵は、半ば水生的な生活をしているためワニなどがあげられるが、ワシなどの猛禽類に襲われることもある。


ヌートリアの保護状況・その他

ヌートリアは分布域が広いこともあり、現在のところ絶滅の恐れはないとされている。

「ヌートリア」とは、元々スペイン語で「 (カワウソの) 毛皮」の意味で、ヌートリアの上毛は荒いが下毛(灰色)は上質で密なことが知られはじめた19世紀初頭には盛んに乱獲され、生息数が激減したことがある。

その後、アルゼンチン政府の禁猟などの政策により、現在ではその数は増加している。

一方、ヌートリアは飼育下でもよく耐えるので、一時期は毛皮などを目的として北アメリカやヨーロッパなどに持ち込まれて盛んに飼育されたが、各国で逃げ出したものが野生化し、トウモロコシや穀類などの農産物に被害を与えることから問題になっている地域もある。

今ではヌートリアの飼育は寂れているが、国内でもかつては沼狸(ショウリ、ヌマダヌキ)や海狸鼠(カイリネズミ)などと呼ばれ、毛皮や肉を目的として盛んに飼育されていた。

しかし、毛皮需要の激減や毛皮価格の暴落などに伴って、飼育されていた多くのものが放逐されたり、逃げ出したりして再野生化している。

農作物などに被害が出ている地域もあり、特に西日本での被害は顕著で、アライグマキョンなどと同様、特定外来生物として問題になっている。

いずれにしても、ヌートリアは繁殖率が高く、環境への適応力もあるので、全体としては増加傾向にあると言われている。

尚、ヌートリアは、次の4亜種が一般的に認識されている。

Myocastor coypus coypus
 チリ中央部やボリビアなどに分布する基亜種

M. c. bonariensis
 アルゼンチン北部やボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、ブラジル南部など

M. c. melanops
 チリのチロエ島

M. c. santacruzae
 アルゼンチンとチリに跨るパタゴニア地方

尚、ヌートリアは、以前はカプロミス科に分類されていたが、現在は独立したヌートリア科に属している。

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