アメリカビーバーは砂漠地帯を省くカナダからメキシコまでの北アメリカに広く分布していて、森林地帯の河川や湖などに生息している。 単にビーバーと呼ばれることもあるが、齧歯目の中ではカピバラにならぶ大きな動物で、大きいものでは体重が40kgを超えるものも見られる。 体毛は長く、毛色は茶色や茶褐色などで、耳は小さく、四肢は短い。 カピバラと同様、半水生の生活をしていて、後足には水かきを持っているが、アメリカビーバーはより水生に適した体をしている。 尾にはほとんど毛がなく、ボートを漕ぐオールのように、皮膚は広くて平らなうころ状になっている。 水中ではこのオール状の尾を上下に振って推進力を得て、きわめて巧みに泳ぐことができる。 また、アメリカビーバーは後肢だけで立ち上がることもできるが、この時も、尾を使ってバランスを取るようにしている。 潜水能力にも優れていて、最大で15分程も潜っていることができると言われているほか、皮下には脂肪を蓄えていて、冷たい水から体温を保つ役目を果たしている。 一見すると、南アメリカに分布しているヌートリアにも似ているが、ヌートリアの尾はネズミのように細いので、離れていて見分けることができる。 主に夜行性の動物で、夕方から活動し、樹皮や木の枝、葉、根などを食べる。 歯は丈夫で大きく、木の葉や硬い樹皮なども簡単に齧り取ってしまい、直径15cm程の樹木でも、10分程度で齧り倒してしまうと言われている。 また、木の幹や枝を冬期の食料として水底に沈める習性があるとも言われている。 アメリカビーバーは1日の多くを水の中で過ごし、岸などに上がっても水辺から遠く離れることはない。 外敵はコヨーテやクズリ、ボブキャットやオオヤマネコなどで、ピューマやアメリカクロクマもビーバーを襲うことがあり、幼獣はカワウソにも襲われることがある。 驚いたときや危険なときには、尾で水面を叩き警告音を立てるが、陸上での動作はのろい。 ところで、ビーバーは川の流れをせき止めて、棲みかとなるダムをつくる動物としてよく知られている。 この棲みかは、ふつうは川の中にドーム型のものが造られるが、川幅の狭いところでは、所謂川をせき止めたダムになっているものも見られる。 いずれも床は水面の上にあるが、巣の入口は水面下にあり、天敵の肉食獣などの侵入を防ぐ構造になっている。 また、大きなものでは高さ1.8m、基部の直径10m程にもなり、内部にはいくつかの部屋がつくられ、家族群で生活している。 棲みかは木の枝や泥などで作られるが、家族群の協力によって修復され、長期の使用にも耐えるようになっている。 中には数世代によって使用・修復が重ねられ、河川の両岸を塞ぎ、長さが数百メートルに及ぶダムとなっているものも知られている。 しかし、大河の岸に暮らすビーバーなどはこのような部屋をつくらず、堤防に穴を掘って生活したり、単独で暮らす雄などはダムをつくらないこともある。 また、アメリカビーバーが造るダムは、ダム湖となって水鳥や魚の棲みかともなるが、一方でサケやマスなどの魚の遡上を阻み、産卵環境に影響を及ぼす懸念も指摘されている。 一夫一婦で、寒冷地での繁殖期は1~3月頃に見られるが、南部では11~12月頃に見られる。 妊娠期間は3ヵ月程で、1産1~6子で、ふつうは3~4子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は300~600g程で、目は開いていて、毛も生え揃っている。 早ければ2週間ほどで離乳するが、2年ほどの間は親と一緒に生活している。 雌雄共に3年程で性成熟し、飼育下での寿命は20~25年、野生では15~20年程度と考えられている。 アメリカビーバーは肉や毛皮を目的とした乱獲により、かつては著しく生息数を減らし絶滅が危惧されたが、保護政策などもあり、現在では生息数を回復している。 また、ノルウェーやアルゼンチンからチリにかけてのパタゴニア地方などにも移入されている。 しかし、ヨーロッパに生息するヨーロッパビーバー(C.fiber・同種とすることもある)は、かつてユーラシア大陸に広く分布していたが、近年の生息地域はきわめて限られ、個体数が激減している。 現在ヨーロッパビーバーは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(EN)としてレッドリストに指定されている。 このほか、アメリカビーバーには次の4亜種がいるとされている。 ・C. c. acadicus (New England beaver・米国北東部) ・C. c. canadensis (Canadian beaver・カナダ) ・C. c. carolinensis (Carolina beaver・米国南東部) ・C. c. missouriensis (Missouri River beaver・ミズーリ川流域). ビーバー科の動物へ / このページの先頭へ |
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アメリカビーバー(ビーバー)