アメリカビーバーは北アメリカに広く分布していて、単にビーバーと呼ばれることもある。 齧歯類の中では大型で、川を堰き止めてダムのような巣をつくることがよく知られている。
アメリカビーバーの分布域・生息環境 アメリカビーバーはツンドラ地帯や砂漠地帯を省くカナダからメキシコ北部までの北アメリカに広く分布していて、森林地帯の河川や湖などに生息している。 また、アメリカビーバーは一時個体数が激減した時期あり、地域によっては絶滅してしまったところもあったが、それらの幾つかの地域では再導入されている。 アルゼンチンのパタゴニア地方やフィンランド、ドイツやベルギー、ロシアの一部などにも導入されていて、定着している。 アメリカビーバーの大きさ・形態 アメリカビーバーは齧歯目の中ではカピバラにならぶ大きな動物で、体長70~90cm程で、平均すると20~25kgほどの体重がある。 しかし、歳を重ねた大きいものでは体重が40kg程に成長するものも見られると言われている。 体毛は長く、毛色は茶色や茶褐色などで、耳は小さく、四肢は短い。 カピバラと同様、半水生の生活をしていて、後足には水かきを持っているが、アメリカビーバーはより水の中での生活に適した体をしている。 尾にはほとんど毛がなく、ボートを漕ぐオールのように、広くて平らなうころ状になっている。 水中ではこのオール状の尾を上下に振って推進力を得て、きわめて巧みに泳ぐことができる。 また、アメリカビーバーは後肢だけで立ち上がることもできるが、この時も、尾を使ってバランスを取るようにしている。 一見すると、南アメリカに分布しているヌートリアにも似ているが、アメリカビーバーの方が体が大きく、ヌートリアの尾はネズミのように細いので、離れていても見分けることができる。 しかし、ヌートリアの門歯は大きくてオレンジ色をしているが、アメリカビーバーの門歯もオレンジ色をしていて、生涯の間伸び続ける。 アメリカビーバーの生態・生活 アメリカビーバーは森林地帯の河川や湖などに生息していて、小さな家族群で生活している。 主に夜行性の動物で、夕方から活動し、樹皮や木の枝、葉や根などを食べる。 歯は丈夫で大きく、木の葉や硬い樹皮なども簡単に齧り取ってしまい、直径15cm程の樹木でも、10分程度で齧り倒してしまうと言われている。 また、木の幹や枝を冬期の食料として水底に沈める習性があるとも言われている。 アメリカビーバーは1日の多くを水の中で過ごし、岸などに上がっても水辺から遠く離れることはない。 潜水能力にも優れていて、最大で15分程も潜っていることができると言われているほか、皮下には脂肪を蓄えていて、冷たい水から体温を保つ役目を果たしている。 外敵はコヨーテやクズリ、ボブキャットやオオヤマネコなどで、ピューマやオオカミ、アメリカクロクマやヒグマなどもビーバーを襲うことがあり、外敵は多い。 しかし、アメリカビーバーは体が大きいこともあり、多くは幼獣が狙われ、幼獣はカワウソにも襲われることがある。 驚いたときや危険なときには、尾で水面を叩き警告音を立てるが、水の中では敏捷だが、陸上での動作は鈍い。 ところで、ビーバーは川の流れをせき止めて、棲みかとなるダムをつくる動物としてよく知られている。 この棲みかは、ふつうは川の中にドーム型のものが造られるが、川幅の狭いところでは、川をせき止めたダム状になっているものも見られる。 いずれも床は水面の上にあるが、巣の入口は水面下にあり、天敵の肉食獣などの侵入を防ぐ構造になっている。 また、大きなものでは高さ1.8m、基部の直径が10m程にもなり、内部には家族群で生活できるように幾つかの部屋がつくられている。 棲みかとなる巣は木の枝や泥などでつくられるが、家族群の協力によって修復され、長期の使用にも耐えるようになっている。 中には数世代によって使用・修復が重ねられ、河川の両岸を塞ぎ、長さが数百メートルに及ぶダムとなっているものも知られている。 しかし、大河の岸に暮らすビーバーなどはこのような部屋をつくらず、堤防に穴を掘って生活したり、単独で暮らす雄などはダムなどをつくらないこともある。 また、アメリカビーバーが造るダムは、ダム湖となって水鳥や魚の棲みかともなるが、一方でサケやマスなどの魚の遡上を阻み、産卵環境に影響を及ぼす心配も指摘されている。 アメリカビーバーの繁殖・寿命 アメリカビーバーの繁殖期は地域によって差があり、寒冷地での繁殖期は1~3月頃に見られるが、南部では11~12月頃と言われている。 齧歯類では珍しく、繁殖は一夫一婦で行われ、その関係は生涯に渡って続くとも言われている。 雌の平均した妊娠期間は128日程で、1産1~6子、ふつうは3~4子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は300~600g程で、目は既に開いていて、毛も生え揃っている。 尾を含めた全長は35~40cm程で、生後1日ほどで泳ぐことができるようになる。 数日後には巣から少し出てくるようになり、ひと月後には固形食を食べはじめるようになる。 離乳期間は3ヵ月ほどで、半年もすると自立するが、その後も2年ほどの間は親と一緒に生活している。 やがて独立して自分の巣をもつようになるが、この頃が成熟期で、雌雄共に2~3年程で性成熟する。 アメリカビーバの寿命は長く、飼育下では20~25年、野生でも15~20年程の寿命があると考えられている。 アメリカビーバーの保護状況・その他 アメリカビーバーは肉や毛皮を目的とした乱獲により、かつては著しく生息数を減らし絶滅が危惧されたが、保護政策などもあり、現在では生息数を回復している。 また、ノルウェーやアルゼンチンからチリにかけてのパタゴニア地方などにも移入されている。 一方、ヨーロッパに生息するヨーロッパビーバー(C.fiber・同種とすることもある)は、かつてユーラシア大陸に広く分布していたが、近年の生息地域はきわめて限られ、個体数が激減している。 現在、ヨーロッパビーバーは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(EN)としてレッドリストに指定されている。 このほか、アメリカビーバーには Castor canadensis.canadensis (Canadian beaver) カナダに分布する基亜種 C. c.. acadicus (New England beaver) 米国北東部 C. c. carolinensis (Carolina beaver) 米国南東部 C. c. missouriensis (Missouri River beaver). ミズーリ川流域に分布 の4亜種が認識されていたが、現在では遺伝学的には亜種はいないと考えられている。 しかし、アメリカビーバーは多くの地域で再導入されていて、そのために遺伝的な混合がかなり起こっていて、決定的な遺伝子解析は行われていない。 |
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