フタコブラクダは野生種と家畜種に別けられるが、家畜種としてのフタコブラクダは野生のものよりも体が大きく、移動手段のほか、主に荷物の運搬用に利用されている。 一方、野生のものはモンゴルなどの乾燥地帯で小さな群れをつくって生活しているが、分布域が限られていて、個体数もかなり少なくなっている。
フタコブラクダの分布域・生息環境 フタコブラクダはトルコより東のイランやカスピ海沿岸域、中央アジアからモンゴル高原などに分布しているが、ほとんどは家畜として飼育されている。 野生のフタコブラクダは中央アジアと中国西部に分布しているが、現在の分布域は限られていて、モンゴルと新疆ウイグル自治区のゴビ砂漠やタクラマカン砂漠などに分布している。 野生のものは砂漠やサバンナ、乾燥した草原などに生息していて、少数の群れで生活している。 フタコブラクダの大きさ・特徴 野生のフタコブラクダは体長2.5~3m、体重300~700kg程だが、家畜種は野生ものもよりも体が大きく、体長3.5m、体重が1000kg程に成長するものも見られる。 いずれも雄の方が少し体が大きいが、名前のように、背中のコブがふたつあることがフタコブラクダの特徴になっている。 ヒトコブラクダに比べて四肢は短いが、そのほかの特徴はほとんど同じで、指は二本で蹄が小さく、その代わりに大きなしょ球(足の裏のこぶ)がある。 ひざや胸に「たこ」があることも同じで、まつげが長く、鼻の穴は自由に閉じることができるので、砂漠などでの厳しい生活に適している。 体毛は所謂キャメル色をしているが、くすんだ灰色のようなものも見られる。 また、体毛は長いが、夏には厚い毛を脱ぎ捨てるように短くなる。 フタコブラクダの生態・生活 野生のフタコブラクダは半砂漠地帯やステップ地帯などに生息していて、小さな群れをつくって生活している。 この群れは1頭の雄に率いられた6~20頭程で、水や食料を求めて移動する生活を送っている。 冬には雪の積もる丘の斜面や山などに水を求めて長距離を移動し、水が豊富にある山岳地帯などでは100頭ほどの群れをつくることもある。 食性はヒトコブラクダと同じ草食性で、低木や草類などの植物質のものを食べ、休んでいるときは反芻をしている。 反芻するときには下あごを左右に動かすことなどもヒトコブラクダと同じだが、ヒトコブラクダとは違い、冬季には、フタコブラクダは雪の下を掘ったりして食べ物を探すことが知られている。 水分のほとんどを植物から摂取し、水は長い間飲まずに過ごすことができることは同じで、背中のコブは水の貯蔵とは関係がない。 ふたつのコブは脂肪からできていて、栄養状態が良いと背中にふたつの山があるように立っているが、栄養状態が悪くなると傾くように萎れてしまい、これはヒトコブラクダも同じである。 水があれば一度に60リットル程の水を飲むことができるが、水を節約する為に発汗や尿の排出を抑え、乾燥した糞を排出するなど、フタコブラクダは水分調整をうまくしている。 また、フタコブラクダは泥土に含まれる塩水を飲むことができることが知られているが、濃縮された塩分は尿として排出される。 性質は元来おとなしいが、怒ると胃の内容物を吐きかける習性があることなどもヒトコブラクダと同様である。 外敵はヒョウやオオカミなどだが、フタコブラクダの生息域ではこれらの捕食動物は少ないと考えられている。 また、フタコブラクダは体が大きいこともあり、成獣が襲われることはほとんどなく、一番の外敵は人とも言われている。 一方、家畜種としてのフタコブラクダは移動手段や荷物の運搬用に利用されている。 フタコブラクダは耐久力もあり、荒れた高地や砂漠地帯などでも、150~250kgの荷物を1日に45km程も運ぶことができる。 砂漠地帯での運搬用のほか、毛皮や肉・乳なども利用されるほか、乾燥している糞も燃料として利用される。 フタコブラクダの繁殖・寿命 フタコブラクダの野生での繁殖期は雨季と重なる冬季で、繁殖は一夫多妻で行われる。 この時期の雄は他の雄に対してツバを吐きかけるなど気が荒くなり、群れの中の優位な雄は複数の雌と交配する。 雌の妊娠期間は12~14ヵ月、平均で13ヵ月程で、ふつうは1産1子を3~4月に出産するが、稀に2子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は35~40kg程で、生後数時間ほどで歩けるようになる。 子どもには1年半から2年ほどの授乳期間があるが、飼育下のものは1年以内に離乳することもある。 母親は育児をよく行い、雌雄共に3~5年で性成熟するが、この頃までは母親と一緒に生活している。 フタコブラクダの寿命は長く、野生下での寿命は20~30年、長いものでは40年を超えることが知られている。 一方、飼育下のものも寿命は長いが、35年以上生きるものは少ないと言われている。 フタコブラクダの保護状況・その他 ラクダは現在でも大切な使役動物で、砂漠地帯では特に有益な動物として利用されている。 フタコブラクダはヒトコブラクダと同様、紀元前2,000~1,800年頃には既に家畜化されていたとも言われているが、現在生息しているフタコブラクダのほとんどは家畜種で、野生種のものはモンゴルのアルタイ山脈の麓などに極めて少数が生息するだけになっている。 その為、国際自然保護連合(IUCN)では絶滅危惧種に指定しているが、オオカミによる捕食や狩猟などによる更なる個体数の減少が心配されている。 また、家畜として利用されているフタコブラクダは野生種からのものとされているが、最近の遺伝学的研究では、野生のものと家畜のものは異なる種であることが示唆されている。 この他、フタコブラクダとヒトコブラクダとの間には、繁殖力をもつ交雑種ができるほか、南アメリカにはラマやアルパカなど、ラクダ科に属する動物が生息しているが、南アメリカのものは背中にコブをもっていない。 尚、フタコブラクダの日本への到来はかなり古く、推古天皇の時代、589年の記録があるほか、学名の「C. bactrianus」は家畜種を指し、「C. ferus」は野生種を指すが、いずれも同種とする場合は「C. ferus」となる。 |
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