ヒトコブラクダ

ヒトコブラクダ さんのプロフィール


動物図鑑・ヒトコブラクダ

ヒトコブラクダ

偶蹄目・ラクダ科
学 名 Camelus dromedarius
英 名 Dromedary / One-humped Camel
分布域 アジア南西部からアフリカ北部など
生息環境 砂漠や半砂漠地帯など
体 長 3~3.5m 程度
尾 長 50cm 前後
体 重 雄で400~650kg、雌で300~550kg 程度
IUCNによる保存状況評価 / 野生絶滅種 (EW)

ラクダの仲間は南アメリカにビクーナラマアルパカなどが分布しているが、アジア・アフリカに分布しているものは背中にコブが見られ、ヒトコブラクダとフタコブラクダの2種が知られている。

どちらも砂漠での移動や荷物の運搬用などに現在も利用されている大切な使役動物で「砂漠の船」とも呼ばれているが、ヒトコブラクダは、名前のように背中のコブがひとつだけであることが大きな特徴になっている。
●分布域・生息環境
●大きさ・特徴
●生態・生活
●繁殖・寿命
●保護状況・その他
●写真ページ


ヒトコブラクダの分布域・生息環境
ヒトコブラクダはインド西部からパキスタン、イランを経て北アフリカまで広く分布していて、オーストラリアにも移入分布している。
砂漠や半砂漠地帯のほか、サバンナや草原などにも生息しているが、ヒトコブラクダは長い乾季と短い雨季があるような環境で生活している。

ヒトコブラクダは、現在1400万頭ほど生息していると言われているラクダ類のおよそ90%程も占め、その多くが半野生の状態で家畜化されている。


ヒトコブラクダの大きさ・特徴

ヒトコブラクダはラクダの中ではもっとも体が大きく、雄の肩高は1.8~2.4mもある。
雌は雄よりもひと回りほど体が小さいが、それでも1.7~1.9m程の高さがある。

しかし、雌雄いずれも首は長く、背は盛り上がっていて、名前のように、背中にはひとつのコブがあることが特徴になっている。

このコブは脂肪からできていて、栄養状態が良いと山のように盛り上がっているが、栄養状態が悪くなると小さくなり、体側に傾いたようになる。

四肢は細くて長く、蹄は小さいが、角質化したしょ球(足の裏のこぶ)が大きく、砂地を歩くのに適しているのも特徴になっている。

ひざや胸には「たこ」があり、固い地面に座るのに適していて、これも砂漠の生活に適したようになっている。

砂を防ぐためにまつ毛は長く、鼻の穴は塞ぐことができるほか、唇は厚く、砂漠に生える棘のある植物なども食べることができる。

体毛はいわゆるキャメル色で茶色っぽく、冬期は長く、夏期は短いが、ほとんど白っぽいものや黒色のものも見られる。

また、ラクダは長期間水を飲まなくても過ごすことができるが、ヒトコブラクダは体温を34度から42度近くまで調整する能力があることが知られている。
この能力によって、ラクダは気温が上昇しても汗をかかずに済み、水分を節約することができている。

更に、ほとんどの哺乳類は15%ほどの水分を失うことは致命的なものになるが、ヒトコブラクダは30%を超える水分の喪失にも耐えることができると言われている。


ヒトコブラクダの生態・生活

ヒトコブラクダは砂漠や半砂漠地帯、サバンナなどの乾燥した地域に生息していて、ふつうは家族単位の群れで生活している。

この群れはふつう1頭の雄と複数の雌、その子どもたちからなる2~20頭程だが、雄は単独のものや若い雄同士の群れをつくっていることもある。

日中に活動し、食性は草食性で、草や木の葉、サボテンなどを含めた砂漠に生えるほとんどの植物を食べる。

また、乾燥地域には塩生植物が多いが、ヒトコブラクダは水分の吸収と貯蔵をするために、他の動物に比べると 6~8倍の塩分を必要とすると考えられている。
その為、ヒトコブラクダは塩生植物も多く食べ、摂取する食物の3分の1は塩生植物と言われている。

1日の多くの時間を採餌に費やしているが、胃は四室(数えようによっては三室)に分かれていて、休んでいるときなどは反芻をしている。

水は長期間飲まなくてもよい体のつくりになっているが、ヒトコブラクダは1回に60~100リットル近い水を飲むことができる。
但し、背中のコブには脂肪が入っており、水の貯蔵には関係がない。

性質はおとなしく、現在でも大切な使役動物として利用されているが、ヒトコブラクダは耐久力もあり、100kg程の荷物なら1日に30km程は運ぶことができるほか、フタコブラクダよりも足が速く、人を乗せたままで時速13km程度で長時間移動することができる。
走る速さもかなり早く、時速40~60km程で駆けることもできる。

また、人や荷物を乗せるときには、ウマとは異なり、膝をついて体勢を低くするが、怒った時などは胃の内容物を吐きかけることもある。

外敵はトラオオカミライオンなどで、多くは弱ったものや子どもが襲われる。


ヒトコブラクダの繁殖・寿命

ヒトコブラクダの繁殖期は地域によって異なるが、冬に見られ、雨季の時期と重なっている。
繁殖は一夫多妻で行われるが、この時期の雄は気が荒くなり、しばしば雌をめぐって争う様子が観察される。

また、繁殖期の雄は柔らかい口蓋(口の中の上側の壁)を膨らませて濃いピンク色の袋をつくり、雌を引きつけようとする。
この軟口蓋は舌のようにも見え、口の片側に垂れ下がっている。

雌の妊娠期間は15ヵ月(370~440日)程で、1産1~2子、ふつうは1子を出産する。
生まれたばかりの子どもの体重は35~40kg程で、生まれたその日の内に歩くことができるようになる。

独立するまでには1~2年程度が必要で、雌は3~4年程で性成熟するが、雄は5~6年程で完全に性成熟する。

寿命は長く、飼育下では40~50年程度、半野生下でも寿命は30~40年ほど寿命をもっていると考えられている。

また、ヒトコブラクダはフタコブラクダとの間に繁殖力のある雑種ができるが、コブはひとつである。


ヒトコブラクダの保護状況・その他

ヒトコブラクダは、現在も砂漠での使役のほか、乳や肉、革などが利用される大切な家畜だが、ヒトコブラクダが家畜化された歴史は古く、4000年ほど前(或いは紀元前1300年や紀元前4000年などとも言われている)には、既にアラビア半島やソマリアなどで乳や肉をとるために家畜化されていたとも言われている。

元来の野生種は南アジアからアラビア半島辺りにかけて生息していたと考えられているが、現在生息しているものは全て家畜化されたものか、逃げ出したものが再野生化したもので、真の野性のヒトコブラクダは絶滅してしまっている。

この為、国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価では、野生絶滅種(EW)としてレッドリストに指定していて、50~70万頭程も生息していると言われているオーストラリアの野生ラクダも、移入されて家畜として飼育されていたものが逃げ出したものである。

尚、ヒトコブラクダの日本への到来はフタコブラクダよりもかなり遅く、1821年頃とされているほか、野生のフタコブラクダの生息数はきわめて少なく、IUCNのレッドリストに絶滅危惧種(CR)として指定されている。

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