キバノロは中国などに分布している小型のシカで、ニホンジカに比べるとかなり小さい。 雌雄ともに角をもっていないが、雄の犬歯はよく発達していて、名前のように、牙のようになっている。
キバノロの分布域・生息環境 キバノロは揚子江下流域や江蘇省沿岸部、浙江省の島々や朝鮮半島などに分布している。 河川や湖沼の周辺、湿地帯などを好み、姿を隠せることができるような背の高い葦などが茂るところに多く生息している。 キバノロの大きさ・特徴 キバノロはキョンよりはやや大きなシカで、肩高は45~65cm程あるが、ニホンジカに比べるとかなり小さい。 毛色は、夏は赤褐色で、冬には灰色を帯びる。 下腹部とあごの下は白く、耳は大きくてよく目立つ。 また、前肢よりも後肢がよく発達した体つきをしていて、跳躍力に優れている。 雌雄共に角をもっていないが、犬歯はよく発達していて、これがキバノロの特徴になっている。 特に成獣の雄は犬歯が発達し、牙のようになることから名前が付けられている。 この牙は口の両側から突き出ていて、少し離れていてもよく分かる。 長さは5~8cm程にもなり、外敵に対しての武器になっている。 また、キバノロの雄は縄張り意識が強いが、縄張りに侵入した他の雄との争いなどにも、この牙が用いられる。 この特徴的なキバノロの牙は、シカ類の角が武器として発達する前の形であると考えられていて、キバノロはシカ類の非常に原始的な形であることを示しているとも言われている。 キバノロの生態・生活 キバノロは英名で「Water Deer」と呼ばれるが、河川や湖沼の周辺、湿地帯などを好んで生息している。 揚子江周辺などでは、川岸の葦の密生した低木地帯などで見られ、身を隠すのに都合のよい場所に生息している。 群れをつくることは滅多になく、ふつうは単独かペアで生活している。 特に雄は縄張り意識が強く、縄張りは尿や糞でマーキングされていて、ほかの雄が縄張りに入ってくると激しく攻撃する。 この時の争いは牙を使って行われ、雄にはしばしば争った傷跡が多数残っていると言われている。 一方、雄の縄張り内に入ってくる雌には寛容で、時には数頭の雌が見られることがあるとも言われている。 また、雌は繁殖期以外には特に縄張り意識が見られず、小さな群れをつくっていることもある。 しかし、この雌の群れは緩やかなつながりのもので、危険を感じたりすると、個々に散らばっていく。 キバノロは警戒心が強く、日中にも活動するが、主に夕方や明け方などに活発になる。 草食性で、葦の葉や草類、そのほかの植物を食べるが、時には耕作地で作物を食べることもある。 また、キバノロは泳ぎもうまく、数キロほどの距離を泳いで島へ渡ったりする。 外敵はトラやヒョウ、クマなどで、発達した犬歯は捕食動物に対する強力な武器となるが、ふつうは素早く藪などの中に逃げ込んで身を隠す。 キバノロの繁殖・寿命 キバノロの繁殖期は晩秋から初冬で、11~翌年1月頃にかけて見られる。 繁殖は一夫多妻で、この時期の雄は雌をめぐって激しく争う。 雌の妊娠期間は6~7ヶ月程で、ふつう1産2~3子を出産するが、キバノロの雌は他のシカ類とは異なり、多い時では5~7子を出産する。 生まれたばかりの子どもは体重1kg程度で、出産は普段の行動範囲から離れたところで行われることが多いと言われている。 これは、子どもを捕食者から隠して守る為だと考えられているが、生後数週間ほどの間はその様な場所で育てられ、母親は授乳に時だけ子どものもとを訪れる。 雄は5~6ヵ月、雌は7~8ヵ月程で成熟し、飼育下での寿命は10~12年程度と言われている。 キバノロの保護状況・その他 キバノロは、近年の生息地の開発などによって個体数は減少している。 韓国では、トラやヒョウなどが既に生息していないこともあり、比較的個体数は安定していると考えられているが、中国のものは民間療法などを目的として乱獲されていて、一部の地域では絶滅していると考えられている。 現在、キバノロは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(VU)としてレッドリストに指定されているが、更なる個体数の減少も懸念されている。 尚、キバノロには次の亜種が認識されている。 Hydropotes inermis inermis 中国のに分布する基亜種 H. i. argyropus 朝鮮半島に分布 |
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キバノロ