ボウシテナガサルは、タイ、ラオス、カンボジアの国境が接するボローヴェン高原からダンレック山脈、カーダマム山脈の熱帯林に生息し、他のテナガザルと同様、尾はなく、長い腕をもっている。 毛色には性差があるが、ボウシテナガザルの幼獣の体毛は雌雄ともに白っぽく、雄は成長するにつれて手足の先と顔の周り以外は黒っぽくなり、雌は腹部と頭部のみが黒っぽい他は全体に白色や灰白色などをしている。 ボウシテナガザルはシロテテナガザルによく似ていて、同種とされる場合もあるが、成獣の頭のまわりには鉢巻き状にやや長い白い毛がある。 鳴き声もシロテテナガザルとは異なっていて、「ア・オー、ア・オー」というような声を繰り返し、時々のど袋を使って「ポクポク」というような声をたてる。 また、ボウシテナガザルの頭頂部は帽子をかぶったように見えることからこの名前がつけられているが、コンカラーテナガザルの雌も全身が淡い黄色で、頭頂部は黒くて帽子をかぶったように見えることから「ボウシテナガザル」と呼んだりするが、両種は共に別種である。 ボウシテナガサルは常緑樹からなる森林地帯や熱帯落葉モンスーン林などに生息していて、標高1500m程のところにも見られる。 雌雄とその子どもからなる小数の家族群で生活し、主に果実や木の葉のほか、昆虫や小鳥、小鳥の卵などの動物質も食べる。 樹冠近くで昼間に活動し、樹上では他のテナガザルと同様、長い腕を利用して、枝から枝へ素早く移動する。 ブラキエーションと呼ばれる、長い腕と体の弾みを利用した運動で、枝と枝の間を9m以上も移動することが出来ると言われている。 夜は樹上で眠るが、二晩続けて同じ木で休むことはなく、毎晩違った木を選ぶ習性がある。 また、地上では二足歩行するが、この時はバランスを取る為に、両手を頭の上に広げるようにしている。 行動範囲は、タイの保護区では0.36k㎡ほどで、この内のいくらかの部分は他の群れと重なっている。 決まった繁殖期はなく、雌は27~30日程の間隔で発情する。 一夫一婦で、妊娠期間6~7ヵ月半の後、ふつうは1産1子を出産する。 授乳は1年、長いもので2年程は授乳され、子どもはこの頃までは母親と一緒に生活している。 その後は独立し、雄で5~8年、雌では7年半程で性成熟すると言われている。 飼育下での寿命は30年を超えるが、野生ではそれよりも短い。 テナガザルの仲間は、樹上生活をしているのでヒョウなどの肉食動物に襲われることは少ないが、それでも時にはウンピョウや大型のヘビに襲われることがある。 ボウシテナガザルはかつてタイ南部からカンボジアのメコン川下流の西岸などにも見られたが、近年の森林伐採や開発などによって生息数は減少している。 現在、ボウシテナガザルは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(EN)としてレッドリストに指定されているが、更なる保護が求められている。 テナガザル科の動物へ / このページの先頭へ |
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ボウシテナガザル