テナガザルは東南アジアに分布している類人猿の仲間であるが、ゴリラやチンパンジーなどの仲間に比べると体はかなり小さく、尾はあっても痕跡程度で、前足が著しく長いのが特徴になっている。 また、掌は平たく、前足の親指は短くて、ほかの四本は長くなっている。 この手の構造は、物をつかんだり、木の枝につかまったりするのに大変役に立っている。 シロテテナガザルはミャンマー東部、ラオス北西部、タイ、マレー半島、インドネシア・スマトラ島北西部などの熱帯雨林に生息し、ほかのテナガザルと同様、ほとんど樹上生活をしている。 毛色は生息域や固体によって異なり、黒色、黒褐色、黄褐色、クリーム色、茶色などと変化があるが、シロテテナガザルは、いずれも顔のまわりと手足の先が白っぽい。 熱帯林の樹冠部から中層辺りで、雌雄とその子どもたちからなる家族単位で生活している。 活動は昼間に行い、主に果実や若葉、花や茎などの植物質を食べるが、昆虫や鳥の卵なども食べる。 胸の筋肉はよく発達していて、腕の力や握力も強く、樹上では長い腕を使って枝から枝へと敏捷に移動する。 跳躍力にもすぐれていて、ひと跳びで10m程も跳ぶことができると言われている。 地上に降りてくることはほとんどないが、地上では両腕を広げてバランスをとるようにして歩き、後ろ足だけで起立し、四足で歩くことはない。 また、歩く時にはかなりの速度を出すこともある。 シロテテナガザルは樹上生活をしているので、ヒョウやウンピョウ、ゴールデンキャットなどの肉食動物に襲われることは滅多にないが、危険が迫ると大きな叫び声をあげて仲間に知らせる。 また、テナガザルの仲間はテリトリー意識が強い動物で、ほかの群れが近づいたときなども、大きな声をあげて仲間に伝えると共に相手を威嚇する。 朝夕にもかなり大きな声で鳴くが、これも示威行動のひとつで、群れのテリトリーを主張してると考えられている。 また、テナガザルの仲間は水を嫌うが、シロテテナガザルも水の中に入るようなことはない。 幼獣のうちはおとなしいが、シロテテナガザルは成獣になるにつれて神経質になるので危険である。 雌雄共に犬歯が鋭いので、噛まれた時は大きな傷を受ける場合がある。 一夫一婦で、繁殖は3月頃に多く見られるが、決まった繁殖期は知られていない。 妊娠期間は7ヵ月程で、1産1~2子、ふつうは1子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は300~400g程で、体はたいがい白っぽい。 離乳期間は2年以内と言われていて、雌雄共に8年程で完全に性成熟する。 野生での寿命は25年、飼育下では30~40年程度と考えられているが、飼育下では50年近いものも知られている。 シロテテナガザルはテナガザルの中ではもっとも一般的な種とされているが、近年の森林伐採や開発などによって生息地が減少、或いは分断されたりして、生息数が減少している。 以前はタイやミャンマーなどと接する中国南部の国境地域やカンボジアなどにも見られたが、これらの地域では既に絶滅していると言われている。 現在、シロテテナガザルは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(EN)としてレッドリストにも指定されているが、更なる保護も求められている。 また、シロテテナガザルはフクロテナガザルなどと生息域が重なっていて競合しているが、フクロテナガザルも生息数が減少していて、絶滅危惧種(EN)としてIUCNのレッドリストに指定されている。 テナガザル科の動物へ / このページの先頭へ |
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シロテテナガザル