キツネザルの仲間は、マダガスカル島とその周辺の島にしか分布していないが、鼻面が長く、一見してキツネに似た感じがすることから、そのような名前がつけられている。 ワオキツネザルはマダガスカル島南部の、あまり深くない森林や森林近くの乾燥した地域などに生息していて、ほかのキツネザルよりも分布域は広い。 また、ふつうは低地や丘陵地帯で見られるが、一部のものは標高2500mを超える岩の多い高地にも生息していて、キツネザルの中でも、もっとも多様な環境に対応している。 毛色は、背面は灰色や灰褐色で、目の周りは黒っぽく、顔や腹面は白っぽい。 耳は大きくて白い毛が生えていて、目の色は金色で、鼻には毛がなくて黒い色をしている。 四肢には5本の指があり、後肢の第2指は鉤爪をしているが、他はすべて平爪で、他のキツネザルと同様、後肢は前肢よりも長い。 尾は体長よりも長く、フサフサとした毛に覆われているが、この尾は黒と白の輪の模様になっているのが特徴で、ほかのキツネザルとの見分けが容易にできる。 また、尾の先は黒色で終わるが、ワオキツネザルの名前は、この特徴的な尾(輪尾)からつけられている。 昼間に行動し、同数程度の雌雄とその子どもからなる5~20頭ほどの群れで暮らし、社会性が強い生活をおくっている。 この群れは母子を中心とした母系集団で、群れの中での順位は、雌の方が雄よりも優位になっている。 また、同性間でも優劣が見られ、特に雌の間では順位がはっきりとしている。 一方、雄の間の順位はそれほど明確でなく、雄は3~5年程で別の群れに移っていく。 群れの数が多すぎるようになったり、食料が不足したりすると、群れは分裂して、バランスをとるようにしている。 樹上で、主に果実や木の葉、花などを採食するが、昆虫やクモ、カメレオンなどの小動物も捕らえ、夜間は樹の上で数頭程がかたまって眠る。 また、主な食べ物は生息地や季節などによって異なるが、ワオキツネザルは土を食べることが知られている。 これはナトリウムの摂取量を増やすためだと考えられていて、土壌に含まれている塩分を摂取していると言われている。 行動範囲は食糧事情などによって変化するが、食糧の豊富なところでは0.06~0.08平方km、そうでないところでは0.23平方km程度と考えられている。 また、群れ同士の縄張りが重なったりした場合、これを巡って争いがある。 ワオキツネザルは元来は樹上性で、樹の上での動きは敏捷で、活発に動き回る。 しかし、キツネザルの中では地上で生活する時間が一番長く、より地上性が強い。 遠くへ移動するときなどは、樹間を移動するよりも地上に降りることが多く、歩く時は長い尾を高く上げて移動する。 地上では岩の多い乾いたところを歩きまわるが、跳躍力があるため、歩くというよりも、幾分跳ねるような感じで移動する。 また、ワオキツネザルは二足歩行することも知られているが、この時も、少し体を横に向けたような格好で、ピョンピョンと飛び跳ねて移動する。 水を飲むときには、イヌのように舌でピチャピチャと舐めるようにするほか、しばしば太陽に向かって、四肢を広げて日光浴する様子が見られる。 これは体温調整をするためで、寒い季節などにはよく行われ、その様子は動物園などでもよく見かけられる。 また、ワオキツネザルの前足の手首には臭いを出す特殊な分泌腺があり、この分泌液を樹木のほか、尾などにこすり付ける習性がある。 これは、この尾を再び木の枝などにこすり付けてマーキングし、縄張りを示すためであると考えられている。 尾に臭いをこすりつけた後、尾を頭上まで上げて左右に振りかざしたりする様子も見られるが、これも臭いを周囲に撒き散らして、縄張りの主張や群れの中での順位などを示す為だと言われている。 仲間同士は臭いや鳴き声などでコミュニケーションをとっているが、鳴き声は大きく、1km先にも聞こえるほど大きい。 一夫多妻で、繁殖期は4月中旬から6月にかけて見られる。 雌は4~4ヵ月半程の妊娠期間の後、1産1~2子、ふつうは1子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は50~80g程度で、生後2週間ほどの間は母親の腹にくっついている。 しばらく成長すると、子どもは親の背中に乗って移動するようになる。 生後2ヶ月頃から固形食を食べ始めるが、5ヶ月程は授乳期間があり、この頃までは、子どもは母親の背中にしがみついて育てられる。 また、子どもは、厳しい環境に加え、外敵に捕食されるなどして、生まれたその年に亡くなるものが多い。 生後1年以内の死亡率は30~50%に達すると言われていて、完全な成獣に達するのは30%程度とも言われている。 雌は20ヵ月、雄は30ヵ月程で性成熟し、野生での寿命は15~16年程度、飼育下での寿命は20年程度と言われているが、飼育下での寿命は長く、中には27年を超えたものも報告されている。 外敵にはフォッサのほか、フクロウやタカなどの猛禽類が挙げられるが、地上にいるときにはイヌなどに襲われることもある。 ワオキツネザルは他のキツネザルよりも分布域が広く、多様な環境にも対応しているが、近年では、森林の伐採や開発などによって生息地が減少し、個体数も減少している。 これまで、国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価では準絶滅危惧種とされていたが、考えられていたよりも個体数の減少がはるかに深刻で、現在では絶滅危惧種(EN)としてレッドリストに指定される状況になっている。 マダガスカルでは保護地域などの政策もとられているが、木材需要の増加に伴う森林の減少なども止まらず、更なる保護が求められている。 キツネザル科の動物へ / このページの先頭へ |
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ワオキツネザル