動物図鑑・ブタオザル

ブタオザル

ブタオザルさんのプロフィール


動物図鑑・ブタオザル
動物図鑑・ブタオザル 1動物図鑑・ブタオザル 2動物図鑑・ブタオザル 3動物図鑑・ブタオザル 4
和 名 ブタオザル (ヤシザル、ココナツモンキー)
分 類 霊長目・オナガザル科
学 名 Macaca nemestrina/M. nemestrina/M. pagensis/M. siberu
英 名 Pig-tailed Macaque
分布域 バングラデシュからインドシナ、インドネシアなど
生息環境 森林地帯など
体 長 雄で50~60cm、雌で35~55cm 程度
尾 長 雄で16~27cm、雌で13~25cm 程度
体 重 雄で5~15kg、雌で4~11kg 程度
IUCNによる保存状況評価 / 絶滅危惧種
ブタオザルは東南アジアなどに分布しているオナガザルの仲間で、幾つかの種に別けられている。

種や地域によって体格や毛色などに多少の変化があるが、いずれの尾も、ブタの尾の様に見えるのが特徴になっている。
●分布域・生息環境
●大きさ・特徴
●生態・生活
●繁殖・寿命
●保護状況・その他


ブタオザルの分布域・生息環境
ブタオザルの仲間はバングラデシュ東部からインド北東部などを経て、中国南部やミャンマーからベトナムに至るインドシナやマレー半島、インドネシアのボルネオ島やスマトラ島などの東南アジアに広く分布している。

低地から標高2000m辺りまでの森林地帯に生息していて、主に熱帯雨林や湿地林などで見られる。
二次林や海岸近くの森林などにも生息していて、ココナッツやヤシ畑などの耕作地で見られることもある。


ブタオザルの大きさ・特徴

ブタオザルは、以前は一種・Macaca nemestrinaと考えられていて、幾つかの亜種に別けられていたが、現在はそれぞれが独立種とされている。

その為、「ブタオザル」はそれらの総称として用いられているが、ブタオザルは次のように分類されている。

・Macaca leonina (Northern pig-tailed macaque、キタブタオザル)
バングラデシュからインド、タイやカンボジア、ラオスやミャンマー、ベトナム、中国の一部などに分布

Macaca nemestrina (Southern pig-tailed Macaque、ミナミブタオザル)
ブルネイやインドネシア、マレーシアやタイなどに分布

・Macaca pagensis (Pagai Island macaque)
インドネシア・スマトラ島西岸沖のムンタワイ諸島の固有種

・Macaca siberu (Siberut macaque)
スマトラ島西岸沖のシベルト島に固有

ブタオザルは、いずれも尾は短く、ほとんど毛が生えていないか、裸出している。
その尾の様子がブタの尾に似ていることが特徴で、「ブタオ」の名前にもなっているが、尾の長さは、雄で16~27cm、雌で13~25cm程の長さがある。

種や地域によって体格などには差があるが、平均するとニホンザルと同じほどの大きさがあり、雄の体長は50~58cm、体重10~14kg程度、雌は体長45~55cm、体重4.5~11kg程度で、体は雄の方がやや大きい。

雄は犬歯も大きく、平均12cm程の長さがあるが、雌は7cm程の長さしかない。

雌雄ともに目の上の眉の部分は突き出ていて、四肢は比較的長くて、それぞれに5本の指がある。
爪はすべて平爪で、親指は他の指と対向していて、物をつかむことができるようになっている。

また、ブタオザルにはニホンザルなどのように頬袋があり、食べ物を一時のあいだ蓄えておくことができる。

毛色は褐色や黄褐色、赤褐色などで、腹側は明るいクリーム色のような淡色で白っぽい色をしている。

頭頂部には短い暗褐色や黒色の毛があり、顔のまわりや首、胸辺りの毛などは長くなっていて、雄ではよく目立つ。

また、北方に分布しているブタオザルは比較的毛が長く、体もやや大きいが、南方のものは顔や耳、尾には毛が生えておらず、体も小さい傾向がある。


ブタオザルの生態・生活

ブタオザルは熱帯雨林や沼地などがある湿った森林地帯などに生息していて、低地から標高2000m辺りまで見られる。

時には80頭ほどの群れになることがあるが、多くは15~40頭ほどの群れをつくって生活している。

群れは複数の雌雄とその子どもたちから構成されているが、ブタオザルの雌は生まれた群れに留まることから、この群れは母系とも言え、雌の絆が強い社会をつくっている。

行動範囲は食糧事情や群れの大きさなどによって幅があるが、概ね0.6~8平方kmほどと考えられている。

行動範囲は他の群れと重なっていることが多いが、ブタオザルは特に縄張りを主張するようなことはないと言われている。
しかし、食糧事情などによっては群れ同士が争うこともある。

昼間に活動し、マンゴーやパイナップルなどの果実類を中心に、木の葉や木の芽、キノコ、穀類など、主に植物質のものを好んで食べ、時には果樹園の作物を食べることもある。
また、雑食性で、昆虫類のほか、雛鳥や鳥の卵、カニなども食べる。

ブタオザルは樹上生活と地上生活を半々ほどで営んでいるが、採餌は樹上で行われることが多く、採餌時には2~数頭ほどのグループに分かれて行われる。

夜間は高い木の上で休むが、寝床は最後に採餌した場所から近い木を選ぶと言われている。
これは、移動距離を短くして外敵から身を守るためや、翌日の採餌を効率よく行うためと考えられている。

ブタオザルは比較的温順な性質なので、マレー地方などでは飼い慣らして、ヤシの木などの高い木に上らせて、ヤシやココナツの実を落とさせるようにしている。
その為、別名・ヤシザルやココナツモンキーなどと呼ばれることもある。

ただ、ヤシの実などを獲らせる為に木に登らせるときには、ベルトを巻きロープなどをつけているが、成熟した雄はがっしりとして力も強くなるので、この目的で飼いならすのは雌か若い雄に限られている。

また、ブタオザルは水に入ることを厭わず、泳ぎもうまい。

外敵はトラヒョウウンピョウ、大型のアミメニシキヘビなどだが、一番の外敵は人間で、近年の森林の伐採や開発などによって生息地が減少しているほか、食用としての狩猟もブタオザルの脅威になっている。


ブタオザルの繁殖・寿命

ブタオザルには決まった繁殖期が見られず、一年を通して繁殖する。
繁殖は一夫多妻で行われ、雌も複数の雄と交尾するが、優位な雄はしばしば劣位や若い雄を追い払う。

雌の妊娠期間は162~186日程で、ふつうは1産1子を出産するが、稀に2子を出産する。

生まれたばかりの子どもの体重は400~500g程で、毛色は黒い色をしているが、生後3ヶ月頃から親と同じような色になりはじめる。

育児は雌によって行われ、子どもは生後1ヶ月ほどの間は母親にしがみついているが、4~5ヶ月ほどで離乳する。
その後も8~12ヵ月程の間は親と一緒に生活しているが、子どもは1年を過ぎた頃には独立した生活をするようになる。

雌は3~3年半、雄は4~4年半程で性成熟し、雌は成熟してもしばらくの間は出生した群れの中に留まっている。
一方、雄は成熟する頃か、遅くても5~6歳になるまでには出世した群れを離れ、単独で行動するか、他の群れの中に入っていく。

ブタオザルの野生での寿命は20~25年、飼育下では30年前後と言われているが、35年を超えるものも知られている。


ブタオザルの保護状況・その他

近年、ブタオザルの生息数は減少していて、いずれの種も国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種としてレッドリストに指定されている。

・Macaca leonina (Northern pig-tailed macaque、キタブタオザル)
絶滅危惧種 VU

・M. nemestrina (Southern pig-tailed Macaque、ミナミブタオザル)
絶滅危惧種 VU

・M. pagensis (Pagai Island macaque)
絶滅危惧種 CR

・M. siberu (Siberut macaque)
絶滅危惧種 EN

主な原因は開発や森林伐採などによる生息地の減少だが、ブタオザルは食用などを目的した狩猟や医学の研究動物としても捕獲されていて、それらも大きな脅威になっている。

森林が耕作地などに置き換わったところでは、トウモロコシやパパイヤなどの作物を食べることから、害獣として駆除されることがあるほか、飼い犬による被害も指摘されている。

特に、ムンタワイ諸島の固有種とされているM. pagensisは個体数が少なく、もっとも絶滅の恐れがある絶滅危惧IA類(CR)に指定されている。

このほか、キタブタオザルとミナミブタオザルとの間には明確な境界がなく、タイ南部の一部や近隣のいくつかの島嶼部では両種の交雑が観察されている。

●オナガザル科の動物へ
●このページの先頭へ
魚類図鑑
昆虫図鑑
鉱物図鑑
星座図鑑
百人一首の風景
百人一首の風景








Private Zoo Gardenは、国内の動物園で会える動物たちを紹介している、インターネット動物園です。
今後とも園内の充実を図っていく予定ですので、動物図鑑や写真集などとして、是非利用してください。
このページの先頭へ