ニホンザルは、キツネやタヌキ、シカやイノシシなどと共に、国内では馴染みの深い動物で、本州、四国、九州に広く分布している。 中部・近畿・中国・九州地方に多く生息すると言われているほか、国内では古くから民話などにも登場する身近な動物としてもよく知られている。 また、ニホンザルは北方に生息する数少ないサルで、青森県下北半島はサル類が生息する北限としてもよく知られている。 サルの仲間はふつう熱帯域や温帯域に分布しているので、特に積雪地域に生息しているニホンザルは霊長類としては珍しい分布域をもっていると言え、英名では「Snow monkey」とも呼ばれている。 体は雄の方が大きく、犬歯も鋭いが、雌雄共に体つきはがっしりとしている。 顔はに毛がなくピンク色や赤っぽい色をしていて、若いものは白っぽいが、成熟するにつれて赤くなる。 尻も裸出していて赤っぽく、尾は短い。 四肢には5本の指があり、いずれも平爪をしている。 親指と他の指とは向かい合っていて、物を握ったりできるほか、頬には頬袋があり、食物を一時の間蓄えておくことができる。 毛は長く、毛色はふつう暗褐色や褐色、赤褐色などで、腹面は淡く、灰色や白っぽい色をしている。 また、毛色や体格は生息地によって差異があるが、一般に北のものほど体が大きく、毛色は淡い感じがし、毛も長くて密な傾向にある。 インドからベトナム辺りにかけて分布しているアカゲザルとはよく似た感じがするが、アカゲザルは尾が長いので、遠くからでも見分けることができる。 ニホンザルは常緑広葉樹林や落葉広葉樹林などの山林に生息し、普通は20~80頭程の群れをつくって生活している。 稀に単独で生活しているものも見られるが、群れの数は更に多くなることもあり、餌付けされた大分県高崎山の群れは1,000頭を超えると言われている。 海岸域の低地から標高1800m程のところに多く見られるが、標高3,000mを超える日本アルプスの高山地帯にも姿を見せるほか、人里近くや耕作地などにも姿を現す。 昼間に行動し、群れで10~20k㎡程度の範囲を行動圏にして、食べ物などを探して移動する生活をしている。 行動範囲は季節や食糧事情などによって変化し、ふつうは冬の方が夏に比べて広くなるが、北方のものは厳しい積雪時などは0.1k㎡程度に制限されてしまうと言われている。 ニホンザルは秩序ある社会構造をつくっているとされているが、群れはその大きさによって、ふつう1頭から複数の成獣の雄によって率いられている。 リーダーとなる雄は群れ全体を率いているが、雌とその子どもたちは群れの中でグループをつくり、若い雄などもグループをつくっている。 しかし、ニホンザルの群れは順位や階級があるとされているが、一般に考えられているほど厳しいものではなく、緩やかな仲間意識のようなものから形成されているとも言われている。 半樹上性で、木の上では敏捷に動き回るが、地上でもよく活動し、歩く時は四肢歩行する。 また、跳躍力にも優れ、泳ぎもうまい。 夜は樹の上で互いに抱き合ったりして休み、特定の巣をもっていない。 子育ての時も子どもは母親にしがみついて移動し、巣をつくることはない。 また、山の断崖近くで休む時などは、岩棚などで眠ることもあり、休む場所は毎日変わる。 主に果実や木の実、木の芽や花、キノコなどの植物質のものを食べるが、地域や季節によってさまざまなものを食べ、昆虫や鳥の卵、カエルやトカゲなどのほか、魚を食べることも知られている。 下北半島のものは、食物が少ない冬期には樹皮や海藻、貝類なども食べるが、観光地などに生息していて人に慣れているものは、人が食べている弁当なども素早く取って食べてしまう。 また、最近の研究によって、ニホンザルは甘味に敏感で、人の10倍ほども甘さを感じる感度が高いのではないかと報告されている。 人の場合は、ショ糖や果糖などは甘いと感じやすいが、でんぷんが分解してできる麦芽糖では、甘さを感じにくい。 しかし、ニホンザルは麦芽糖に対しても、ショ糖や果糖などと同じように甘味を感じることが実験によって確認され、人よりも甘味に対する感度が高いことが示された。 ニホンザルがよく食べる木の葉などにはでんぷん質が多く含まれていて、これらに対しても甘いと感じていると推量されている。 ところで、ニホンザルは寒い地方のものに限らず、寒冷期には温泉に浸かって体を温める姿が見られるが、この行動はサル類の中では特異なものとされている。 また、ニホンザルは芸を覚えるなどの学習能力があることもよく知られているが、サツマイモを水で洗って食べたり、人の行動を見て、自動販売機に木の葉などを入れてジュースを取り出そうとする様子なども観察されている。 繁殖期は9~3月頃にかけて見られ、地域によって差がある。 妊娠期間は157~188日程で、1産1~2子、ふつうは1子を出産すが、ニホンザルには決まった繁殖形態はなく、雌雄共に複数のものと交尾が行われる。 生まれたばかりの子どもの体重は400~600g程度で、離乳期間は早ければ6~8ヵ月、遅くても1~1年半ほどで完全に離乳する。 雌は3年半、雄は4年半程で性成熟し、雌はそのまま群れの中に留まっているが、雄はやがて群れを離れて別の群れの中に入っていく。 野生での寿命は25~30年程度とされているが、飼育下のものでは34年を超えた例が知られている。 子どもはワシなどの猛禽類に襲われることがあるが、国内にはヒョウなどの外敵が見当たらず、かつての一番の外敵であったニホンオオカミは既に絶滅していることもあって、人が一番の外敵になっている。 ニホンザルは農作物に被害を与えたりする他、近年の森林開発などによって、人の住む地域と接するような場所では人に害を与えるようなこともあり、時に害獣として駆除されることもある。 一方、ニホンザルはアカゲザルやカニクイザル、タイワンザルなどと近縁とされているが、人為的に移入されたアカゲザルやタイワンザルとの交雑も懸念されているほか、全体としては生息地の減少によって各地のニホンザルの生息数は減少傾向にある。 尚、ニホンザルの分布する南限は鹿児島県で、屋久島には亜種のヤクニホンザル(ヤクザル・ヤクシマザル・ヤクシマニホンザル/ M. f. yakui)が生息していて、これは本州のものに比べて、体はやや小さい。 また、ニホンザルが生息する宮崎県の幸島や大分県高崎山、岡山県臥牛山、大阪府の箕面山、千葉県高宕山、下北半島北西部および南西部などの生息地は国の天然記念物に指定されている。 *写真右下2枚は、ヤクニホンザル オナガザル科の動物へ / このページの先頭へ |
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ニホンザル