タヌキは、国内ではニホンジカなどと共に馴染みのある動物としてよく知られているが、国外ではシベリア東部から朝鮮半島、中国東部のほか、ベトナム北部などにも分布している。 体つきは、ほかのイヌ科のものに比べてずんぐりとしていて、尾は太く、耳も丸くて小さい。 前肢に5本、後肢には4本の指があり、指行性で、歩くときは爪先で歩く。 毛色は黄褐色や灰色を帯びた褐色などをしているが、稀に全身が真っ白い固体も見られる。 毛は長く、背中や肩、尾には黒い差し毛が見られ、冬毛は長くなり、晩秋には体重も増える。 四肢は黒褐色で、目のまわりも黒く、一見するとアライグマに似た感じがする。 実際、アライグマともよく間違われるが、タヌキの尾には、アライグマに見られるような輪はないので、すぐに見分けることができる。 主として夜行性で、昼間は木の洞や岩穴などで休んでいるが、時にアナグマやキツネの巣穴などに入っていることもある。 平地から山地の森林地帯や二次林、草原などに生息しているが、湿地帯など、水辺の近くでも多く見られる。 また、タヌキは環境にもよく適応していて、住宅地などにも現れるほか、標高3000m程の高地にも姿を現す。 普通はつがいか数頭の家族単位で生活しているが、若いものなどは単独でいるものも見られる。 平均的な行動範囲は3.4k㎡程度と言われているが、生息環境や食糧事情などによって大きく変わり、0.25~20k㎡程度の幅があると考えられている。 地域によっては行動範囲が重なっていることもあるが、タヌキは特に縄張りを主張することはない。 しかし、糞は決まった場所でする習性があり、「タヌキのため糞」などと言われている。 この場所は行動範囲の中にいくつか設けられているが、互いの行動範囲が重なっているところでは複数のものが使用するため、高さも20cm程になっているものも見られる。 この「ため糞」の習性は、行動範囲を共有する互いのコミュニケーションをとるために役立っていると考えられている。 食性は雑食性で、小型の囓歯類やカエル、ヘビ、トカゲ、魚、カニ、鳥などのほか、昆虫や果実、球根など、タヌキは何でも食べる。 イヌ科の中では木登りもうまく、冬眠をすることはないが、寒い地方のものは冬に穴ごもりすることもあり、秋には体重が50%程も増えるものもいる。 性質はおとなしいというよりは、むしろ臆病で、猟師が撃った銃声の音に驚いて気を失ったりする。 その後、気を取り戻して逃げ去ることから、死んだふりや寝たふりをすることを「タヌキ寝入り」と言っているが、このような擬死はアナグマなどでも見られる。 ところで、タヌキはアナグマともよく間違われるが、タヌキは指行性だが、アナグマはイタチ科に属していて、蹠行性で、歩く時は足の裏を全部つけて歩く。 また、タヌキの毛は上質で筆などにも用いられるが、アナグマのものはそれより劣っている。 しかし、国内では、タヌキのことをムジナと呼ぶこともあるが、地方によってはアナグマのことをムジナと呼ぶので、よく混同される。 また、俗に言う「タヌキ汁」とは、普通はアナグマの肉のことで、タヌキの肉は非常に獣くさい。 繁殖期は1~4月頃に見られ、妊娠期間59~64日程で、1産1~19子、普通は5~7子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は60~115g程で、ほとんどは黒っぽい。 目は10日程で開き、30~40日程の授乳期間がある。 子ども4~5ヵ月程で独立し、雌雄共に9~11ヵ月程で性成熟する。 飼育下での寿命は10年を超え、長いものでは14年のものも知られているが、、野生での寿命はそれよりも短く、6~8年程度と言われている。 また、タヌキは一夫一婦と言われているが、一夫多妻であることも報告されていて、飼育下では、1頭の雄が4~5頭の雌と交配することが観察されている。 外敵はオオカミやオオヤマネコなどのほか、大型の猛禽類に襲われることもある。 尚、タヌキは、現在次の5亜種が確認されている。 ・Nyctereutes procyonoides procyonoides タイリクタヌキ(ビンエツタヌキ) / 中国東部やベトナム北部などに分布 ・N. p. koreensis コウライタヌキ / 朝鮮半島に分布 ・N. p. orestes ウンナンタヌキ / 中国雲南省に分布 ・N. p. ussuriensis ウスリータヌキ / ロシアのウスリー地方やアムール地域、中国東北部など ・N. p. viverrinus ニホンタヌキ / 日本国内 このほか、アムール川流域に分布するN. p. amurensis、ロシアに分布するN. p. kalininensis(カリーニンタヌキ)、中国ヤンツー渓谷のN. p. sinensis、中国南東部のN. p. stegmanni などを別亜種とする場合もあるが、現在はN. p. procyonoides(タイリクタヌキ)と同種と考えられている。 また、国内のものも、北海道に分布するエゾタヌキ(N. p. albus)と、本州や四国、九州などに分布しているホンドタヌキ(N. p. viverrinus)とに別けられることがあるが、いずれも同種(N. p. viverrinus) と考えられ、ニホンタヌキと呼ばれている。 また、タヌキは元来北東アジアに分布しているが、毛皮を目的として旧ソ連に移入されたものが野生化し、その後東ヨーロッパに広がり、近年ではイタリア、フランスなどでも目撃されている。 右下2枚の写真は、白色固体。 イヌ科の動物へ / このページの先頭へ |
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タヌキ