ニホンタヌキは、シベリア東部から朝鮮半島、中国東部やベトナム北部など、東アジアに分布しているタヌキの日本産亜種で、別名・ムジナなどとも呼ばれている。 北海道から九州まで、国内に広く分布していて、国内ではニホンジカやホンドギツネなど共に、馴染みの深い動物としてよく知られている。 イヌ科の中ではずんぐりとした体つきで、四肢は短くて、尾はフサフサとしていて太い。 耳は小さくて丸く、吻は短くてとがった感じがする。 前肢に5本、後肢に4本の指があり、歩くときは指行性で、つま先で歩く。 毛は長く、下毛は密生している。 毛色は黄褐色や灰褐色のような色合いで、南に生息しているものは赤みが強いと言われている。 また、背中や肩、尾などには黒いさし毛が見られ、目の周りは黒っぽく、四肢も黒っぽい色をしている。 ニホンタヌキはアライグマとよく間違われるが、ニホンタヌキの尾には、アライグマに見られるような輪はないので、すぐに見分けることができる。 また、アライグマは北米などに分布している外来種なので、元来国内には自然分布していない。 アナグマとも間違われることがあるが、アナグマはイタチ科に属していて、蹠行性で、歩く時は足の裏を全部つけて歩くほか、尾もニホンタヌキのようにフサフサとはしておらず、四肢は短く、爪も長い。 ニホンタヌキは平地から山地にかけての藪や森林地帯などに生息しているが、人里に近い、いわゆる里山と言われるところで多く見られる。 しかし、市街地の近くに姿を現したり、湿地や標高2000mを超える高地、山や森林が近くにある海岸にも姿を見せるなど、さまざまな環境に適応している。 また、主として夜行性で、昼間は休んでいることが多いが、日中もしばしば活動する。 普段は雌雄の番や、その子どもたちからなる家族群で生活していて、多くは5~6頭の群れで見られるが、独立して間もないものなどは、単独で生活したりしている。 ニホンタヌキの行動範囲は詳しくわかっていないが、タヌキの平均的な行動範囲は3.4k㎡程度と言われている。 しかし、生息環境や食糧事情などによって大きく変わり、0.25~20k㎡程度の幅があると考えられていて、ニホンタヌキの行動範囲も生息地の条件によって大きな幅があると言える。 また、地域によっては互いの行動範囲が重なっていることもあるが、タヌキは特に縄張りを主張することはない。 これも同様で、ニホンタヌキも同地域で複数のものが採餌しても、特に争いが起こることはない。 雑食性で、ネズミやカエル、カニやザリガニ、鳥や鳥の卵、魚や貝類、昆虫やヘビなどの爬虫類などの動物質のほか、果実や木の実、球根など、さまざまなものを食べる。 また、農作物や生ごみのほか、時に家禽などを襲うこともある。 巣は地面に穴を掘ってつくることもあるが、木の洞や岩穴なども利用する。 また、使わなくなったキツネやアナグマの巣穴などを利用することもあるほか、干草の中や人家や寺社の床下、物置にいるようなこともある。 駆けるのは速くはないが、ニホンタヌキはイヌ科の中では泳ぎがうまい。 木登りも巧みで、木に登って果実や木の実を取ったりもすることができるほか、思っている以上に敏捷で、跳び上がってとらえることができる高さなら、飛んでいる蝉も口にくわえてとらえてしまう。 性質は、おとなしいと言うよりも臆病で、驚いたりすると立ちすくんだりしてしまう。 擬死(狸寝入り)することもよく知られているが、これは自らの意志で行うのではなく、一時的な失神状態で、しばらくすると正気を取り戻して逃げで行く。 また、擬死はニホンタヌキだけでなく、ニホンアナグマなどでも見られる。 俗に「ため糞」と呼ばれるが、糞は決まった場所でする習性があり、多くは数頭が同じ場所を使うため、大きいものでは直径1m程の糞場ができる。 このほか、北海道に分布しているものは冬季に冬籠りをするが、本州から四国・九州に分布しているものは冬篭りをせず、冬場も活動する。 繁殖期は1~3月頃に見られ、妊娠期間60日前後で、普通は1産3~7子を出産するが、19子が生まれたことも知られている。 生まれたばかりの子どもの体重は70~90g程で、やわらかい毛で覆われている。 毛色はほとんどの場合濃褐色のような色合いで黒っぽいが、稀に全身白色のものも見られる。 目は閉じているが、10日程で開き、生後2週間を過ぎることには歯が生えてくる。 子育ては雌雄で行われ、子どもはひと月を過ぎる頃には餌を食べはじめる。 半年ほどで親と同じくらいの大きさに成長し、この頃には自立できるようになる。 9~11ヶ月ほどで性成熟し、この頃には独立していく。 独立したものは親の近くに留まったり、離れて行ったりと様々で、野生での寿命は5~8年程度、飼育下では10年を超える。 外敵はニホンツキノワグマなどが挙げられるが、むしろ人による害の方が多い。 ニホンタヌキの毛質は良いことから、かつては毛皮を目的とした狩猟が行われていたが、現在では、開発による生息地の減少が進んでいる。 現在のところ絶滅の危惧はないとされているが、道路の拡張などによる交通事故での死亡も増加傾向にある。 尚、北海道に分布するものをエゾタヌキ(N. p. albus)、本州・四国・九州に分布するものをホンドタヌキ(N. p. viverrinus)として、それぞれを別種とする場合もあるが、現在は一般に同種と考えられている。 イヌ科の動物へ / このページの先頭へ |
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ニホンタヌキ