マレーグマはバングラデシュ東部やミャンマーからベトナムにかけてのインドシナ、中国雲南省、マレー半島、スマトラ島、ボルネオ島などに分布している小型のクマで、クマの仲間ではもっとも体が小さい。 体高は70cmほどで、ヒグマなどと比べると、まるで幼獣ほどの大きさしかない。 全身は黒色や濃褐色の光沢のある短い毛で覆われている。 胸にはふつう黄色から黄褐色の月の輪状の斑紋があり、この模様から英名では「Sun Bear」と呼ばれている。 しかし、この斑紋の大きさや形はさまざまで、中にはこの斑紋が見られないものもいる。 口吻部は短く、鼻面は灰褐色や黄褐色をしている。 四肢にはそれぞれ5本の指があり、掌は大きく、よく曲がった鋭い爪をもっている。 また、額には特徴的な多くのしわがあり、特に、雄にはっきりと見られる。 マレーグマは主として夜行性の動物で、昼間は木の間などで眠ったり、日光浴をしたりして過ごしていることが多いが、人との接触が少ないところでは日中も活動する。 歩く時は、前肢が内側に少し曲がっているので内股のように見えるが、この体形は木登りに適していると言われ、マレーグマは木登りがうまい。 視覚はそれほどでもないが、嗅覚には優れていて、食べ物なども匂いを頼りに鋭く嗅ぎつける事が出来る。 雑食性で果実やシロアリや甲虫などの昆虫のほか、げっ歯類などの小動物やトカゲ、鳥や鳥の卵なども食べる。 インドなどに分布しているナマケグマはハチミツやシロアリを好むが、マレーグマもこれを好み、鋭い爪で巣を壊してから手を入れ、手についたシロアリを舌でなめとったりもする。 マレーグマの舌は20~25cmと長くて、ものに巻きつけることが出来るが、シロアリをなめとったり、木の中にいる昆虫やその幼虫などを食べる時にも役立っている。 普段は母親と子ども以外は単独で生活しているが、食料の豊富なところでは、希に複数が集まることもある。 低地の森林やマングローブ林などに多く見られるが、標高2500m程の常緑樹と落葉樹が混合したような森林にも生息している。 巣は倒木や樹洞などを利用するが、マレーグマは利口で用心深い動物で、人や外敵などと接触のあるようなところでは、木の枝を使って、樹上に巣や見張り台のようなものを作ったりする。 また、木登りは大変うまいが穴掘りも巧みで、丈夫な前足でたちまちの内に地面を掘ってしまう。 マレーグマはよく動き回るうえ、足などを音を立てて吸う癖もあって動作も愉快で、動物園などでも人気者である。 後ろ足で立って餌をねだる姿なども見られて可愛いが、成獣になると爪も鋭いので危険である。 繁殖は年中可能で、マレーグマには決まった繁殖期は見られない。 妊娠期間はおよそ95~100日程度で、ビグマなどが8ヶ月ほども要しているのに比べて著しく短いが、これは分布域の違いによる、北方系と南方系の例証と考えられている。 但し、マレーグマには遅延着床が見られ、妊娠期間は6~8ヵ月程続くこともある。 ふつうは1産1~2子で、希に3子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は300g程で、毛は生えておらず、目も開いていない。 4週間ほどで目は開くが、ものが見えるようになるのは生後7週間を過ぎた頃とされている。 1年から1年半ほどは授乳され、雌雄共に3年程で性成熟するが、子どもはこの頃までは母親と一緒に生活している。 飼育下での寿命は20~25年程度とされているが、35年を超えたものも報告されている。 また、マレーグマは暖かい南方に分布しているので冬眠はしない。 外敵にはトラやヒョウ、ウンピョウなどがいるが、現在、マレーグマは国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅危惧種(VU)としてレッドリスト指定されている。 生息数が減少した大きな原因は、近年の森林の破壊や開発などによるが、ココナッツ畑に入って新芽を食べたりすることから害獣として駆除されるほか、食料や漢方薬を目的とした密猟も原因となっている。 また、マレーグマは1属1種とされているが、スマトラ島と大陸に分布するものをH.m. malayanus、ボルネオ島に分布するものをH.m. euryspilusとして、2亜種とする場合もある。 クマ科の動物へ / このページの先頭へ |
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マレーグマ