コアジサシは熱帯から温帯域で広く繁殖しているカモメの仲間で、日本には本州より南に夏鳥として飛来してくる。 海岸や大きな河川などに生息していて、ダイビングするように水に飛び込み、魚をとらえる姿が見られる。
分布域・生息環境 コアジサシは世界の熱帯から温帯域に広く分布していて、ヨーロッパから西アジアを経て、ロシア南東部から日本、東南アジアやフィリピンなどに分布している。 ニューギニア島やオーストラリア、西アフリカなどにも分布していて、海岸や大きな河川、湖などに生息している。 大きさ・形態 コアジサシは、名前のように、アジサシの中では小型だが、尾が長いこともあり、全長はツグミやムクドリと同じほどの長さがある。 しかし、形態は違っていて、コアジサシの翼の先は尖ったような様子で、尾羽もツバメのように両端が細く伸びている。 雌雄同色の鳥だが、夏毛と冬毛はやや違っている。 夏では上面は灰色で、額や喉、腰や尾などは白く、頭頂と目を通る過眼線は黒い色をしている。 また、足は黄色く、まっすぐに延びる細い嘴も黄色いが先は黒い。 冬毛は嘴と足が褐色のような色で、額の白い部分が広がって、全体にぼんやりとしたような色になる。 生態・生活 コアジサシは世界の熱帯から温帯域で広く繁殖しているが、日本には本州より南に夏鳥として渡来し、繁殖している。 海岸の砂礫地や貝殻混じりの砂地などに生息しているが、大きな河川の中州や河岸、湖沼や港などでも見られる。 また、開けた環境を好み、草木が茂っていないような裸地の埋立地などでも見られる。 あまり大きくない群れをつくって生活しているが、繁殖期が終わり渡りの時期になると、大きな群が干潟などに集合しているのが見られる。 主に魚類を餌としていて、水面上を飛行し、獲物を見つけるとダイビングするように急降下して小魚などをとらえる。 外敵はカラスや猛禽類、イタチやテンなどで、主に卵やヒナが襲われる。 繁殖・寿命 コアジサシは分布域が広く、繁殖期には幅があるが、国内での繁殖期は主に4~7月頃に見られる。 海岸や大きな河川の岸、中州などの砂礫や貝殻混じりの砂地などに営巣し、繁殖期にはコロニーのような群れをつくるが、少数やペアだけで営巣することもある。 また、この時期には雄が雌に魚など贈る求愛行動が見られるほか、シロチドリやコチドリなどと緩やかなコロニーをつくることもある。 コアジサシは地上に浅い窪みをつくって巣をつくり、地面に直接産卵する。 繁殖は一夫一婦で行われ、雌は1日ごとに1卵を産み、ふつうは2~3個を産卵する。 卵は32.5×24.5mm程の大きさで、暗色の斑が散在する青味のある灰白色のような色をしていて、周囲の礫の色などに溶け込んでいる。 雌雄ともに抱卵し、卵は19~22日程で孵化しするが、ヒナも暗褐色の斑があり、周囲との保護色になっている。 また、カラスなどの外敵が巣に近づくと、群れになって追い払ったりする。 ヒナは孵化後3週間を過ぎるころには飛べるようになり、この頃には巣立ちするが、その後もしばらくは親からの給餌を受けて成長する。 雌雄ともに2年ほどで成熟し、寿命についてははっきりと分からないが、アジサシが足環経過で25年の記録があるので、コアジサシも案外長い寿命をもっているのではないかと考えたりする。 保護状況・その他 コアジサシは分布域が広いこともあり、現在のところ絶滅の恐れはないとされている。 しかし、国内では開発などにより生息地が減少していて、それに伴って個体数も減少している。 コアジサシは草木のない開けた裸地で繁殖するが、その様な環境が少なくなっていて、夏に飛来して繁殖する場所が少ないことが主な原因と考えられている。 環境省では絶滅危惧種(VU)に指定しているが、ほとんどの自治体でも絶滅危惧種に指定していて、繁殖のために保護区を設置している自治体もある。 尚、コアジサシには次の亜種が認識されている。 Sterna albifrons albifrons ヨーロッパや西アジアなどに分布する基亜種 S. a. placens オーストラリア東部とタスマニア S. a. guineae ガーナからガボンにかけての西アフリカ S. a. sinensis ロシア南東部から日本、東南アジア、フィリピンなどのほか、ニューギニア島とオーストラリア北部 S. a. innominata ペルシャ湾沿岸 また、以前はコアジサシの亜種とされていた S. a. antillarum (北アメリカに分布) と S. a. saundersi (紅海に分布) は、現在は別種とされていて、それぞれ Sternula antillarum と Sternula saundersi としてとらえられている。 |
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