カンスーアカシカ

カンスーアカシカ さんのプロフィール


動物図鑑・カンスーアカシカ

カンスーアカシカ (カンスーワピチ)

偶蹄目・シカ科
学 名 Cervus canadensis kansuensis
英 名 Kansu Red Deer / Kansu Wapiti
分布域 中国甘粛省
生息環境 主に山地の森林地帯
体 長 165~240cm 程度
尾 長 12~15cm 程度
体 重 150~260kg 程度

カンスーアカシカは中国甘粛省に分布するアメリカアカシカの亜種で、英名でカンスーワピチなどとも呼ばれている。
馴染みのある二ホンジカとはよく似ているが、別種で、体はかなり大きい。
●分布域・生息環境
●大きさ・特徴
●生態・生活
●繁殖・寿命
●保護状況・その他


カンスーアカシカの分布域・生息環境
カンスーアカシカは中国甘粛省に分布している大型のシカで、近縁のスーチョワンアカシカ(四川省)やチベットアカシカ(南チベット高原など)と共に、アメリカアカシカの中ではもっとも南に分布している。

主に山地の森林地帯に生息していて、普段は雌雄が別の群れをつくって生活している。


カンスーアカシカの大きさ・特徴

カンスーアカシカは二ホンジカに比べるとかなり大きく、体長は165~240cm程もあり、体は雄の方が大きい。
名前のように毛色は茶褐色や赤褐色などで、冬には灰色が強くなり、毛も長くなる。

ほかのシカの仲間と同様、雄だけが角をもっているが、この角は毎年春になると伸びはじめ、繁殖期を向かえる秋には完成する。

繁殖期の雄は角を突き合わせて雌をめぐって争うが、繁殖の後、冬の終わり頃には抜け落ちて、次の春に再び伸びはじめる。

尚、カンスーアカシカはアメリカアカシカの亜種とされているが、カシミール地方や中央アジアなどに分布するカシミールアカシカ (Cervus hanglu) の亜種とする意見もある。


カンスーアカシカの生態・生活

カンスーアカシカは山地の森林地帯などに生息し、繁殖期以外は雌雄が別の群れをつくって生活している。

雌の群れには子どもや若い個体が混ざっているが、雄は単独で生活しているものも見られる。

草や木の葉、木の芽などの植物質を食べ、食性や習性などはほかのアカシカと同じと考えられている。

主に早朝や夕方に活発に活動し、休んでいるときは反芻などをしている。

外敵はウマグマなどのヒグマが考えられるが、アカシカの袋角や角は漢方薬に利用されることがあり、カンスーアカシカの角も同じく利用されるほか、肉を目的とした狩猟の対象にもなっている。


カンスーアカシカの繁殖・寿命

カンスーアカシカの詳しい繁殖の様子などは分かってないが、繁殖期は8~10月頃と考えられている。

他のアメリカアカシカのように、この時期の雄は雌をめぐって激しく争う。

優位な雄は複数の雌とハーレムをつくり、繁殖は一夫多妻で行われる。
雌の妊娠期間240~260日程で、1産1~2子、ふつうは1子を出産する。

出産は群れから離れたところで行われ、生まれたばかりの子どもの体重は15~16kg程で、体には淡色の斑がある。
生後2週間ほどで母子ともに群れに加わるようになり、子どもは2ヵ月程で離乳する。

雌雄ともに1年半から2年程で性成熟するが、実際の繁殖はそれよりも遅く、雄では体がしっかりと出来上がる4~5歳頃まではふつうは繁殖しない。
また、雌は出生した群れに留まることが多いが、雄は性成熟する頃には群れを離れていく。

野生での寿命は10~13年、飼育下では20年以上の寿命があると考えられている。


カンスーアカシカの保護状況・その他

アメリカアカシカは分布域が広いこともあり、全体としては絶滅の恐れはないとされている。

しかし、カンスーアカシカの生息数や保全状態はよく分かっていない。

肉や角を目的とした狩猟が行われているほか、近年の生息地の開発なども加わり、生息数は徐々に減少していると言われているが、個体数の概数などもはっきりとしていない状況にある。

ところで、アカシカの仲間はアジアや北アメリカ西部、ヨーロッパや北アフリカなどに広く分布しているが、以前はいずれもヨーロッパなどに分布するアカシカ(Cervus elaphus)の亜種とされ、カンスーアカシカもそのように扱われていた(C.e. kansuensis)。

しかし、現在は北アメリカ西部や北東アジアに分布するものと中央アジアなどに分布するものは別種とされている。

中央アジアに分布するものはカシミールアカシカ (Cervus hanglu)、北アメリカや北東アジアに分布するものはアメリカアカシカ (ワピチ・Cervus canadensis)と呼ばれていて、カンスーアカシカはアメリカアカシカの亜種・C.c. kansuensisとされている。

また、中国東北部や極東ロシア、朝鮮半島などには、国内にも分布しているニホンジカが分布しているが、ニホンジカはアカシカとは別種で、カンスーアカシカもニホンジカとは別種である。

尚、アメリカアカシカの分類は未だ研究の途中にあるが、アジアに分布するものは概ね次の亜種が知られている。

C. c. alashanicus (アラシャンアカシカ)
中国北部とモンゴルの一部に生息していて、亜種の中では最も小さい。

C. elaphus sibirica (アルタイアカシカ)
シベリア南部、モンゴル北西部、中国の新疆ウイグル自治区北部

C. c. kansuensis (カンスーアカシカ)
中国甘粛省

C. c. macneilli (スーチョワンアカシカ)
中国四川省とチベットの国境沿い

C. c. songaricus (テンシンアカシカ)
キルギスタン東部の天山山脈やカザフスタン南東部、中国・新疆北中部など分布する亜種で、アジアのアメリカアカシカの中ではもっとも体が大きい

C. c. wallichii (チベットアカシカ)
南チベット高原とブータン

C. c. xanthopygus (マンシュウアカシカ)
シベリア南東部やモンゴル北東部、満州(中国北東部)、北朝鮮などに分布する亜種で、別種・C. xanthopygusとする意見もある

また、カンスーアカシカ、スーチョワンアカシカ、チベットアカシカは、カシミールアカシカ (Cervus hanglu) の亜種とする意見もある。

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