ヒマラヤタール

ヒマラヤタール さんのプロフィール


動物図鑑・ヒマラヤタール

ヒマラヤタール

偶蹄目 ウシ科
学 名 Hemitragus jemlahicus
英 名 Himalayan tahr
分布域 パキスタンからインド北部やネパール、チベットなど
生息環境 山岳地帯
体 長 90~140cm 程度
尾 長 12~20cm 程度
体 重 35~90kg 程度
IUCNによる保存状況評価 / 準絶滅危惧種(NT)

ヒマラヤタールは急峻な岩場に生息する野生のヤギで、名前のように、ヒマラヤ山脈に生息している。
角は雌雄ともにもっているが、雄の角は雌の角の倍ほどの長さがある。
●分布域・生息環境
●大きさ・形態
●生態・生活
●繁殖・寿命
●保護状況・その他


ヒマラヤタールの分布域・生息環境
ヒマラヤタールは、パキスタン北部からインド北部、ネパール、チベット南部のヒマラヤ山系などに分布していて、ブータンでも見られる。

岩の多いヒマラヤ山脈の南斜面に生息していて、急峻な岩場や崖のようなところを好む傾向がある。
また、ヒマラヤタールはニュージーランドやアメリカ合衆国、南アフリカなどにも移入されている。


ヒマラヤタールの大きさ・形態
体は雄の方が大きく、雄の平均体重が73kgであるのに対して、雌はかなり小さく、平均した体重は36kg程度と言われている。
しかし、いずれも四肢が短く、胴が長いように見える。

角は雌雄共にもっているが、この角は湾曲するように後方に向かって伸びていて、断面は三角形をしている。
この角は、雄では45cm程に成長するが、雌は短く、長くても20~25cm程しか成長しない。

また、ヒマラヤタールの蹄は特殊な構造をしていて、険しい岩場に適応した造りになっている。
蹄の中心にはゴムのような凸状の芯があり、岩をうまくつかむことができるようになっている。
周りは硬い角質で覆われているので、耐久性にも優れ、生息地に適したものになっている。

毛色は赤褐色や暗褐色のような色合いで、背面の正中線上に沿って暗色の縦縞が見られる。
体毛は長くて厚いが、冬が終わる頃には短くて薄くなり、毛色も薄い色になる。
また、顔は暗色で、雄の方がより黒っぽい色をしている。

一見するとムフロンなどに似ているが、ムフロンはヒツジの仲間だが、ヒマラヤタールはヤギに近いとされていて、角の形も異なっている。
マーコールとも似ている感じがするが、やはり角の形が違っていて、マーコールの顎ひげは長く、特に雄ではよく目立つ。


ヒマラヤタールの生態・生活
ヒマラヤタールは岩の多い山岳地帯の森林に生息しているが、ヒマラヤでは、主に標高3500~4500m程の高山の斜面や断崖などに生息している。
時に、標高5000m辺りでも見られ、標高2500m程度まで移動することもある。

ニュージーランドに移入されたものも、標高750~2300m程の山の斜面や急峻な岩場などに生息していて、日当たりがよく、冬の積雪が少ない北や北東側の斜面に生息している。

草類や木の実、果実などを食べるが、ヒマラヤタールは複雑な消化器系をもっていて、反芻をする。
木の枝なども食べるが、標高の高いところにいるものは、食べ物が雪に埋もれて乏しくなる冬季には、標高の低いところに降りてくる。

2~20頭ほどの群れをつくって生活していて、繁殖期以外は、雄は単独や雄だけの群れをつくり、雌は子どもと一緒の群れをつくっている。
群れの中でははっきりとした順位は見られないが、雌雄共に、体が大きくて強いものは一般に優位にある。
また、4歳以上の成熟した雄は、若い雄とは別にいることがよく見られる。

昼間に活動するが、早朝や夕暮れに活発に活動し、日中は休んでいることが多い。
また、朝には斜面を登り、日中の間は反芻などをして休んでいて、夕方になると斜面を降りるという、垂直方向への移動を毎日行っている。

脚力や跳躍力に優れていて、険しくて急峻な斜面でも、驚くほど敏捷に登ってしまう。
このような運動能力は険しい山岳地帯で生活するためのものだが、ヒマラヤタールは、前足が届くような岩などがあれば、体長ほどの高さでも登ることができる。
独自の構造をした蹄も役立っていて、前足の蹄がかかる程度の足場があれば、断崖を登ってしまう。

ムフロンなども急峻な岩場や崖のようなところを好むが、ヒマラヤタールはより足場の悪いような岩場を好み、体を休めるときも、岩の縁に体を貼り付けるようにして休んでいる。
また、性質はおとなしいが、ムフロンが人に慣れやすいのに対して、ヒマラヤタールは人に慣れないとも言われている。


ヒマラヤタールの繁殖・寿命
繁殖期は10~翌年の1月頃で、この時期の雄には、ライオンを思わせるような長くて白っぽいタテガミが生えてくる。
雄は雌をめぐって激しく争うが、体の大きいものや角の大きいものが優位とされている。

雌雄共に複数のものと交配すると言われていて、雌の妊娠期間は半年ほどだが、長ければ8ヶ月程度とも言われている。
出産は4~7月に見られ、雌は1産1~2子、ふつうは1子を出産するが、出産するときは群れから離れる。
子どもは3時間ほどで歩くことができるようになり、数日後には、母親と一緒に群れに入っていく。

雌雄共に2年程で性成熟するが、雄は4歳ころまでは滅多に交配しないと言われている。
また、雄は成熟する頃には母親の元を離れ、雄だけの群れに入っていくが、雌は群れの中に留まっている。

野生での寿命は10~15年程だが、飼育下での寿命は22年近くのものが知られている。
また、雌は雄よりも寿命が長いと言われている。

外敵はユキヒョウが挙げられるが、野生下では雪崩や斜面の崩壊なども脅威となっている。


ヒマラヤタールの保護状況・その他
ヒマラヤタールは、狩猟を目的としてニュージーランドやアルゼンチン、南アフリカやアメリカ合衆国のニューメキシコ州、カリフォルニア州、オンタリオ州など、幾つかの州に移入されているが、ニュージーランドでは原生植物に大きな影響を及ぼしているとも言われている。

一方、自然分布域では、険しい環境に生息しているにも関わらず、狩猟や開発による生息地の喪失などにより生息数が減少していて、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに準絶滅危惧種(NT)として指定されいる。

尚、現在のところ、ヒマラヤタールには亜種はいないとされている。

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