タスマニアデビルはカンガルーなどと同じ有袋類だが、最大の肉食有袋類でもあり、オーストラリア・タスマニア州の固有種とされている。 性質は荒く、死肉なども食べ、ときに家畜や家禽も襲うことから「デビル」の名前が付けられている。
分布域・生息環境 タスマニアデビルは、オーストラリアのタスマニア島やマリア島、ロビンズ島だけに分布している有袋類で、タスマニアの固有種とされている。 森林や草原などに生息していて、かつてはオーストラリア本土の全域に分布していたと言われているが、本土のものはおよそ3500年ほど前に絶滅したと考えられていて、現在はタスマニア東部や北西部を中心にして分布している。 大きさ・形態 タスマニアデビルは現存する最大の肉食有袋類で、体はアライグマほどかやや大きい。 雌雄ともに体つきはがっしりとしていて、体の割には頭部が大きく、幅広い。 口も大きく、上顎には2本の鋭い牙があり、この牙は一生伸び続ける。 前肢は後肢よりもやや長く、前肢には5本、後肢には4本の指があり、爪は引っ込めることができる。 また、尾は長く、体長の半分ほどもある。 この尾は、走っているときなどのバランスをとるために役立っているが、尾には脂肪を蓄えることができ、健康なものに対して、栄養状態の悪いものなどは細い尾をしている。 毛色は雌雄同色で、黒色や黒褐色などをしているが、ふつうは喉の辺りに月の輪状の白い斑が見られ、尾の付け根辺りにも白い斑がある。 体は雄の方が大きく、大きいものは体重12kg程に成長するものも見られる。 別名・フクロクズリ、フクロアナグマなどと呼ばれることもあるほか、一見すると小型のクマに似ていることからフクログマど呼ばれることもあるが、フクログマはコアラの異名でもあるので、混同する恐れがある。 生態・生活 タスマニアデビルは森林や草原などに生息していて、標高の高いところでは見られないが、山地にも生息している。 また、谷間の岩場や海岸付近などでも見られるほか、都市部周辺にも生息していて、さまざまな環境に適応している。 比較的乾燥した環境を好み、森林ではあまり密でないところに多く、海岸沿いの疎林などにも多い。 時に日光浴などをすることもあるが、タスマニアデビルは主として夜行性の動物で、昼間は岩穴や樹洞などの巣で休んでいることが多い。 また、巣穴は、使わなくなったウォンバットの穴などを利用することもあるが、巣穴は生涯を通して同じものが使われると考えられている。 普段は単独で生活しているが、あまり縄張り意識は強くなく、生息地域内では緩やかな社会的つながりをもった生活をしている。 行動範囲は4~27平方km程で、平均すると13平方km程度と言われているが、互いの行動範囲が重なり合っていることもあり、数頭が集まって死肉を食べている様子なども観察されている。 動物質のものを好み、トカゲやカエル、ザリガニや魚などを食べるが、鳥やその卵、ネズミなどの小動物も捕食する。 また、自分の体よりもずっと大きいワラビー類やウォンバットなどを襲うこともあるほか、餌として容易に利用できる死肉も好み、硬い骨などもバリバリと噛み砕いてしまう。 顎の力は非常に強く、鉛筆ほどの太さの鉄の棒なら、噛んで曲げてしまうことができる。 ハイエナなども噛む力が強いが、体の大きさに比べると、タスマニアデビルは肉食哺乳類の中では、もっとも噛む力が強いと言われている。 獲物は単独で捕らえると言われているが、性質は荒く、ときにヒツジや鶏などの家禽も襲うが、動物質のものだけでなく、果実や種子なども食べ、利用できるものなら何でも食べてしまう。 鳴き声は、「背筋の凍るような」と言われるような声をあげるが、死肉を含め、何でも食べてしまうことからも「デビル」と名付けられている。 ところで、タスマニアデビルは視力は弱いが、優れた嗅覚と聴覚を持っていて、土の中の獲物も、優れた嗅覚と長くて頑丈な爪で掘り出してしまう。 また、動きは緩慢だが、短い距離なら時速13km程の速さで走ることもできると言われている。 一方、耐久力もあり、1.5kmの距離を時速25kmで走ることができるとも言われている。 また、走るだけでなく、タスマニアデビルは木にも巧みに登ることができる。 成長するに従って木登りは困難になるが、若いものは、垂直に立つ樹木を4mほども登ることができる。 これは、鳥の卵や昆虫類、爬虫類などを捕らえるためでもあるが、成熟したものは、極端な空腹時には若いものを襲うことから、これを避けるためだとも考えられている。 泳ぎも巧みで、50m程の幅がある川を泳いで渡ったりする。 繁殖・寿命 繁殖期は2~6月にかけて見られるが、主に3~4月頃が中心になる。 この時期の雌は首の周りに脂肪がつき、繁殖のための巣作りをはじめる。 雄は雌を巡って激しく争い、優位な雄は雌の巣穴に入り込み、交配する。 交配は3~5日程の間続くが、雌は複数の雄と交配しようとするため、雌が巣穴から出ようとすると、雄は雌を攻撃して巣穴に連れ戻したり、飼育下では、水を飲みに行くときに雌を一緒に連れて行くようなことが観察されている。 しかし、雌は3~5日もすると反撃するようになり、雄を巣穴から追い出してしまう。 雄も複数の雌と交配するが、雌は妊娠しなければ3週間ほどの発情期間の間に3回ほどは排卵する。 雌の妊娠期間は3週間程で、20~30子ほどを出産する。 しかし、乳頭は4つなので、これにたどり着いたものだけが成長し、ふつうは2~3子を育てることになる。 また、ほかの有袋類と同様、子どもは育児嚢で育てられるが、タスマニアデビルの育児嚢は、カンガルー類とは異なり、コアラやウォンバットなどのように、後ろ向きについている。 生まれたばかりの子どもは体重0.2g程度で、目は閉じていて、体毛も生えていない。 生後7週ほどで全長7cm程に育ち、15週目頃には目が開き、毛もほぼ生えそろっている。 この頃には体重も200g程になっていて育児嚢から出てくるが、その後も3か月ほどの間は巣穴に留まっている。 巣穴では母親に授乳されたりするが、タスマニアデビルの子どもはカンガルーの仲間のように育児嚢から出たり入ったりはせず、頭だけを育児嚢に突っ込んで授乳される。 巣穴から出ても3か月ほどの間は親と一緒に生活していて、その後独立し、生後2年ほどで性成熟する。 外敵は、人のほかはワシなどの猛禽類で、飼育下での寿命は8年を超えるものが報告されているが、ふつうは6~7年程度とされている。 また、野生での寿命は5~6年程度と考えられているが、野生下で5年以上生きるものはほとんどいないとも言われている。 保護状況・その他 タスマニアデビルは、かつてはオーストラリア本土の全域に生息していたが、現在はタスマニア島などの限られた地域だけに生息している。 オーストラリア本土で絶滅した原因は、気候変動を含め様々なことが考えられているが、タスマニア島においても、ヨーロッパ人が入植した後、家畜や家禽などを襲う害獣として駆除され、生息数が減少した経緯がある。 移入されたキツネやイヌなども生息数の減少を招いたが、1990年代後半頃から広がりだしたデビル顔面腫瘍性疾患は、タスマニアデビルの顔や首などにできる致死性の悪性腫瘍で、これによっても個体数が大幅に減少している。 現在、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに絶滅危惧種(EN)として指定されているが、近い将来、野生のものはほぼ間違いなく絶滅するとも言われている。 タスマニア北西部のサベージ・リバー国立公園では野生動物の保護区が設けられているほか、オーストラリア本土のニューサウスウェールズ州にある保護区にも再導入され、生息数の増加などを試みているが、交通事故による死亡もあり、更なる保護も求められている。 |
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