バクは現存している有蹄類の中ではもっとも原始的な動物と考えられていて、南アメリカとアジアに分布している。 南米には4種類のバクが知られているが、マレーバクはアジアに分布している唯一のバクの仲間で、体の色が白と黒にはっきりと分かれていることが、南米などに分布している他のバクとは違っている。 マレーバクはタイとミャンマーの南部、マレー半島、インドネシアのスマトラ島などに分布し、アメリカバクなどに見られる耳の間から肩にかけての皮膚の盛り上がりは、マレーバクでは見られない。 しかし、蹄は前足が4本、後ろ足がサイと同じく3本であることや、耳の先が白く縁取られていることなどは、ほかのバクと同じである。 マレーバクは全体に重たい感じがし、頑丈な四肢が体をささえている。 体も大きく、近くで見ると思った以上に迫力があり、バクの仲間の中では、もっとも体が大きい。 鼻は上くちびると一緒になってのびていて、かなり自由に動かすことができる。 森林の奥深い湖や河川の近く、湿地帯などの水辺に生息し、標高2000m程のところにも見られるが、水辺から遠く離れるようなことはない。 夜行性の動物で、暗くなってから水中の水草や、森の中で草や木の葉などの植物や果実を食べるが、この時長くのびた口先をうまく使って菜食する。 しかし、視力は非常に悪いとされていて、動き回るときは、優れた嗅覚と聴覚に頼っている。 群れをつくることはなく、普段は単独で生活している。 行動範囲は10~25k㎡程度と考えられていて、樹木などに尿をかけて縄張りを主張する習性があるが、行動範囲は雌の方が広いとも言われている。 ほかのバクと同様、マレーバクは水浴びすることを好むが泳ぎもうまい。 ヒョウやトラなどの外敵に襲われると水の中に逃げ込んで身を守るが、大きくて重い体にもかかわらず、走るのも素早い。 また、首周りの皮膚は2.5cm程もあって、牙をもつ動物に対しての防御にもなっているが、首以外を噛まれた時などは、近くにある樹木に相手を叩きつけるようなこともする。 白黒にはっきりと分かれた体色も目立つようにも思うが、夜間では白い部分が強調されることによって、かえって輪郭がぼやけてしまい、カモフラージュの役目を果たしていると言われている。 また、普段の動きはゆったりとして、性質もおとなしいが、体が大きくて犬歯も発達しているので、怒らせたりすると危険な動物でもある。 一夫一婦で、繁殖期は4~6月頃と言われている。 雌の妊娠期間は390~410日程で、ふつうは1産1子を出産する。、 生まれたばかりの子どもの体重は6.5kg程で、南米のバクの子どもよりも平均すると大きい。 子どもには、他のバクやイノシシのように縦縞があるが、半年ほどでその縞はなくなり、親と同じ白黒の体になる。 子どもは6~8ヶ月ほどは授乳され、ふつうは親が次の出産をするまでは一緒に生活している。 雌雄ともに3年程で性成熟し、飼育下での寿命は25年程度と言われているが、35年を超えたものも知られている。 かつてはベトナムやカンボジア、ラオスなどにも分布していたが、近年の森林開発などによってマレーバクの生息地は減少していて、ほかのバクと同様、生息数の減少が危惧されている。 現在では国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって絶滅危惧種(EN)としてレッドリストに指定されているが、南米に分布しているバクの仲間も、Tapirus kabomaniを除き、すべて絶滅危惧種に指定されている。 尚、マレーバクの体はふつう白黒にはっきりと色分けされているが、全身が真っ黒の個体が少数観察されていて、これらは Tapirus indicus brevetianus と呼ばれる亜種に分類されている。 バク科の動物へ / このページの先頭へ |
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マレーバク