アカカワイノシシはアフリカの西部から中央部に分布しているイノシシの仲間で、名前のように、赤茶色や赤褐色の毛色をしている。
アカカワイノシシの分布域・生息環境 アカカワイノシシは、セネガル、ギニア共和国からリベリアやガーナ、ナイジェリアなどを経て、中央アフリカ共和国やコンゴ民主共和国、スーダン南部やウガンダ辺りにかけて分布している。 (但し、チャドやガンビアについては、はっきりとした分布が確認されていないとも言われている) 主に熱帯雨林やヤブ地に生息していて、河川や湖沼、湿地の近くなどに多く見られる。 アカカワイノシシの大きさ・特徴 体はいわゆる「イノシシ型」だが、毛色や顔つきなどは、国内に生息している二ホンイノシシとは違っている。 鼻先が突き出ていて、先には丸くて広い鼻鏡があるのは同じだが、目の前方にはこぶのような突起があるのが特徴で、特に、成熟した雄ではよく目立つ。 また、耳は長くて大きく、雌雄共に目の近くには臭腺がある。 体長は平均すると1m程度、体重は80kg程だが、体は雄の方がやや大きく、毛色は、名前のように赤茶色や赤褐色をしている。 また、顔は黒っぽいが、目の周りや頬、顎などには白い毛が生えている。 四肢は黒っぽく、背中の正中線の毛は白く、やや長くて僅かにタテガミ状になっている。 耳の先には長い房毛があり、尾の先も房になっていて黒っぽい。 アカカワイノシシの生態・生活 アカカワイノシシは、主に熱帯雨林や隣接するヤブ地などに生息しているが、乾燥林やサバンナなどにも姿を見せる。 河川や湖沼、湿地の近くなどを好むが、人の住む村の近くにも生息していて、様々な環境に適応している。 雌雄共に単独で生活しているものも見られるが、ほとんどは数頭から10頭までの群れをつくって生活している。 この群れは、1頭の雄と複数の雌、その子どもから構成されている。 時に30~60頭、稀に100頭を超える群れをつくることもあるが、群れの大きさは、生息環境や食糧事情などによって変化する。 行動範囲などは詳しく分かっていないが、中央アフリカ共和国やコンゴ共和国では、1日に熱帯雨林の中を2~4kmほど移動すると言われている。 主に夕方から夜間にかけて活動するが、日中もしばしば活動する。 雑食性で、果実や種子、草類やナッツなどを食べるが、四肢や丈夫な鼻先を使って土を掘り返し、球根や木の根なども食べる。 昆虫や鳥の卵のほか、爬虫類やカタツムリ、ミミズ、腐肉なども食べるほか、アカカワイノシシは泳ぎも巧みで、水の中に入って水草を食べることもある。 また、ゾウの糞の中の消化されなかった種子を食べたりするほか、アカカワイノシシは、チンパンジーが食べ落とす果実を狙って、その後に従っていくことも観察されている。 アカカワイノシシの繁殖・寿命 アカカワイノシシの繁殖期は9~4月頃で、主に11~2月にかけての雨季に見られる。 雌は木の枝や草などで、幅3m、深さ1m程の出産用の巣をつくり、妊娠期間120~125日程の後、1産1~6子、平均すると3~4子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は600~900g程で、イノシシの子どものように、暗褐色に黄色がかった縞模様や斑点がある。 育児は母親のほか、雄も手伝い、子どもは4ヶ月ほどで離乳する。 半年ほどで成獣のような毛色になるが、顔の模様が現れるには2年ほどかかる。 雌雄共に3年ほどで成熟し、野生での寿命は10~15年程度、飼育下ではそれよりも長く、20年程度と言われている。 外敵はライオンやヒョウなどだが、森林に生息するアカカワイノシシには、ヒョウが一番の外敵になっている。 アカカワイノシシの保護状況・その他 アカカワイノシシは、現在のところ絶滅の恐れはないとされていて、天敵のヒョウの減少に伴って、生息数は増加しているとも言われている。 また、近年の開発による農地の広がりと共に、トウモロコシなどの農作物への被害も出てきているが、食用として狩猟の対象になっている地域もある。 一方、セネガルでは非常に稀になっていて、同国内では絶滅危惧種と見なされている。 このほか、アカカワイノシシは、アフリカ東部から南部にかけて分布するカワイノシシ(Potamochoerus larvatus/Bush pig)と、かつては同種とされていたが、現在は別種とされている。 また、以前は多数の亜種が同定されていたが、現在では亜種はいないと考えられている。 尚、アカカワイノシシは、ヤブイノシシや単にカワイノシシと呼ばれることもあるが、P. larvatus と混同される恐れがある。 |
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アカカワイノシシ