シロイワヤギは北アメリカ特有の大型の偶蹄類で、険しい山岳地帯に生息している。 標高の高い山地の岩場などで生活しているが、垂直方向への季節的な移動をしていて、冬には低地へ降りて生活している。
シロイワヤギの分布域・生息環境 シロイワヤギはロッキー山脈北部に分布していて、アラスカ南東部からワシントン州、モンタナ州西部やアイダホ州中央部にかけて分布している。 標高の高い山岳地帯に生息していて、急峻な斜面や崖など、厳しい環境の中で生活している。 また、夏には標高5000m程のところにも姿を見るが、気温が下がる冬には低地へ降りてくる。 アイダホ州やワイオミング州、サウスダコタ州やコロラド州など、幾つかの地域にも導入されているが、いずれも険しい山地に生息している。 シロイワヤギの大きさ・形態 シロイワヤギはがっしりとした体つきをしていて、顔や四肢の先などを省いて、長くて厚い羊毛状の毛で覆われている。 体は雄の方が大きく、ふつうは体重60~80kg程度、大きいものでも100kg程だが、中には140kg程の重さになるものも見られる。 雌は雄よりも少し小さく、平均した体重は55~70kg程とされている。 尾の長さは10~20cm程度で短いが、雌雄ともに角があり、黒色で後方に向かって伸びている。 この角は細いが、シカの仲間のように毎年抜け落ちることはなく、雄の長いものでは30cm程になり、雌では少し短い。 毛色は白色や黄白色をしているが、この体毛は寒冷地での体温の低下をよく防ぎ、シロイワヤギは-45℃の低温にも耐えることができると言われている。 ところで、ヤギの仲間にはあごひげが見られるが、シロイワヤギにも雌雄共にあごひげがある。 しかし、シロイワヤギは別名・シロカモシカとも呼ばれ、ヤギよりもニホンカモシカやゴーラル、ターキンなど、カモシカの仲間に近いとされている。 シロイワヤギの生態・生活 シロイワヤギは山岳地帯の寒冷地を好んで生息しているが、アラスカなどでは雪の多い海岸地帯にも生息している。 山岳地帯で生活しているものは、冬期には標高の低いところに降りてくるが、夏期には標高3,500mもの高所まで登り、時には標高5000mものところにも姿を見せると言われている。 また、冬には低地に降りて大きな群れをつくるが、夏では雄はふつう単独や2~3頭ほどの少数で暮らし、雌は子どもなどと共に小さな群れをつくって生活している。 シロイワヤギは山地の岩場と森林が境をなしているようなところで生活していて、岩の多い地域から離れることはない。 がっしりとした体のわりには岩登りはうまく、60度ほども傾斜している崖も登ってしまう。 動物園などでも高所にいて、低いところに降りてくることは滅多にない。 岩場で生活しているため蹄は丈夫で、足場をしっかりとらえるように足裏はゴムのようなグリッド状になっていて、四肢や肩、首は強い筋肉をもっている。 日中に活動するが、主に午前と夕暮れ時に活発に活動し、夜間は地面に25~50cm程の浅い窪みをつくって休んでいる。 また、シロイワヤギはこの寝床となる窪みの中で砂浴びをすることが観察されている。 理由はよく分かっていないが、寄生虫や古い毛を落とすためではないかと考えられている。 草食性で、コケ類やシダ類のほか、草類や木の枝など、シロイワヤギは季節に合わせて様々なものを食べる。 水分はほとんど食物から取っているが、標高の低いところに降りてくる冬には、ミネラル補給の為の塩舐めをすることが知られている。 この時には、森林地帯を通って数キロメートルほど移動することがある。 また、行動範囲は夏では23平方km程と言われているが、冬にはかなり狭くなる。 外敵にはピューマの他、ヒグマやアメリカクロクマ、オオカミやコヨーテ、ボブキャットなどにも襲われることがある。 しかし、シロイワヤギは急峻な岩場で生活しているため、最も危険なものは、外敵よりも春先に起こる雪崩だとも言われている。 シロイワヤギの繁殖・寿命 シロイワヤギの繁殖期は10月下旬頃から翌年の1月上旬頃にかけて見られ、繁殖は一夫多妻で行われる。 雌の妊娠期間は150~180日程で、5~6月頃に1~3子、ふつうは1子を出産する。 出産は外敵を避けるため、急峻で険しい崖の岩棚などで行われる。 生まれたばかりの子どもの体重は3.2kg程で、生後しばらくすると歩くことができるようになる。 ほとんどの子どもはひと月ほどで離乳すると言われていて、長くても3~4ヵ月ほどの間には完全に離乳する。 その後も、子どもは母親の次の出産までは一緒に生活しているが、やがて独立していくようになる。 雌雄ともに2年半から3年ほどで性成熟し、野生下での寿命は12~15 年、飼育下ではやや長く16~20年程度と言われている。 シロイワヤギの保護状況・その他 現在のところシロイワヤギの個体数は安定していて、絶滅の恐れはないとされている。 多くの地域で保護動物にも指定されているが、シロイワヤギは険しい環境に生息していて、開発などの生息地への影響がないことも幸いしている。 しかし、地域によっては徐々に固定数が減少していて、その原因などを調査しているところもある。 尚、シロイワヤギは地域によって O. a. americanus、O. a. columbinae、O. a. kennedyi、O. a. missoulaeなど、幾つかの亜種に分類されることがあるが、国際自然保護連合などでは亜種を記述しておらず、亜種はいないとする説が多い。 |
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