オオツノヒツジはムフロンなどと同じ野生ヒツジの仲間で、アメリカ合衆国西部やカナダ南西部などのロッキー山脈を中心にした山岳地帯に生息している。 雄は見事な角をもっていて、別名・ビッグホーンとも呼ばれている。
オオツノヒツジの分布域・生息環境 オオツノヒツジは、カナダ南部からアメリカ合衆国のコロラド州にかけてのロッキー山脈、ネバダ州、カリフォルニア州からテキサス州西部、メキシコ北部などに分布している。 山岳地帯の岩の多い険しい断崖や高山の草原、草の茂った山の斜面、丘陵地帯などに生息している。 オオツノヒツジの大きさ・特徴 オオツノヒツジは地域によって大きさに差があるが、平均すると雄で160~180cm、雌で130~160cm程の体長がある。 北方のものほど体が大きく、ロッキー山脈に生息するものの中では、雄の体重が200kgを超すものも知られている。 これとは対照的に、南部のシエラネバダ山脈に生息するものは、雄でも体重は90kg程度と言われている。 毛色は褐色や暗褐色、灰褐色などで、夏毛の方が濃い色をしている。 腹部と臀部は白っぽく、四肢の内側も白っぽい色をしている。 角は雌雄共にもっているが、雌の角はほぼまっすぐで短い。 これに対して雄の角は太く、ひと回りして、先は外側を向いている。 雄の大きなものでは長さが1mを超し、角の重さは14kgほどにもなる大変見事なものである。 この大きな角がオオツノヒツジの特徴で、別名・ビッグホーンとも呼ばれているが、雄の優位は年齢だけでなく、角の大きさによっても決定され、繁殖期には雌をめぐって、角を突き合わせて激しく争う様子が見られる。 また、北アメリカに分布するドールシープは、オオツノヒツジと外見が似ていて、一見すると同じと思われているが、オオツノヒツジの方が体も大きく別種である。 オオツノヒツジの生態・生活 オオツノヒツジは標高の高い山岳地帯に生息していて、険しい岩の断崖や絶壁に近接した草原、草で覆われた山の斜面などで生活している。 普通は8~10頭程の小数の群れで生活しているが、時には100頭を超す群れをつくることもある。 この群れは成熟した雌とその子どもからなっていて、群れの中には若い雄も見られる。 また、成熟した雄は、雌の群れとは別に雄だけの群れをつくっている。 昼間に活動し、草類や木の葉、木の枝などを食べ、多くの時間を採食に費やしている。 夏には標高1800~2500m程の高地の開けたところで生活しているが、季節的な移動を行い、食料の乏しい冬には標高700~1500mくらいの所まで降りてきて、谷の間などで生活している。 行動範囲は季節や生息環境、食糧事情などによって変化するが、平均すると17平方キロメートルほどと言われている。 オオツノヒツジは厳しい環境に生息しているにもかかわらず、時にはピューマやクマなどに襲われることがあり、幼いものはオオカミやコヨーテ、オオヤマネコやボブキャットなどのほか、猛禽類にも襲われることがある。 外敵に対しては大きな角で戦うこともあるが、オオツノヒツジは急峻な岩場や断崖などでも容易に移動することができ、多くの場合、外敵が近寄れないような断崖などに素早く逃げる。 平地では時速50km近い速度で走ることができると言われていて、大きな角にもかかわらず、泳ぎもうまい。 視力も優れていて、1.5km程も離れたところにいる外敵などをとらえることができるとも言われている。 オオツノヒツジの繁殖・寿命 オオツノヒツジの繁殖期は地域によって差があり、北のものは秋から初冬にかけて見られるが、南に分布しているものは7~12月頃に見られる。 繁殖は一夫多妻で行われ、この時期の雄は、大きな角をぶつけ合って争うことがよく知られている。 雌の妊娠期間は150~180日程で、ふつう1産1子、稀に2子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は4kg程で、生後数時間ほどで歩くことができる。 1週間を過ぎるころには、岩場などでも母親の後を追いかけていくことができるようになる。 子どもは4~6ヵ月程で完全に離乳し、この頃には体重が25~35kg程に成長している。 雌雄ともに2~3年程で性成熟し、雌の多くは出生群に留まるが、雄は成熟する頃には群れから離れていく。 また、雄は体が大きくなってほかの雄と争うことができるようになるまで繁殖は行わず、それには6~7年ほどかかるとも言われている。 野生下での寿命は10年ほどで、雄は12年を超えることは稀とも言われている。 雌は雄よりも長い寿命をもっているが、それでも15年を超えるものは少ないとも言われている。 オオツノヒツジの保護状況・その他 オオツノヒツジは、かつては見事な角を目的とした乱獲などによって数を減らしたが、現在では保護政策によりある程度回復している。 しかし、生息地の開発などによって一部のものは個体数が減少しているほか、放牧される家畜との競合なども心配されている。 尚、オオツノヒツジはいつくかの亜種に別けられるが、遺伝学的には、現在3亜種が有効と考えられている。 Ovis canadensis canadensis (Rocky Mountain bighorn sheep) ロッキービッグホーン / カナダやアメリカ合衆国北西部のロッキー山脈などに分布する基亜種 O.c. sierrae (Sierra Nevada bighorn sheep) シエラネバダビッグホーン / 以前はカリフォルニアビッグホーン(O. c. californiana)とされていたもので、アメリカ合衆国カリフォルニア州のシエラネバダ山脈だけに分布しているもので、生息数は少ない。 O.c. nelsoni (Desert bighorn sheep) ネルソンビッグホーン / アメリカ合衆国カリフォルニア州南部やネバダ州南部の砂漠地帯から、メキシコのソノラ州北西部などに分布。 また、O.c. sierraeは個体数が減少していて、アメリカ連邦政府により絶滅危惧亜種に指定されているが、ノースダコタ州やサウスダコタ州、モンタナ州やワイオミング州、ネブラスカ州などに分布していた亜種・O. c. auduboniは既に絶滅している。 |
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オオツノヒツジ(ビッグホーン)