フイリマングースはアジアに分布しているマングースの仲間で、ヨルダンからサウジアラビア、イラク、イランを経て、アフガニスタンやパキスタン、インドやネパール、ブータン、バングラディシュ、ミャンマーまで、幅広く分布している。 体は細長くて四肢は短く、尾は体長よりは短いが、かなり長い。 また、頭部も細長くて、吻も尖っている。 耳は丸くて短く、四肢にはいずれも5本の指がある。 大きさは、アフリカに分布しているミーアキャットなどと同じほどだが、体は雄の方が大きく、いずれも毛は太くて厚い。 毛色は黒褐色から褐色のような色合いで、黄色や白っぽい色が混ざっているので、名前のように、斑入りや霜降りのように見える。 雌雄共に肛門近くに臭腺があり、巣穴の周りなどに臭い付けをする習性がある。 フイリマングースは森林や草原、二次林や湿地などに生息していて、海岸から標高2000m程の高地まで見られる。 また、低木林などの比較的開けた環境を好むと言われているが、砂漠のほか、農地や人家の近くにも姿を現し、さまざまな環境に生息している。 マングースの仲間は夜行性のものが多いが、フイリマングースは主に昼間に活動し、夜間は地面に穴を掘ったり、樹洞や岩穴などを利用して休む。 普段は単独で行動するが、繁殖期の雄は2~3頭が集まり、巣穴を共有することもあると言われている。 行動範囲は地域や食糧事情などによって変化するが、繁殖期のハワイ・オアフ島では、雌は0.017平方km辺り7頭、雄はおよそ2平方km辺り5頭が観察されている。 雑食性で、ネズミなとのげっ歯類や鳥類、両生類や爬虫類、昆虫類や果実などを食べるが、餌は季節や地域によって異なっている。 インドのラージャスターン砂漠では昆虫やサソリが餌として確認されているが、移入先のハワイでは、石をひっくり返してカニなどの甲殻類を食べることも確認されている。 鳥の卵やウミガメの卵なども食べ、クモやヒトデ、動物の死肉など、フイリマングースは何でも食べる。 繁殖期や長さは地域によって異なり、1~8月頃に繁殖が行われ、出産は3~10月頃に見られると言われている。 主に飼育下での観察では、雌雄共に複数の個体と交尾し、妊娠期間50日前後で、1産1~5子、平均すると2~3子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は20g前後で、明るい灰色の毛で覆われている。 目は閉じていて、およそ3週間ほどで目が開く。 子どもは、4週間ほど後には巣穴から離れるようになり、6週間後には、母親に従って狩りに出かけるようになる。 雄は4~6ヶ月程で成熟するが、この頃までは母親と一緒に生活している。 雌雄共に1年ほどで完全に性成熟し、野生下での寿命は4~5年、飼育下ではそれよりも長く、7~8年程度と言われている。 また、外敵はワシなどの大型の猛禽類や、トラやヒョウなどと考えられている。 ところで、フイリマングースは、ボスニア・ヘルツェゴビナやクロアチア、キューバやドミニカ、フィジー、フランス語ギニアナ、ガイアナ、ジャマイカ、モーリシャス、プエルトリコ、スリナム、タンザニア、トリニダード・トバゴ、アメリカ合衆国、英領ヴァージン諸島など、数多くの国々に移入、導入されていて、国内にも1910年に沖縄に、1979年に奄美大島などに移入されている。 国内への導入は、ネズミや毒をもつハブ類の駆除のために行われたが、野生下では、マングースのほとんどは、毒蛇を襲うことはないとされている。 マングースはコブラなどの毒蛇に対して免疫があると言われているが、これは間違いで、実際には、毒蛇の歯がその厚い毛を通しにくいことと、素早い動きによって、毒蛇に襲われたときに限って立ち向かうと考えられている。 ヘビ毒に対して僅かな免疫がもっているかもしれないが、フイリマングースも同様で、あえて毒蛇を襲うようなことはしない。 このため、国内に導入されたフイリマングースが、ハブを駆除した効果はきわめて少ないと考えられていて、かえって、アマミノクロウサギやシリケンイモリ、キノボリトカゲなどの希少動物を含め、在来の哺乳類や鳥類、爬虫類や両生類、また昆虫類などを捕食する害の方が大きく、家禽や農作物への被害も大きい。 その為、国内ではフイリマングースをアライグマやヌートリア、アカゲザルやタイワンリスなどと共に特定外来生物に指定して、駆除が行われている。 また、導入された国々でも同じような問題が起きていて、ニュージーランドやアメリカ合衆国などでは輸入禁止種に指定されている。 このほか、近年まで、フイリマングースはジャワマングース(Herpestes javanicus)と同種、或いは亜種とされていたが、本種の方が体が小さく、頭骨のサイズと形態も異なっていることなどから、現在は別種とされている。 これによって、国内に定着しているマングース類はフイリマングースであるとされ、環境省はこれまでのジャワマングースに加え、フイリマングースを新たに特定外来生物に指定している。 尚、フイリマングースは、しばしば愛玩動物として捕獲・取引が行われているほか、地域によっては毛皮を目的とした商取引なども行われている。 現在のところ、分布域の広さや生息地の多様性などから、絶滅の危惧はないとされているが、元来の分布域内の地域によっては、生息数が減少している。 マングース科の動物へ / このページの先頭へ |
Private Zoo Gardenは、国内の動物園で会える動物たちを紹介している、インターネット動物園です。 今後とも園内の充実を図っていく予定ですので、動物図鑑や写真集などとして、是非利用してください。 |
このページの先頭へ |
フイリマングース
Herpestes javanicus ssp
雌で 400~600g 程度