エゾシカは北海道に分布している二ホンジカの仲間で、本州などで見られるものよりも体は大きい。 生活の様子などは同じで、北海道に広く分布していて、群れをつくって生活している。
エゾシカの分布域・生息環境 ニホンジカの仲間は、国内をはじめ、ロシア極東地方や中国東北部、朝鮮半島、台湾などに至る東アジアに広く分布しているが、エゾシカは北海道に生息するニホンジカの亜種で、北海道全域に分布している。 低地から山地の森林地帯に生息しているが、草原や牧草地などとの林縁を好み、冬の積雪が少ない道東や道北地方に多く見られる。 エゾシカの大きさ・特徴 エゾシカは国内に分布しているニホンジカの中ではもっとも体が大きく、体長は平均して140~150cm、体高は90~110cm程ある。 体は雄の方が大きく、大きい雄では体重が140kgを超えるものも見られる。 また、二ホンジカのもっとも大きな亜種は、中国北東部やロシア極東地方などに分布しているマンシュウジカ(C. n. mantchuricus)と言われていて、大きな雄では160kg程に成長するが、エゾジカのもっとも大きな雄は体重が170~200kg程のものが記録されていると言われていて、エゾシカは二ホンジカの中では最も大きいとも言われている。 毛色は夏では赤褐色や茶色の地に白い斑点があるが、冬には灰褐色に変わり白斑は消える。 しかし、腹部や尾は、一年を通して白っぽい色をしている。 他のニホンジカと同様、角は雄だけにあるが、長さは80cm程もあり、本州に生息しているものよりも大きくて長い。 角は枝角で、2~3歳頃から枝分れするが、九州の屋久島に生息しているヤクシカの角は三つに分かれているが、エゾシカの角は四つに分かれていて、本州などに生息するシカと同じである。 また、この角は毎年4~5月には根元から落ち、その後やわらかい袋角が生えはじめ、毎年9月頃には硬い角に成長する。 エゾシカの生態・生活 エゾシカは低地から山地にいたる下草の多い森林地帯や原野などに広く生息しているが、森林と草原との境界付近で多く見られる。 開けた草原や耕作地周辺などでもよく見られるが、森林から完全に離れてしまうことはない。 しかし、近年は市街地に姿を見せることもあり、生息域は拡大傾向にあって、人の生活環境にも適応している。 また、越冬は雪の少ない地域で行われるため、冬に積雪の多い地域のものは、定期的に雪の少ない地域へ移動するものも見られる。 習性や食性などは他のニホンジカと似ていて、エゾシカも群れをつくって生活している。 雌雄がそれぞれに別の群れをつくっていて、雌の群れには子どもや若い個体が含まれているが、雄は単独のものも見られる。 昼間に活動するが、特に早朝と夕方には活発に活動し、休んでいるときには反芻などをしている。 草食性で主に草類や木の葉、木の実などを食べるが、餌の少なくなる冬場には、樹皮や落ち葉、菌類など、エゾシカは季節によってさまざまなものを食べる。 人里近いところに生息するものは農作物なども食べ、繁殖期を迎える秋頃には、もっとも体重が増える。 動きも敏捷で、危険を感じると素早く逃げてしまうが、跳躍力にも優れ、2mを超える柵なども跳び越えてしまうこともある。 泳ぎもうまく、大きな河川でも渡ってしまう。 また、ニホンイノシシのように、「沼田場(ヌタバ)」と呼ばれる湧水地や湿地のぬかるみで泥浴びをする習性があるが、これは寄生虫のダニをとったり、体温調整をするためと考えられている。 外敵はエゾヒグマやエゾオオカミなどだが、エゾオオカミは既に絶滅しているので、現在の外敵はエゾヒグマだけとなっている。 この他、エゾシカは古くから狩猟の対象になっていて、広く流通していないが、肉は食用に利用されている。 ただ、革や角なども装飾品などに加工されているが、あまり利用されていない。 エゾシカの繁殖・寿命 エゾシカの繁殖期は10~11月頃で、この時期の雄は雌をめぐって激しく争い、争いに勝った優位の雄は縄張りをつくり、複数の雌とハーレムを形成する。 繁殖はふつう一夫多妻で行われるが、時には雌も複数の雄と交尾することがある。 雌の妊娠期間は220~240日程で、ふつうは1産1子を出産するが、稀に2子を出産することもある。 生まれたばかりの子どもの体重は6~7kg程で、体には白い斑がある。 出産はふつう群れから離れた茂みなどで行われ、1~2週間ほどの間は、1日に2~3回授乳の時だけ雌が子どものところを訪れ、その後母子ともに群れの中へ入って行く。 子どもは1年程で完全に離乳し、雌雄共に1年半~2年程で性成熟するが、雄の実際の繁殖は、ふつうは体がしっかりとでき上がる4~5歳頃になるまで行われない。 また、雌は出生した群れに残ることが多いが、雄は性成熟する頃には群れを離れていく。 野生での寿命は、長ければ7~8年と言われているが、エゾシカは豪雪地帯では餌がとれないために死亡率が高くなり、平均寿命は3~4年程度とも言われている。 しかし、飼育下での寿命は長く、15~18年、中には25年近く生きるものもいる。 エゾシカの保護状況・その他 エゾシカは、明治の開拓期では、肉や毛皮を目的とした乱獲に加え、木材生産や開墾などによる生息地の減少などにより、個体数が激減した時期があった。 また、年によっては豪雪によって越冬が妨げられ、多くのエゾシカが死亡した事も記録されている。 その後、禁猟措置がとられたことにより生息数の減少は止まり、最近では保護政策や温暖化によって餌が豊富になったこともあって、エゾシカの数はかなり増加している。 その反面、農地の近くや市街地付近などにもしばしば姿を見せるようになり、エゾシカによる農作物への被害や、接触による交通事故などが問題になっている。 現在、エゾシカは期間を決めて狩猟の対象になっているが、個体数を削減するために意図的な管理捕獲も行われている。 このほか、国内にはエゾシカのほかにホンシュウジカ、キュウシュウジカ、ヤクシカ、ツシマジカ、ケラマジカ、マゲジカなどが生息しているが、ホンシュウジカとキュウシュウジカを合わせて、ホンドジカと呼ぶこともある。 尚、ニホンジカには多くの亜種が知られているが、亜種については交雑などが指摘されていて、幾つかの亜種は確認不明のままだとも言われている。 |
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